マルタの鷹【Kindle】



「マルタの鷹」という彫刻を巡って繰り広げられるハードボイルド。クールな中年の私立探偵と謎の美女。アクションとドライな結末。行間に隠された謎に迫られつい先を読まされますが、実は映像向きかもしれません。
こういうのをハードボイルドと呼ぶのだろうと、ハードボイルドの定義もよく理解できていない私が思いまし…
本が好き! 1級
書評数:407 件
得票数:8926 票
国文科出身の介護支援専門員です。
文学を離れて働く今も、読書はライフワークです。



「マルタの鷹」という彫刻を巡って繰り広げられるハードボイルド。クールな中年の私立探偵と謎の美女。アクションとドライな結末。行間に隠された謎に迫られつい先を読まされますが、実は映像向きかもしれません。
こういうのをハードボイルドと呼ぶのだろうと、ハードボイルドの定義もよく理解できていない私が思いまし…




私の夢を、次々にかなえてくれた大好きなオルフェーヴル。そんなオルフェーヴルについて、競馬ライターたちが存分に語った本。強さの裏にある関係者たちの苦労。血統の奇跡。読み終えた私が次に彼に託す夢とは…。
私にとってオルフェーヴルは、夢をかなえてくれる馬でした。三冠馬という夢、3歳での三冠+有馬記念とい…



『嵐』の続編となる藤村の自伝的短編小説。叢書の出版で思いがけず手に入れた大金を、いとも簡単に子供たちに分配してしまう「私」。藤村一家のお金に対するルーズさが、さらに際立つ気がしたのは私だけでしょうか。
島崎藤村の自伝的短編小説で、 『嵐』 の続編と言えます。 田舎で農業に従事するようになった…



藤村の自伝的短編のひとつ。母を亡くした4人の子と共に生活していた頃の、嵐のような毎日が描かれます。子を田舎へ送る父と、父を思いやる子たち。共に過ごした時間は短くとも互いを思う親子の絆が感じ取れました。
藤村の自伝的小説のひとつで、藤村42歳から50歳頃。洋行から帰った「私」が、母に死に別れた4人の子…




アパルトヘイト政策が廃止されたアフリカのある国で起こった、白人の極右勢力による痘瘡ウイルスを使ったテロ。黒人と共に戦うのは1人の日本人医師。芯に根付いた差別意識を変えるのは、何と困難なことでしょうか。
フィクションとはいえ、「黒人だけを対象にした痘瘡ウイルスによるテロ」という過激な内容を扱っているた…



幼い日に両親を殺された兄弟妹。詐欺師となった彼らは、時効間近に犯人逮捕のため警察を欺こうとします。でも何かが違う。一気読み必至の作品ですが、もう少し深いところを読みたかったというのが正直な感想です。
読み始めたら止まらない、一気読みの作品でした。 まだ小学生の3兄弟妹が、流星を見るため両親…




17歳の時の初恋を成就するため、51年もの長い年月、女の夫が死ぬのを待ち、そのためだけに生きた孤独で愚かな男の人生。「コレラ感染者乗船」の旗を掲げた船の中だけで成立する愛は、死出の旅でしかありません。
すでに一度人生を終えたと言えるひとりの老人が、年老いてから初恋の人ともう一度結ばれるという物語であ…





今から一千年もの昔、この日本で、女性によって生まれた物語。多くの人々の手で書き写されながら今日まで、国境を越えて親しまれ、これからもまた読み継がれていくであろう物語。それは何と面白い物語であることか。
『源氏物語』。今から一千年もの昔、この日本で、女性によって書かれた長い物語は、今も多くの人々を魅了…



キリシタン大名高山右近の生涯。キリシタンとしても武士としても力のあった右近の最期は、それが遠きマニラの地であったとしても、恵まれていたと言えるでしょう。名もなき信者たちの、過酷な殉教や棄教に比べれば。
高山右近について私が知っていたことと言えば、キリシタン大名であったこと、マニラに追放されて殉教した…





