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東京堂書店フリーペーパー『三階』最新号、真理についての哲学的メモ

神田神保町の東京堂書店が発行しているフリーペーパー「三階」の最新号が発行された。
批評家の丹生谷貴志氏の新刊〈真理〉への勇気に収められた論考「鏡の魔、或いは砂浜の上の痕跡 en mode sans fin…」と、大友真志氏の写真集『GRACE ISLANDS』(KULA)に関する参考資料という内容。
 

東京堂書店発行のフリーペーパー『三階』vol.4
 

丹生谷氏の著書『〈真理〉への勇気』は、20世紀フランスの著名な哲学者ミシェル・フーコーの講義「真理の勇気」からとられている。「三階」今号は、そのフーコーが注目したスピノザの真理についての議論を紹介。
『〈真理〉への勇気』が、キリスト教の神学における「真理=神」「神が作った世界=真理」「人間が知っている誤りうる理不尽な世界」「人間の身体=肉」という問題についてのフーコーの議論を扱っているのに対し、「三階」では主にスピノザが「真理」をどう定義しどのような神学的議論を展開したかを扱っている。
 
「三階」はそのスピノザの真理についての議論から話題を発展させて、フーコーを批判しながらフーコーの理論を発達させた現代イタリアの哲学者アガンベンの王国と栄光 オイコノミアと統治の神学的系譜学のためにに接続させる。
【読書案内】には、フーコーの講義録主体の解釈学の紹介に併せて、フーコーによるデカルト批判に対するデリダからの批判(デリダエクリチュールと差異 上所収の「コギトと『狂気の歴史』」)および、デリダに対するフーコーの返答(ミシェル・フーコー思考集成〈4〉規範・社会―1971‐1973所収の「私の身体、この髪、この炉」)も紹介。
 
なおアガンベン『王国と栄光』に関する余談として、「三階」の発行人である三浦氏が未読ということだが東浩紀氏の最新刊一般意志2.0が主に扱った「一般意志」という概念について、『王国と栄光』ではフーコーも関心を持っていた概念で、もともとは17世紀の哲学者マルブランシュに由来し、神学的なオイコノミアのパラダイムに属するものだと述べている。
 
東浩紀自身もtwitterで「フーコーの著作で一番好きなのは自己への配慮(性の歴史1)」と述べていることもあり、丹生谷氏の『〈真理〉への勇気』が注目する「肉」の概念と東氏の「動物」概念の近似を検討することは有意義だと思われる。
 
もうひとつの、大友真志氏の写真集を扱った「ノート2」もさすが書店員の文章というべき、なんとしてもこの写真集を手にとって見なければならないという思いに駆られる文章。こちらもフーコーの『主体の解釈学』を参照しながら、情動と気象、そして「地図作成」という営みを論じるもの。
 
【関連ページ】
・本が好き! 僕は友達が少ない
「肉」といえば本書。
 
【関連記事】
吸血鬼と精神分析 – 本が好き! Book ニュース
『〈真理〉への勇気』の「鏡の魔、或いは砂浜の上の痕跡 en mode sans fin…」にも登場する神学上の問題、「神が完全ならば、なぜこの世界に悪があるのか」という問いが、推理小説である本書にも登場し、その解釈が重要な役割を果たします。
なお、本書の登場人物のモデルにもなったジャック・ラカンの思想に対する紋切型の批判としてしばしば使われる「否定神学」という表現があるのですが、これは東浩紀氏がデビュー作存在論的、郵便的―ジャック・デリダについてでデリダを論じるときに活用した概念でもありました。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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