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切なさと美しさと。アンデルセンからしらほし姫まで、人魚本の色々。

「人魚」というものにセクシーな印象を持っているのは僕だけでしょうか。人魚は、上半身裸の美女(ただし下半身はサカナ)の姿で描かれる事が多いので、そういう刷り込みがあるのかも知れません。
 
先日刊行された日本の人魚像- 『日本書紀』からヨーロッパの「人魚」像の受容まででは、井原西鶴の『武道伝来記』や伝説に登場した人魚像を中心に、『六物新志』など博物学や民俗学の観点から人魚を扱った文献も取り上げ分析したもの。日本の「人魚」像の形成に影響を与えたと推測される日本以外の地域の文献、例えば古代中国の地理書『山海経』やアンデルセンの童話「人魚姫」等も取り上げています。
 

 
人魚といえばまっさきに思い浮かぶのは、アンデルセンの「人魚姫」。ポプラ社の「世界名作ファンタジー」シリーズのまんがアンデルセン 人魚姫・マッチ売りの少女・野の白鳥や、評論社から出ている「美しい童話ではなく、一女性の魂の成長」を描いたというあなたの知らないアンデルセン「人魚姫」も要チェックです。

にんぎょひめ (世界名作ファンタジー 10)

人魚姫

人魚ひめ

人魚姫 (永田萠アンデルセン名作選)

 

      

 

      

 

      

 
 
このほか、『うる星やつら』『らんま1/2』や『めぞん一刻』、『犬夜叉』などで知られる高橋留美子も短篇集人魚の森』『人魚の傷で人魚を描いています。
坂道のアポロンで最近注目を集めている小玉ユキの短篇集光の海も人魚がテーマ。お伽話をモチーフにした羽衣ミシンも、これは人魚テーマではありませんが併せてオススメ。

 

      

 

      

 
 

なお、桜庭一樹の不朽の欝ラノベ砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないのメインキャラクター「海野藻屑」も自称人魚でした(それにしても本当に酷い名前だ…)。
あと「人魚は人魚でも上半身のほうがサカナ」といういわゆる半魚人については、一部で大人気のクトゥルー神話関連で無数に本が出ていると思いますが、こっちはまったくセクシーではなく、ひたすら不気味。何故かカワイイ絵柄のものが最近出て来始めているのですが不思議な感じです(僕は大好きです)。中でも、異形たちによると世界は…には、だんだん半魚人化していく女子高生を叙情(?)的に描いた短編が収められていて、これも人魚のお話と言えなくはないでしょう。
人魚といえば、ONE PIECEのしらほし姫もかわいいですよね、大きくて。

 

      

 
 
ひと通り人魚関連の作品を辿ってみると、やはりどこか切ないお話が多いように思います(最後のクトゥルーものですら、悲恋ではないまでも、どこか切ない作品でした。…しらほし姫は…まぁ…その…)。切なさにもほんとに色々ありますが、不思議さと切なさを組み合わせようとするときに、人魚というのは使いやすいモチーフなのかも知れません。その「使いやすいモチーフ」の系譜を辿ることで、その深みや奥行きを知る良い手引きになることでしょう。
 