「51.浮舟」から「54.夢浮橋」を収録。『源氏物語』はここに完結。浮舟をめぐる薫と匂宮による三角関係の悲恋。男たちの身勝手なプライドに翻弄される憐れな女の運命は。答えのないまま物語は終りを告げます。
「51.浮舟」から「54.夢浮橋」までを収録。一千年も前に生まれた壮大なこの物語は、ここでついに完…



仁木悦子の晩年に出版された短編集。動きの少ない中、犯人の言い間違いによる小さなミスで事件が解決されるのが特徴。母や子に向けるやさしさが仁木悦子らしいと思います。かつての学生探偵仁木兄妹にも注目です。
仁木悦子が晩年に発表した短編集です。 『猫は知っていた』 の頃は学生だった仁木兄妹も、兄は植物学者…




守銭奴の父によって、世間のことを何も知らずに育てられた田舎娘のウジェニー。そんな彼女の前に突然現れたのは、パリからきた不幸で美しい従兄弟。読者は結ばれないことを百も承知。それでも愛を貫く姿がりりしい。
ウジェニー・グランデという女性が貫いた愛は、思いを寄せる相手に対してのものではなくて、自分自身の恋…





「47.総角」から「50.東屋」を収録。薫の愛を受け入れないまま大君は世を去り、薫はその形代として浮舟を求めました。物語を動かすのは匂い。薫が生まれながらに持つ香の魅力が、不思議と読者を不安にします。
「47.総角」から「50.東屋」までを収録。宇治で薫が出会った大君と中の君の姉妹。父は源氏の弟にも…



「死んだ恋人の子どもを生む」ため、全てを捨てブラジルに旅立った舞子。謎が明らかになる過程は冗長すぎ、受精の謎も想像の域を超えるほどのものではありません。私は舞子の気持ちに共感できたので読めましたが。
子供を生んでいない私には、「自分の血を引く子がほしい」という欲求はありません。自らの遺伝子を持つ子…



歴史小説の醍醐味は、作者が歴史上の人物にいかに命を吹き込み、生き生きと描き出せるか。この作品では、頼朝が突然旗揚げをした理由がわかりにくく、残念ながら頼朝の人物像が浮かんで来ませんでした。上下2巻。
中学生の時に『源頼朝』という伝記本を読んで以来、源頼朝に引き付けられています。平治の乱で父と兄を亡…




一方が絶縁状を突き付けても、20年以上会わなくても、会って話せば昔に戻れるのが本当の親友。だから将監は源五に賭けたのです。自らの命と藩の未来を。立場はそれぞれ異なっても、生き方は同じであるからこそ。
領内の新田の様子を視察する月ヶ瀬藩家老松浦将監と、その案内役を務める郡方の日下部源五。すでに齢50…





「38.夕霧」から「46.椎本」を収録。巻名だけを置いた「41.雲隠」で源氏の死と物語の終りを暗示し、物語はついに宇治十帖に突入。紫の上の死は作者が源氏に与えた最大の罰。女ばかりあはれなるものはなし。
「38.夕霧」から「46.椎本」を収録。巻名だけを置いた「41.雲隠」で主人公光源氏の死と物語の終…



聖書に登場する女性たちについて、著者が自由に考察したもので、意外に肩の力を抜いて読むことができます。基督教美術に触れたとき、また遠藤周作の小説やヨーロッパ文学を読むときの、一助となることでしょう。
聖書に登場する女たちについて、遠藤周作が自由に書いた本で、タイトルからイメージするよりもずっと、肩…



ディケンズ2作目の長編。往年の作品に比べストーリーは単純で、それ故のわかりやすさが人気の理由でしょうか。純粋な孤児の少年オリヴァーと、フェイギン率いるスリ集団。私が心惹かれたのは、悪人たちの方でした。
ディケンズの2作目の長編ということで、晩年の傑作 『大いなる遺産』 と比べると、ストーリーは単純で…



豊臣秀吉の正妻おねねの生涯を描いた作品です。戦国の世を、下層階級から天下人にまで上り詰めた秀吉。おねねの生涯もさぞ波乱万丈であったことでしょうが、常に冷静さを失わない、庶民的なその姿が印象的です。
豊臣秀吉の正妻おねねの生涯を描いた作品です。刊行は1971年。この時代に、歴史の表舞台に立っている…