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萩尾望都対談集第2弾。吉本隆明、野田秀樹…伊藤理佐とは下ネタで!

この春に少女漫画家として初の紫綬褒章を受賞した萩尾望都。手塚治虫・松本零士・寺山修司・小松左京といった錚々たる面々との貴重な対談をまとめた初の対談集マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編の刊行がまだ記憶に新しいが、その第二弾となるコトバのあなた マンガのわたし 萩尾望都・対談集 1980年代編が先日刊行された。
 
今回の対談集も非常に豪華な面子だ。
「戦後思想界の巨人」と呼ばれた評論家の吉本隆明、人気劇作家の野田秀樹、百億の昼と千億の夜の光瀬龍、碩学の独文学者として知られる種村季弘、ソルジェニーツィンなどの翻訳を手掛けた名翻訳家の小笠原豊樹、幻詩狩りで日本SF大賞を受賞した作家の川又千秋。本書にはさらに特別対談として、漫画家の伊藤理佐との語り下ろし対談、そして萩尾自身のエッセイ「ブラッドベリ体験」が収められている。
 

 
この対談集、一番面白いのは巻末に収録された伊藤理佐との語り下ろし対談だ。
萩尾望都をして「ファン」と言わしめるエッセイマンガの描き手である伊藤理佐。萩尾望都が下ネタを話題にしてここまで盛り上がるのは、他ではなかなか読めないのではないだろうか。
伊藤理佐が繰り返し萩尾望都を「セクシーだ」と言うのだが、確かに萩尾作品にとって性とエロスは重要なポイント。前回の『マンガのあなた SFのわたし』は70年代という時代のせいか、性とエロスは自然と前面に出てきていたが、本書ではそこをフィーチャーしているのはこの対談だけになっている。

 
吉本隆明との対談では、難解な口調の吉本を前に、奔放に自説を展開して譲らない若き萩尾のスタンスが読んでいて気持ちいい。『マンガのあなた SFのわたし』でも思ったのだが、対談相手に物怖じしない萩尾の堂々とした作家としての在り方はほんとうにカッコいいのだ。
新しい表現として注目を集めていた萩尾らの少女マンガを理解しよう、自分の批評として読み解こうと頑張る吉本の努力もわかるのだが、途中で話が噛み合わなくなって萩尾が苛立っているようにも読める部分の緊張感が読者としては面白かった。
 
半神で共作した野田秀樹との対談では、元演劇部の萩尾ならではの濃い話題が続く。この2人は、本書に収録された対談のほかに四回も対談を行っているらしい。そちらも合わせて読みたくなった。

 
『百億の昼と千億の夜』をめぐる、原作者の光瀬龍との対談で、司会をつとめるのはなんと米沢嘉博。マンガ評論家としても、またコミックマーケット第二代代表としても知られる米沢だが、以前に萩尾と対談した事もあったという。
本書に収録されている光瀬との対談では、『百億の~』の主人公で中性的な魅力で人気の「阿修羅王」の話題に始まり、萩尾の初恋エピソードが語られている。萩尾ファンなら一読の価値ありだ。

 
続く種村季弘との対談は、やはり吸血鬼の話題が中心となるが、そこから自殺や学校生活の話が出てくるのは面白かった。
レイ・ブラッドベリをめぐる、翻訳家の小笠原豊樹、作家の川又千秋とも鼎談とエッセイでは、萩尾のブラッドベリ愛が存分に語られている。かなり早い時期にブラッドベリ作品を漫画化した萩尾が、ブラッドベリのどの部分に惹かれ、どのように漫画化していったのかがわかる興味深い資料だろう。

 

    

鼎談と直接の関係はないが、ブラッドベリ御大と対面を果たした際の萩尾とブラッドベリのツーショットも本書で目にする事ができる『マンガのあなた SFのわたし』でもそうだったが、今回も、光瀬との対談に添えられた様々な阿修羅王の図版、野田との図版に添えられた野田の劇団夢の遊眠社のパンフレットの図版など、図版の選び方が親切で素晴らしい。

  
 
目次
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●第1章 吉本隆明 
「自己表現としての少女マンガ」
 
●第2章 野田秀樹 
Part.1 「オフレコにしてくれます?」 
Part.2 「夢は舞台を駆けめぐる」
 
●第3章 光瀬 龍 
「百億の昼と千億の夜」
 
●第4章 種村季弘 
「吸血鬼幻想」
 
●第5章 小笠原豊樹+川又千秋 
「レイ・ブラッドベリの魅力」
 
●第6章 伊藤理佐 
「おんなの扉」
 
◆エッセイ 
「ブラッドベリ体験」 萩尾望都 
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【関連ページ】

萩尾望都さん・紫綬褒章インタビュー全文掲載 | NHK「かぶん」ブログ:NHK

漫画家になることに対するご両親からの不理解については、本書のなかでもたびたび触れている萩尾望都さんだからこそ、こういうかたちで評価されて良かったな…と思いました。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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