以下は『日本の「人魚」像』の目次です。
 
目次
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まえがき
第一章 江戸時代の「人魚」像(1)―文学作品に登場した「人魚」― 
 Iはじめに
 II小説の中の人魚像
  1井原西鶴の「命とらるる人魚の海」
  2山東京伝の『箱入娘面屋人魚』
  3曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』
 III随筆(紀行文)の中の人魚像
  1菊岡沾凉の『諸国里人談』
  2鳥翠台北茎の『北国奇談巡杖記』
  3松浦静山の『甲子夜話』
 IVおわりに
第二章 江戸時代の「人魚」像(2)―博物学の舶来を中心として― 
 Iはじめに
 II鎖国と博物学の由来
  1ヨンストンの『動物図譜』
  2貝原益軒の『大和本草』
  3寺島良安の『和漢三才図会』
  4新井白石の『外国之事調書』
  5後藤梨春の『紅毛談』
  6大槻玄澤の『六物新志』
  7小野蘭山の『本草綱目啓蒙』
  8司馬江漢の『西洋画談』
 IIIおわりに
第三章 江戸時代以前の「人魚」像―日本における「人魚」像の原点へのアプローチ― 
 Iはじめに
 II奈良時代の「人魚」像―『日本書紀』と聖徳太子―
 III平安時代の「人魚」像―『倭名類聚鈔』と『山海経』―
 IV鎌倉時代の「人魚」像
  1橘成季の『古今著聞集』
  2『吾妻鏡』
 V南北朝時代の「人魚」像―『太平記』と司馬遷の『史記』―
 VI江戸時代前期の「人魚」像
  1三浦浄心の『北条五代記』
  2佐々木氏郷の『江源武鑑』
  3黒川道祐の『遠碧軒記』
 VIIおわりに
第四章 明治時代の「人魚」像―西洋文化の流入と「人魚」像への影響について― 
 Iはじめに
 II蒲原有明の物語詩「人魚の海」(『有明集』)について
 III北原白秋の詩「紅玉」(『邪宗門』)
 IV森?外の小説「追儺」
 V南方熊楠の随筆「人魚の話」
 VIおわりに
第五章 大正時代の「人魚」像(1)―翻訳文学と「人魚」― 
 Iはじめに
 II山村暮鳥の詩「人魚の歌」とイエイツ
 III泉鏡花の小説「人魚の祠」
 IV谷崎潤一郎の小説「人魚の嘆き」とオスカー・ワイルドの童話「漁師とその魂」
  1谷崎潤一郎の「人魚の嘆き」
  2オスカー・ワイルドの「漁師とその魂」
  3「ローレライ」伝説との関係
 Vおわりに
第六章 大正時代の「人魚」像(2)―アンデルセンの童話「人魚姫」の受容― 
 Iはじめに
 II小川未明の『赤い蠟燭と人魚』、アンデルセンの童話「人魚姫」、フケーの童話『ウンディーネ(水妖記)』について
  1小川未明の『赤い蠟燭と人魚』
  2アンデルセンの「人魚姫」
  3フケーの『ウンディーネ(水妖記)』
 III萩原朔太郎の詩「その襟足は魚である」
 IV堀口大学の詩「人魚」
 Vおわりに
第七章 昭和時代の「人魚」像(1)―翻案小説の中の「人魚」像― 
 Iはじめに
 II巌谷小波の童話『天の橋姫』
 III小栗虫太郎の小説『人魚謎お岩殺し』
 IV大手拓次の詩「木製の人魚」(『藍色の蟇』)
 V中原中也の詩「北の海」(『在りし日の歌』)と丸山薫の詩「詩人の言葉」(『青春不在』)
 VI太宰治の小説「人魚の海」(『新釈諸国噺』)
 VIIおわりに
第八章 昭和時代の「人魚」像(2)―戦争体験と「人魚」像― 
 Iはじめに
 II窪田啓作の詩「人魚の歌」
 III安部公房の小説「人魚伝」(『無関係な死』)
 IV立松和平の小説「人魚の骨」
 V長崎源之助の童話『人魚がくれたさくら貝』
 VI川北亮司の童話『ふたごの魔法つかい 人魚のうた』
 VII島田荘司の小説「人魚兵器」
 VIIIおわりに
第九章 日本の「人魚」伝説―「八百比丘尼伝説」を中心として― 
 Iはじめに
 II「八百比丘尼伝説」の伝播時期
 III「八百比丘尼伝説」の伝播地域
 IV「八百比丘尼」の寿命
 V「八百比丘尼伝説」の影響
 VIおわりに
付章1 「人魚」の実像考―民間伝承の中の「怪物」の正体について― 
 Iはじめに
 IIジュゴン(儒艮)など(海牛目の哺乳類)
 IIIオオサンショウウオ(有尾目の両棲類)
 IVリュウグウノツカイ(アカマンボウ目の魚類)
 Vその他の動物―イルカ、アザラシなど(哺乳類)―
 VIおわりに
付章2 ギリシア・ローマ時代の「人魚」像―ヨーロッパにおける「人魚」像の原点、「セイレーン」を中心として― 
 Iはじめに
 IIホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』
 IIIプラトンの『国家』ほか
 IVアポロドーロスの『ギリシア神話』
 Vオウィディウスの叙事詩『変身物語』
 IVおわりに
付章3 一八世紀以前のヨーロッパの「人魚」像―「セイレーン」から「マーメイド」へ―
 Iはじめに
 IIダンテの詩『神曲』
 III「セイレーン」から「マーメイド」へ
  1チョーサーの翻訳詩『薔薇物語』
  2ギョーム・ド・ロリスとジャン・ド・マンの寓意物語『薔薇物語』
 IVシェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』ほか
  1喜劇『間違いの喜劇』
  2喜劇『真夏の夜の夢』
  3悲劇『アントニーとクレオパトラ』
 Vミルトンの叙事詩『失楽園』
 VIおわりに
あとがき

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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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