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日本人が音痴になったのには理由がある。音楽雑誌『アルテス』Web連載

出版社の名前を冠した、その名もアルテスという雑誌を創刊し、このご時勢に音楽雑誌を創刊するという硬派な姿勢で音楽ファン(とりわけ音楽も読書も愛するようなファンたち)を嬉しい驚きに沸き立たせたアルテスパブリッシング。文化系のためのヒップホップ入門では、新しい聞き方・語り方を軽快に提起して裾野を広げ、圧倒的な支持を得た。
 

 
その話題の雑誌『アルテス』のWeb連載で、新しく始まった『音痴と日本人』は「幼児は何故ピョンコピョンコした2拍子が好きなのか」という素朴で身近な疑問から、「歴史的認知音楽学研究会」といういかめしい名前の団体が登場して、幼児向けの音楽の背景に日露戦争や鉄道唱歌などの響きを聞き取っていく刺激的な試み。
 
幼児の唄に対する好みに観察されるテンポの分析から、日本VS西洋の「文明の衝突」を跡付け、そしてこの文明の衝突から「音痴は西洋文明の洗礼を受けた日本人が受けた痛み、傷だった」という仮説が導き出されていく。
ちなみに文明の衝突というのは、ハンチントンによる世界的なベストセラーである。『文明の衝突』では、イスラム圏と欧米圏とが衝突する第三次世界大戦を予言するものであったが、これに対して異を唱えたのがフランスの人口歴史学者エマニュエル・トッド。
トッドは「文明の衝突」に対して文明の接近という著作で、現在のイスラム圏は欧米圏=資本主義圏の脅威ではなく、資本主義体制へ向けた緩やかな遷移をみせていると分析し、テロリズムや原理主義は確かに目立ちはするが、大勢は文明の衝突ではなく文明の「接近」に向かっているのだと説く。
 
その際にトッドが依拠するのが、世界の人々の、それぞれの家族制度の違いと、移民の動き、そして識字率。世界中の人々がどのような家族制度を営んでいるのか、それぞれの地域に移民してくる人々が、受け入れ先の人々とどのように融合していくのか、その結果として、どのような識字率分布になるのかを観察し、社会問題や国際問題の分析に活用する。
 
『アルテス』の連載ではこういった社会学的な分析が行われるのか不明だが、明治期に渡米した新島襄が、現地の音楽教師につきまとわれて難儀したエピソードなどを盛り込み読み物として楽しく仕上げている。
 
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アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
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