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【新刊】『日本人が知っておきたい森林の新常識』洋泉社

森メタルという音楽ジャンルを御存知で無い人はいらっしゃらないと思う。森ガールではない。森METALである。
このジャンルを知らないという無学な人に簡単に説明させていただくと、
ロック・ミュージックにおける悪魔崇拝趣味のひとつの行き着く先として森林信仰
(キリスト教の否定、ネオ・ナショナリズム、エコ志向などが合流している)、
いまや世界的な流行の結果各地で異形の進化を遂げているブラックメタルシーン内のある種の揺り戻し、
つまり、「反グローバリズム・反消費主義の現われとして生まれてきたジャンル」こそ森メタルなのだ。
 
森林信仰は遠い北欧だけのものではない。世界中に巨木信仰・山岳信仰が見出され、アニミズムにおける大きなジャンルとして森林信仰を挙げることができるだろう。
そこで今回紹介するのは日本人が知っておきたい森林の新常識洋泉社。10月26日ごろから書店に並ぶ予定とのこと。
日本人が知っておきたい森林の新常識 書影
 
目次が凄い。

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はじめに
 
第一部 「森林の常識」にはウソがいっぱい

1 森は二酸化炭素を吸収しない
2 森に水源涵養機能はなかった
3 原生林の自然は貧弱である
4 火事が育てる森もあった
5 洪水が豊かな自然をつくる
6 生物多様性は破壊がつくった
7 森の主役は樹上と地下にあった
8 縄文杉が長生きできたわけ
9 沙漠に緑はよみがえらない
10 「太古からの森」はなかった
11 人は森を伐りたい本能を持つ?
 
第二部 森の異変は人とともに起きる
1 雑木林は伐らねばならない
2 竹林は伐らねばならない
3 ブナを植えてはならない
4 ホタルは汚い水が好き?
5 日本列島は禿山だらけ
6 マツ枯れとナラ枯れの陰に隠れた異変とは?
7 シカもクマも増えている
8 里山とゴルフ場はそっくりだった
9 熱帯雨林報道に異議あり
10 アマゾンは「里山」だった
 
第三部 林業から見える日本の森
1 山村は木を売らずに生きてきた
2 林業は焼畑から生まれた
3 木を伐って、森をデザインする
4 森林の「少子高齢化」に気をつけろ
5 林業はゼロ・エミッションだ!
6 「安い外材」の嘘にだまされるな
7 「科学」の衣をまとった新月伐採の怪しさ
8 日本に「木の文化」は本当にあるのか?
9 美しき森を、収穫多き森へ
10 「共生」という言葉の裏にあるもの
 
おわりに
おもな参考文献
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おわかりいただけただろうか。
多くの人々が抱いている、森や林、そして木材利用や国土利用についての常識が誤解にまみれていると本書は語る。
地球温暖化や花粉症問題など、最近いよいよ環境問題への関心は高まってきているが、誤った知識に基づく社会運動ほど恐ろしいものはない。
 
同じ洋泉社からエコテロリズムも刊行されていることにも注目して欲しい。
エコテロリズムといえばシーシェパードが有名だが、実は森林伐採に反対するエコテロリズムも大きな勢力を持っている。『Xファイル』でもエコテロリストが登場するエピソードがあった。(エコテロリズムのグループは、毛皮反対、動物実験反対、などいろいろあって興味深いので、『エコテロリズム』未読の方には是非おすすめしたい)
観念主義哲学と言われるカントを読み直すことを専門とする著者が、アメリカの思想史の極限的な現われとしてエコテロリズムを扱っている。
 
本書『日本人が知っておきたい森林の新常識』はテロリズムこそ扱ってはいないだろうけれども、目次にも見られるとおり「日本文化」に触れている。
たとえば原子力発電所が高度成長期の日本の輝かしい未来というイメージの希求と結びついていたように、速水健朗著『ラーメンと愛国』で分析されるようにラーメンが愛国と結びつくように、気がつけば意外な産業が意外な思想と深く結びつく。
森林の新常識を知ることは、世間に流布されている通説に含まれる「森林」に関する思想を刷新することにほかならない。
そこから新しい世界の見え方を得ることができるだろう。
冒頭に挙げた森メタルの話はけっして冗談ではない(冗談のヴェールを被ることで、話題にしやすくなったり、商品やイメージとして流通しやすくなる、流通しやすくする、という意図はあちこちに見て取れるけれど)。
新しい森林観から森メタルを見るとき、どのような響きを聞き取ることができるのだろうか。
 
【関連リンク】
『日本人が知っておきたい森林の新常識』 公式HP
書籍本文1章分が公開されています。
 
新刊『日本人が知っておきたい森林の新常識』: 森林ジャーナリストの「思いつき」ブログ
本書の著者で森林ジャーナリストの田中淳夫氏のブログでの紹介。
 
日本近代林政年表 増補版 1867-2009日本林業調査会 – 本が好き! Book ニュース
20世紀環境史名古屋大学出版会 – 本が好き! Book ニュース
最新版 世界の資源地図青春出版社 – 本が好き! Book ニュース
森林破壊の歴史明石書店 – 本が好き! Book ニュース
風が変えた世界史: モンスーン・偏西風・砂漠原書房 – 本が好き! Book ニュース
樹海の民 舟・熊・鮭と生存のミニマム法政大学出版局 – 本が好き! Book ニュース
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
最近は映画『モテキ』にメルツバウが出てこなかったことが気に障りました。
秋田昌美の本の装丁をしていた宇川直宏は一瞬出てきてたのに!
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