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あなたもゾンビを作りませんか?「たったひとつの腐ったやり方」とは

先日開催された「文学フリマ」に行って来ました。今回は僕がゲットした同人誌の紹介したいと思います。何冊かまとめてゲットしてきたのですが、まだ読み切れていないので、他の同人誌は余裕があれば日を改めて紹介します。
 
今回の収穫のうち、真っ先に取り上げたいのは『bnkrR vol.4』。特集は「ゾンビ」。この同人誌は「ボンクララ」と読むようです。統一テーマとして「ゾンビ」を掲げ、裏表紙に書かれたキャッチコピーで「文学は死んだ。そして蘇った、ゾンビとして。」と刺激的に煽るこの一冊。なんと表紙は先日のマンガ大賞で2位に輝いた大東京トイボックスの著者「うめ」のお二人。ドストエフスキー『悪霊』の岩波文庫版を、まるで転校生のお約束のように口に咥えたセーラー服メガネおさげ女子が描かれています。しかも全身に包帯巻いて斬馬刀を両手に持って。萌え要素満載なのにごちゃごちゃした印象にならずにすっきりとまとまっているのはスゴイです。
 

 
本誌は文学フリマ当日で完売してしまったらしいので、この記事で内容に興味をもった人は増刷を待とう。
さて『大東京~』の前作にあたる東京トイボックスからの「うめ」氏のファンとして、この表紙の本誌をゲットしたかった、というのは確かにありますが、これを紹介する理由はそれだけではありません。この同人誌に収録されている「ゾンビモデルジェネレーション」という評論が気になってしょうがなかったのです。
この評論、著者はゾンビライターとして活躍している比留間史乃氏(@tk_zombie)。
 
「ビジネスモデル」をどのように生み出すかを視覚的に解説した世界的ロングセラービジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書を、ゾンビコンテンツに当てはめてみて「あなたもゾンビを作ってみませんか?」と誘うこの論考。もう何度目かになるゾンビブームの昨今、大量に生産され続けるゾンビコンテンツをさらに効率的に増産できるしくみの紹介だとも言えるでしょう。まさに「たったひとつの腐ったやり方」(裏表紙キャッチコピーより)。

 
大量に発表され、どんどん消費されていくコンテンツ産業に対して、ビジネス書のフレームワークを当てはめて解説するという意味では先日紹介した飯田一史氏のベストセラー・ライトノベルのしくみとも共通するところのある評論です。

 
「ゾンビモデルジェネレーション」ではゾンビコンテンツを、9つの構成ブロックとひとつの背景で分析します。
具体的には
・ゾンビ
・視点人物
・ゾンビとの関係
・接触
・目的
・所有するもの
・人間
・抑圧される感情
・解放される衝動
・舞台設定=年代や場所、インフラなどの社会背景

というのが構成ブロックと背景にあたります。
 
たとえばゾンビ映画の古典的金字塔『ゾンビ』では、
・ゾンビ 動作:遅い 知能:低い 原因:不明 行動パターン:生前の行動を繰り返す
・ゾンビとの関係 災害 元友人
・接触 対決 ラジオ・テレビ
・解放される衝動 物欲 暴力 略奪
・舞台設定 1980年代前後の現代アメリカ 警察なし
 
といった感じ。構造を明快に分析することで、『ゾンビ』の主要テーマが「見栄を張ると死ぬ」というシンプルなものだということを指摘します。このほか、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『ドーン・オブ・ザ・デッド』『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ゾンビランド』『ゾンビーノ』『コリン LOVE OF THE DEAD』といった名作の数々が分析されており、非常に説得力のある内容になっています。評論の最後にはネットでよく話題になる「社畜」を皮肉ったオリジナルゾンビ「社畜・オブ・ザ・デッド」のモデルが提案されているので、ブラック企業に務めていてもうダメかも知れない……という人は読まないほうがいいかも知れません。
 
この評論のほか、全部で10篇の短編小説が収められている本誌。
故スティーブ・ジョブズのゾンビが登場する作品や、Facebookのような架空のサービスで交友関係が数値化され取引される世界にいきる「ぼっち(=コミュニケーション能力に乏しく、友人がいない人)」を描いた作品など、個人的にとても興味深い作品も含まれています。
 
目次
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ZBL 鳥井雪
ゾンビとジョブズと出荷 松永肇一(ma2)
ゾンビモデルジェネレーション 比留間史乃
ソーシャル・キャピタル 伏津あたる
異説 振袖火事 稲荷辺長太
俺の嫁がゾンビなんだが愛人と壮絶バトル始まったなう 星野トレン太
ヨミちゃんと一緒 藤山京子
子供たちは屍人と遊ぶ 迷路平蔵
小次郎の雨 スズキ与太郎
ゾンビ、ひみつ、夏祭り 城島はむ
労働する死者たち~Working of Dead~ 平井太郎
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なお、ゾンビというと最近知ったのですが「ピアノゾンビ」というバンドがカッコいいです。本誌とは直接は関係ありませんが。
ヴィジュアル系バンドcali≠gariのギタリスト桜井青さんのようなボーカルの声、筋肉少女帯のような物語性のある歌詞、氣志團や神聖かまってちゃん、インビジブルマンズデスベッドとかザ・バックホーンやBJCみたいな正統派なんだけどどこかひねくれている音楽性が素敵。
こう並べてみると凄いバンドだな。「音楽は死んだ」「ロックは(略)」「パンクは(略)」って言われますけど、ゾンビになっても生き続けるぜ、っていうポジティブな印象を受けます。

 
【関連ページ】

bnkrR vol.4 – bnkr | ブクログのパブー

当記事執筆時には完売状態だった本書ですが、先日、電子版がリリースされたようです!
これでみんなもゾンビコンテンツが作れる!
 

顔面食いちぎり事件、全米を震撼させたマイアミ・ゾンビの正体(エキサイトレビュー) – エキサイトニュース

先日、一部で話題になった「マイアミ顔面食いちぎり男事件」。
その後、全米で巻き起こった「ゾンビ」疑惑の顛末を、本書の「ゾンビモデルジェネレーション」を書いたtk_zombie氏がまとめています。
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みんながゾンビゾンビと騒ぐせいで「マイアミから20分のところに住んでるんですけど、ゾンビが出たってほんとなんでしょうか?」と本気で心配する女の子をみんなでなだめるスレまであった
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のくだりは、ゾンビウォッチャーだからこそ掘り起こせたネタだと思います。
それにしても今回の事件の原因になった新しい麻薬「バスソルト」、恐ろしいですね。
 

text.ssig33.com – ゾンビゾーン

上掲の記事をさらに補完するような内容。
マイアミ顔面食いちぎり事件の加害者がハイチ系だったこと、そしていわゆる「ゾンビ」の起源がハイチにあったこと、そしてハイチの地獄のような歴史を紹介しながら、問題の根深さを浮き彫りにしている。
 

ゾンビ日記 [著]押井守 – 松永美穂(早稲田大学教授・ドイツ文学) | BOOK.asahi.com

ゾンビ繋がりで。
この本、あの押井守によるゾンビ小説ということでとても気になっていたので、書評が読めて嬉しいです。
 

広大なアフリカの大地をひた走る恐怖の脱出劇~映画『ゾンビ大陸 アフリカン』2012-07-24 – メモリの藻屑 、記憶領域のゴミ

ゾンビ好きのあいだではすでに話題になっていた『ゾンビ大陸 アフリカン』のレビュー。
「ゾンビのルーツを中米からさらにアフリカ大陸まで遡った!」というアイデア勝負だけかと思いきや、なかなかの佳作のようです。
気になる。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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