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絶滅した世界でヒーローたちが互いを貪り合う『マーベルゾンビーズ』

世の中、いろいろと何でもアリなんだ、と思わされるようなフリーダムな出来事をたまに見かけます。
そのなかでも昨年知って一番驚愕した事件がありました。「アメリカの大手コミックレーベルが、みずから版権を持つヒーローたちをゾンビ化し、全人類が滅亡した世界で互いを貪り合わせる」という凄絶な企画がヒットした、というニュースです。
シリーズ自体は数年前から続いているのですが、これがマーベルゾンビーズとして今年とうとう邦訳されました。
 
珍書・奇書の類として笑って済ませてもいいキワモノですが、原案が映画も大ヒットしたキック・アスのマーク・ミラー、ストーリーは日本でもドラマ版の配信が始まったウォーキング・デッドのロバート・カークマンだと言えば、この企画が大手レーベルが単にちょっと血迷っただけではないことがわかるでしょう。彼らは本気で血迷っているようです。
 
前書きで、ストーリーを手掛けたカークマン本人が爆笑モノの困惑をさらけ出しているので、そこだけでも読む価値あり。
「こんな本を作るつもりはなかった。本当に、冗談抜きでだ」に始まり、「こいつは酷い、酷すぎてすばらしい……」「クビになると思った」と、興奮と不安を入り混じらせながら告白するカークマンの「前書き」を読んでちょっと気を緩めて本編を開くと、いきなり見開きでゾンビ化したヒーロー達が描かれていて面食らいます。面食らって思わず笑ってしまいました。
 
マーベルゾンビーズ
 
書影の中央下段に見える物凄い顔をした青っぽいキャラクターは、本編でものっけから脳味噌をダラダラ垂らしながら動きまわるキャプテン・アメリカ(作中ではキャプテン(大尉)からカーネル(大佐)に昇進していますが)。デス・オブ・ドリームのほうでシリアスな死を迎えた彼はどこに行ってしまったのでしょうか。
巻末に収録された、過去のマーベル作品の名作表紙をリアルでグロテスクで、しかし美麗なパロディに仕上げているのはアーサー・サイダム。本書の裏表紙にもなっている、「スパイダーマンとヒロインのメアリー・ジェーンの結婚」のゾンビ版は本当に酷い。酷すぎてすばらしいとしか言いようがありません。
※「関連ページ」でリンクしたページで、問題のカバーアートを見ることができます。
 
シヴィル・ウォー
シヴィル・ウォー(ちなみにこの『シヴィル・ウォー』も原作はマーク・ミラー。)の記事のときも思ったのですが、アメリカン・コミックの世界は本当に日本のマンガ・カルチャーの発狂ぶりに勝るとも劣らないぶっ壊れ方をしていますね。ある意味では、平野耕太ドリフターズみたいな猟奇・リョナ趣味(この単語がわからない人は決してググッたりしないでください)と同じ方向に進んでいるとも言えるのですが。「言えるのですが」というか、書いていて、これはこれでグローバリゼーションのなかで迎えるべき必定の段階なのかも知れないとも思えてきました。
 
ゾンビの作法
ゾンビの作法
ゾンビのための、ゾンビとして生きていくための指南書。「人間の襲い方」「群れでのふるまい方」「仲間の増やし方」「ゾンビ自殺のやり方」などが紹介されている一冊です。この記事を書くときに「マーベルゾンビーズ」のシリーズを知って驚愕しました。コメント欄でそのときの驚きを綴っているので、興味のある方はどうぞ。
 
闇の国々
先日公開してアクセスを集めた、ペータース+スクイテンの闇の国々共訳者のひとり原正人氏へのインタビュー記事。
本書はフランス語圏のコミックでこれはこれでかなり頭が痛くなる複雑なアートシーンを形成しています。こっちはふざけて爆笑というよりは、かなり理知的な方向性ですね。スタイリッシュです。
 
ゴースト・ワールド
理知的でスタイリッシュといえば、英語圏でもアラン・ムーアのフロム・ヘルやダニエル・クロウズゴースト・ワールドを忘れてはいけません。まあ、『シヴィル・ウォー』や『デス・オブ・ドリームス』も理知的でないかというとそんなことはないんですけども。もはや海外マンガについて語るときの紋切型になりつつありますが、マンガシーンがアツいのは日本だけではない、ということだけは、もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。
 
【関連ページ】

Marvel Zombies Spider-Manブログ/ウェブリブログ

記事中でも触れた美麗でグロテスクなパロディカバーや、作中のページも紹介されています。
「結婚式」は#5ですね。これ、笑うべきなんでしょうけど、美しすぎて切ないんですよね…。
 

Dark | Arthur Suydam

そのパロディカバーアートを手掛けたアーサー・サイダムのオフィシャルサイトより、ダークめの作品を集めたギャラリー。
リアル、美麗、そして馥郁たる危険な香りをお楽しみください。
天野喜孝meetsアルフォンス・ミュシャ×ホラーといった画風がたまりません。
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
当記事をバレンタインデイに公開することに深い意味はありません。
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