ダンスシューズで雪のシベリアへ





「1941年6月14日、恐怖が頂点に達した。一夜にして、ラトビア人の1万5424人が(シベリアに)強制追放となった。追放者のなかには、幼児290人、60歳以上の人が55人含まれていた」(本書より)
題名は比喩ではありません。作者の母親に実際に起ったことです。彼女は14歳の時に夜中に叩き起こされてシ…

本が好き! 1級
書評数:2296 件
得票数:43948 票
「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。





「1941年6月14日、恐怖が頂点に達した。一夜にして、ラトビア人の1万5424人が(シベリアに)強制追放となった。追放者のなかには、幼児290人、60歳以上の人が55人含まれていた」(本書より)
題名は比喩ではありません。作者の母親に実際に起ったことです。彼女は14歳の時に夜中に叩き起こされてシ…




「変なところがない子なんて教室に一人もいませんでした。みんな変な子だったのです。つまり、それがふつうだったのです」(本書より) 「変」であることは、ちっとも「変」でないことを教えてくれる絵本です。
松田青子は、比較的最近知った日本の作家の中では、お気に入りの一人です。自分の書いた文章を引用するのも…





「あの日から、風がかわった。 空気がかわった。光がかわった。 思ってもみなかった日常が出現した」(本書より) 2011年3月11日の東北大震災の後から作者の家で起こった出来事を描いた絵本です。
少し前になりますが、morimoriさんの書評で本書のことを知りました。感謝いたします。 19…





ボワロー&ナルスジャックの作品はそんなに読んでいるわけではないのですが、今まですごく良かったという印象を受けたものはありませんでした。ですが、本作は面白い!
そうきゅうどうさんの書評で、本書を読んでみようと思いました。感謝いたします。 二人の作家の共作…



「ベルリンの警察官を殺人罪で起訴するなど…ミュンヘンのビール祭で、酔っ払いを逮捕するようなものだ」 第二次世界大戦直前のベルリンを舞台とする私立探偵ベルンハルト・グンター・シリーズ第二作です。
スコットランド出身の作家フィリップ・カー(1956-2018)による、ナチス統治下のベルリンで起きる…



シラーがこの処女作の戯曲を書き始めたのは18歳の時で、早くに完成していたようですが、発表したのは22歳になってからでした。Wikipediaによると匿名だったそうです。
先に投稿されているゆうちゃんさんもそうだったと思いますが、光文社古典新訳文庫版『カラマーゾフの兄弟』…



「ある日の午後、リビングでコーヒーを飲み終えると、グレタは自分のほどき方を発見した。服や皮膚や髪が、まるで果物の皮をむくようにするすると剥がれ落ち、中から本当の身体がでてきた」(『ほどく』より)
efさんの書評で、本書のことを知りました。感謝いたします。 本書は、カナダ出身でスコットランド…




ファンタジーと言われればそうですが、銭湯の水風呂に住んでいる天女のばあちゃんという、誰もが―筒井康隆ですら―思いつかないような設定の絵本です。
『ぼくは犬や』(2019年)以来、すっかりファンになった韓国のアニメーション及び絵本作家ペク・ヒナが…





「(カベッサは)驚くべきことに自立した犬であった。彼は野良犬ではなかったけれど、飼い犬でもない。誰にも頼らず、一人で、いや一匹で生きているのであった」(本書収録『カベッサ伝説より』)
本書のことを知ったのは、Wings to Flyさんと、ぽんきちさんの書評によってでした。それが20…



原題は"Magicats!"、「猫を抜きにしては成り立たない物語、味わえない感動」を持つ作品ばかりを集めたアンソロジーです。ですが、可愛らしい猫ばかりではありませんので、猫好きの方はご注意ください。
17人の作家による、猫が重要な役割を果たす17編が収められた1984年刊のアンソロジーです。編者は、…





「『影の軍隊』はレジスタンス運動に基づいた本だよ。人類史上でも悲劇的なあの時代に関する記録のなかで、最も上質で完成された作品なんだ」 本書を映画化したジャン=ピエール・メルヴィル監督の言葉です。
『昼顔』(1929年)の作者ジョゼフ・ケッセル(1898-1979)は、第二次大戦中は反ナチスのレジ…




表題作『蟲』は江戸川乱歩が1929年に書いた現代ホラーです。また、収録作『盲獣』(1931年)も、作者が晩年の全集刊行時に再読して「ひどい変態ものである」と驚き、収録するのをためらった作品です。
文春文庫には、3人の作家が別々に編者となった3冊の「江戸川乱歩傑作選」がありますが、辻村深月が担当し…



浴室というと、人が裸になる場所であり、フランスではビデがよく設置されています。社会生活において隠したいものを露出する場所と言えるでしょう。
主人公が、我々のすぐそばにありながら普通は住まない場所に住んでいるという設定の話は、いくつかあります…





「神さまが世界をお造りになったのは最初の一日目ですよね。で、太陽とか、お月さまとか、お星さまは四日目でしょう。だったら世界って、最初の一日目はどうやって光ってたんだろう」(本作登場人物の台詞)
全5巻まとめてのレビューです。フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー(1821-1881)の…





「私がいなければあなたは生きていけないわよ」 こんなことを20歳の女性に言われる、じきに50歳になる主人公の話ですが、主人公のみならず男性読者の偽善をも糾弾するラストが待っています。
20世紀イタリア文学を代表する作家の一人ディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)は、長篇小説を…




「すべてのドイツ人が1933年3月を境に別人になった。わたしが常々言うように、”銃口の前では、誰もが国家社会主義者”なのだ」(本書より) 1933年3月、ヒトラーは国会選挙の結果、政権を掌握しました。
「人それぞれに腐敗の形があるというのが、国家社会主義政権下の生活のきわだった特徴だろう。政府は、ワイ…




「だが、グレースはいったではないか。あのとき生徒たちが抗議したのは、学校で、自分たちの頭に『ごみ』をつめこまれることに抗議したのだと。じゃあ、自由になった学校では、なにを学ぶのだろう」(本書より)
作者のビヴァリー・ナイドゥーは、1945年、アパルトヘイト政策下の南アフリカに生まれた白人女性です。…




「世間には『犬にも劣る』などという言葉があるが、そういうことを言う人間の大半は、実際に犬に比べてはるかに下等な動物だ」 志賀直哉の短篇『菰野』では主人公がこういう趣旨のことを飼犬に呟いているそうです。
安岡章太郎(1920-2013)は、もちろん名前は知っていましたが、初読みです。代表作は何かと聞かれ…




「ネコの手を借りる」とは、よく言いますが、「ネコの足を借りる」お話です。
本書の作者紹介には、次のように書かれています。 「作者はネコだけを診察するキャットドクターです…



1960年代から70年代にかけて、SF・ファンタジーの分野で活躍したケイト・ウィルヘルムは、80年代からミステリーも手掛けるようになり、80年代後半からはそちらに注力していたようです。
ケイト・ウィルヘルム(1928-2018)は、SF・ファンタジー作家というイメージが、たぶん一般には…