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多彩な事例とフレームワークから学ぶ『ゲーミフィケーション』の真髄

「何かを知っている人間はそれを好きだという人間にはかなわない。
何かが好きだという人間はこれを楽しんでやっている人間には決してかなわない」

ゲーミフィケーションの著者・井上明人氏が引用した、2500年前の偉人・孔子の言葉)
 
井上氏は「ゲーミフィケーション」も流行語のひとつに過ぎず、それに踊らされる必要は無い、と断言します。それでもなお”「ゲーム」の力はある、「ゲーム」がこれからの世界にとって重要なものであるということも変わらない。”と力強く宣言。本書はその「世界観」を紹介するもの。「ゲーミフィケーションという言葉が流行らなくとも、私はこの後もずっとゲームの話をし続けるだろう」という筋金入りゲーム研究者による「ゲーミフィケーション」本です。
 
本書の前半となる第1章では、世界に「ゲーミフィケーション」が広まってきた経緯を多彩に紹介し、後半では「ゲーミフィケーションの実践」を扱います。
具体的なゲーミフィケーションの成功例をたくさん知ることができ、自分たちでゲーミフィケーションを実践しようというときに参考にできる構成になっています。
 

 
鉄・病原菌・銃の斬新な歴史観で知られるジャレド・ダイアモンドによる、世界最初の印刷技術を参照しながら、井上氏は現代になって「何かを測る」技術が安価になったことで世の中の様々な物事がゲーム化されるようになったと指摘します。
例えば、道路脇に設置された「スピードカメラ宝くじ」。スピード違反を罰則で取り締まるのではなく、法定速度を守る車に褒賞を与える仕組みです。ストックホルムで実験的に導入され、実際に効果をあげています。
「怒るのではなく褒めろ」「罰する前に褒めろ」という理想が、スピードカメラのような測定技術の廉価化によるコスト構造の変化によって、実際のシステムに反映されるようになってきたのです。
 
国際大学GLOCOMでゲームデザインを研究してきた井上氏ならではのゲーム分析を、ゲーミフィケーションの実践に適用するところは読み応えがあります。たとえば、全プレイヤーに一律でランキングを表示させることが初心者のやる気を削ぐという説。代わりに、上位プレイヤーにだけランキングを表示させるようにすることを提唱します。あるいは、初心者クラス・中級者クラス・上級者クラスとクラス分けをして、そのなかでのランキングをそれぞれのクラスに表示させるなど、説得力がある改善策を提示してくれます。
 
そして、ゲーミフィケーションがあまねく普及し、人々はあらゆる行動が数値化され目の前にいちいちエサを吊り下げられた状態で生きることになるかも知れないという未来像についても言及。人々には「どんなゲームを選ぶのか」という選択肢が遺されるべきだ、というのが井上氏の主張。
 
巻末には、洋書も含めたブックガイドがついています。「仕事に活かすためのもの」が第一に挙がっているのが嬉しい。
 
目次
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まえがき
 
第一章 ゲーミフィケーションとは何か
ソーシャルはゲームへ
ゲーミフィケーションの誕生
ゲーミフィケーション・インパクト ゲームがビジネスを変える
ゲーム環境の拡大 空間、時間、人
 
第二章 ゲーミフィケーションを考える
ゲーミフィケーションの実践のために
ゲーミフィケーションとその論点
多様なゲームの可能な社会へ
 
あとがき
 
謝辞
付録


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【関連ページ】

『ゲーミフィケーション <ゲーム>がビジネスを変える』 新刊ちょい読み – HONZ

成毛眞が主催する「おすすめ本」を紹介するブログに掲載された記事。
記事を書いているのは、当「本が好き!」でもレビュアーとして活躍されているnaichiさん
「ゲーミフィケーションとは「ゲームの要素をゲーム以外のものに使う」ということ。ゲーム以外のことに使うのだから、ゲームの話ではない。僕はそこを大きく見誤っていた。」とのこと。
 

10年後に向けたゲーミフィケーション:井上明人さんインタビュー  | 辺境社会研究室

本書著者の井上氏へのインタビュー。
連載の第一段のネオニートphaさんのインタビューも面白いです。
「天才的なゲーミフィケーション作家がいるとしたら「ここを指標として評価すればゲームになるな」と気付く人」という発言にはなるほどな、と思わされました。
 

ゲームが未来を救う!? – NHK クローズアップ現代

NHKの番組「クローズアップ現代」に、評論家の濱野聡志氏が出演したときのレポート。
 

濱野智史さんのゲーミフィケーションについての論考 – Togetter

上掲の番組に出演したあとの、濱野氏による考察つぶやきをまとめたもの。
 

ソーシャルゲームと従来型ゲームは何が違うのか – 未来私考

「ゲーミフィケーション」を考える際に、前提条件として重要な意味を持つ「ソーシャルゲーム」についての考察記事。参考になります。
 

 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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