早朝始発の殺風景




「『加藤木(かとうぎ)くん』 名前を呼ばれた。 『...おはよう。殺風景』 僕も彼女の名前を返した。殺風景というのが彼女の苗字だ」(表題作『早朝始発の殺風景』より)
青崎有吾が、2016年から2018年にかけて雑誌に発表した5篇を収録し、それに書下ろしのエピローグを…

本が好き! 1級
書評数:2296 件
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。




「『加藤木(かとうぎ)くん』 名前を呼ばれた。 『...おはよう。殺風景』 僕も彼女の名前を返した。殺風景というのが彼女の苗字だ」(表題作『早朝始発の殺風景』より)
青崎有吾が、2016年から2018年にかけて雑誌に発表した5篇を収録し、それに書下ろしのエピローグを…




こういう邦題ですが、実は、原題の意味を考えると、個人的には不満なのです。
1949年にミュンヘン南部のシュタルンベルク湖の近くでうまれたパトリック・ジュースキントは、『香水 …




私小説があるのなら、私絵本もあっていいでしょう。
1980年にカナダ生まれたイラストレータのシドニー・スミスは、先日読んだ『ぼくは川のように話す』(2…




「私は父親なんです。私が彼女をこの世に送り出したわけですからね。私は同じひとりの女の父親であり、夫であり、恋人でもあるわけです」(表題作『偉大なる幻影』登場人物の台詞)
表題作はディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)が1960年に発表したSF中篇です。本書には他…




ウクライナの戯曲集としては、日本最初の本となります。初めて知る3人の作家の3作品が収録されています。
本書の編訳者である村田真一は、上智大学教授の他に、国際スラヴィスト会議日本委員、日本スラヴィスト協会…




「『ええ、犬は好きですよ』ブラウン神父が言った。『逆さに綴ってGODになったりしなければね』」この出だしが有名な傑作『犬のお告げ』と、これも犬ミステリーの傑作『百万に一つの偶然』が収められています。
ミステリーと犬の相性は良いものですが、1984年刊の本書を編纂した小鷹信光も犬が好きなのですね。本書…




本書を読むと、内田百閒はなんと悟りと無縁の老人だったのだろう、という印象を持つかもしれませんが、初めて飼った猫が産まれたての子猫で、1年余りで失踪すればこうなっても無理はないような気もします。
本書には、内田百閒(1889-1971)が書いた、小さな野良猫だったノラが自宅に住みついたものの、そ…





「これまでに書かれたもっとも深遠な文章、とテンプルが熱っぽい口調で言った、それは動物学の最終ページにのっていた文章だ、生殖は死の始まりなり」(本書より)
1926年刊の本書は、若い頃読んで感銘を受けた本の一つです。今回の再読で気づいたのですが、原題は "…




ハンガリーの12人の作家による12作が収録されたアンソロジーです。ハンガリー文学の質の高さが俯瞰的に味わえる本です。
先日読んだ『現代東欧文学全集』第四巻に収録されていたデーリ・ティボルとシャーンタ・フェレンツ(192…





「君は、いま話したことを、全部あの現場の血痕から思いついたのか」「思いついたんじゃないですよ。筋道立てて考えたんです」 作中に登場する仙堂警部の問いかけとそれに対する高校二年生探偵の裏染天馬の返答です。
2016年刊の本書は、中間テストで8科目800満点をとった、風ヶ丘高校二年生探偵の裏染天馬シリーズと…




「おはよう!」「何時だい?」「10時10分。知ってる?ママのことときどき10時10分って呼ぶの、だってがに股であるくんだもの」(本書より)
アルゼンチンの作家マヌエル・プイグ(1932-1990)の代表作と目される作品です。これも、かもめ通…



「その場にいなかった人にはなにが起こったのか想像もできない」 作者の日本在住時、アポパートの隣室に独りで住んでいた老女性Hは、いつもこの言葉から始め、自らの広島被爆体験を語ったそうです。
本書の冒頭には、作者による『日本の読者へ』と題する文章が収められています。そこでは、原爆投下について…




犬とミステリーの相性は良いものですが、本書に登場するオオカミ犬の疾風(はやて)ぐらい印象的な犬は、私の読んだ範囲では、ミステリーの世界では他に思い浮かびません。
1960年生まれの乃南アサが、1996年に発表した、女刑事・音道(おとみち)貴子シリーズの第一作で、…




『不思議の国のアリス』の冒頭に登場する動物は、もちろん兎ですが、『鏡の国のアリス』の冒頭に登場する動物は何でしょうか?両者ともアリスを摩訶不思議な世界に案内するのですが、案外難しい問題かもしれません。
1871年に発表された本書は、『不思議の国のアリス』(1865年)の続編となります。書き始めたのは大…





「『へんなの』とアリスは考えました。『絵もお話もない本なんて、なんの役にもたちはしないわ』」(本書より) 数十年ぶりの再読でしたが、こんなすごい本だったのですね。
ルイス・キャロル(1832-1898)が1865年に発表した、あまりにも有名な小説です。今回は、数十…





1958年に本国で出版された、60の作品が収められているブッツアーティの自選傑作集から、16作をさらに選び、日本で最初に出版されたブッツアーティの短篇集です。いわば、ベスト・オブ・ベストです。
日本独自編纂の本書は、私が初めて読んだブッツァーティ短篇集です。本書は1974年に同じ河出書房新社か…




「たこ焼き屋では、二百円のお釣りが五十円玉四枚で返ってきた。かき氷屋では三百円が五十円玉六枚で、そして焼き鳥屋では、五百円で五十円玉十枚」表題作は屋台でこんなお釣りの返し方をするお祭りの謎解きです。
風ヶ丘高校の2年生探偵・裏染天馬の『体育館の殺人』(2012年)『水族館の殺人』(2013年)に続く…




「きみが仕事をする、それは構わないよ。でも、子供たちはどうするつもりだ?」世界中の夫婦間で何回繰り返されたのか分からないこのやりとりの後、夫婦は相談の上、ヌヌ(ベビーシッター)を雇うことにします。
「赤ん坊は死んだ。ほんの数秒で事足りた」 カミュの『異邦人』を連想させる、この衝撃的な出だしを…



「おれが死ぬときは死ぬときさ。喝采だの、栄光だの、旗だの、ラッパだの、そんなものは一切おれにとって無関係さ。おれの生涯が結局偉大だったのか、貧弱だったのか、そんなこと知るもんか」(『人口調査』より)
先日読んだ犬が登場するSFアンソロジー『幻想の犬たち』に、連作短篇集である本書の話の一つが収録されて…





「はじめて おれが ここに きたとき・・・ おまえいたよな。 おれは どんどん おおきくなって、おまえは ゆっくり おおきくなった。だから、おれのほうが あにきだぜ」(本書より)
先日、ご近所で野良猫の子猫を保護した方から頼まれて、一時的に子猫を預かりました。この子たちは母猫と一…