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【新刊】『私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔』慧文社

源氏名って、元々は公家の世界で使われていたものだったということは知っていましたか?
かの有名な「源氏物語」にちなんで呼び名をつけたのが始まりで、最初は公家に使える女官に使われていたものが武士社会の大奥などでも使われるようになったそうです。それを遊郭などが真似たのが、現代の「源氏名」の使われ方の由来のようです。
僕もこのことを知ったのは最近です。
松本清張の遺作のひとつ神々の乱心に登場する女性がこの源氏名を持っているのですが、その人は同時に宮内庁の女官という設定。
現代の「源氏名」の使われ方しか知らなかったので驚いて調べてみたら上記のことがわかったという次第です。
 
この『神々の乱心』、当時の新興宗教の暗躍と、大正時代の有名な疑獄「大連アヘン事件」の影響を骨子にしています。
大連アヘン事件は、アヘン戦争でも知られる当時の中国に蔓延していた麻薬の取引に関する疑獄。この疑獄で、20世紀初頭の日本屈指の政治家と言われた原敬内閣が揺らいだと言われています。
今回ご紹介するのは、この大連アヘン事件で失脚した祖父を持つ著者が「渾身の筆を執る生身の伝記(出版社サイトより)」。
私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔慧文社
私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔 書影
 
大審院検事・判事、法典調査会刑法起草委員として刑法学の第一人者となり、また貴族院勅選議員・植民地の統治監督、南満州鉄道・東洋拓殖の業務監督として「平民宰相」原敬の腹心として活躍した古賀廉造氏。
この古賀廉造氏は大連阿片事件の責任を負って失脚した一人で、著者は本書でその経緯をあらためて追う。
古賀氏と親交のあった陸軍大将の日記などの貴重な一次史料を調査、さらに自らの実体験や古賀一族の伝承をも交え、古賀氏の業績と生身の人物像を浮き彫りにした1冊です。
 
目次
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写真
まえがき
年表・系図
第一章 生い立ち
出自と両親
 古賀家の来歴と父・源吾
 母・チカと石田家
幼少期
 松永家との関係
 古川家と乳兄弟武一
佐賀の乱
上京、法学校入学
第二章 法曹界および政界での足跡
司法官としての経歴
 フランス・ドイツ留学
 刑法改正審査委員会
 大審院判事
刑法学者としての経歴
 著述と講義録
 厳罰主義を旨とする法思想
第一次西園寺内閣の警保局長
 内務大臣原敬との親交
 警保局長としての業績
 第一次警保局長の免官後
 社会主義活動家との関わり
第三章 広東紙幣偽造事件
事件の経緯
 事件の発覚と判決
審理の争点と事件の評価
事件の背景と関連人物
 大アジア主義と梅屋庄吉
 宇都宮太郎
事件の後
第四章 大連アヘン事件
当時の植民地政策とアヘン専売制
拓殖局長官就任の背景
事件の詳細
 事件発生の経緯
 大連取引所背任問題
 「複雑怪奇」な事件の審理
 判決
事件の真相
 背任罪は認められず
 事件に関する原敬および政友会との関係
 朝鮮軍司令官宇都宮太郎と三・一独立運動
 三井物産の関与と長男邦夫
 廉造の政治家としての資質
 現代での世評
結び
第五章 弁天町の家と古賀家の人々
屋敷の普請
古賀家の人々
 廉造の妻・美刀
 妹・宮内ツル
 長男・邦夫
 邦夫の妻・興代
 次男(父)・隆夫
 隆夫の妻(母)・鶴(資子)
 三男・郁夫
 長女・サヨ、次女・千穂
 三女・喜久
 四女・須磨、四男・陶夫
 その他の同居人達
第六章 御宿の別荘での晩年
祖父の思い出
 御偉いお祖父様、お祖母様
御宿の家の来歴
 不毛の砂丘に大普請
 大きくなって還ってきた家
晩年の社会活動
 御宿の最高の名士
 用心棒・江口氏
 日中戦争時の国家改革を提言
最晩年
 
付録 史料編
史料1 法学志林 第三九号 八十「経歴談」
史料2 感化院の目的及其事業 古賀廉造君講演
史料3 現職時代の世評および小著述
史料4 警保局長の椅子
史料5 外国紙幣偽造事件ノ古賀ニ関スル事実ノ真相
史料6 広東紙幣偽造事件関連記事
史料7 奇物凡物―古賀廉造
史料8 宇都宮太郎宛古賀廉造書翰
史料9 夫人花くらべ(五の一)
史料10 真崎甚三郎宛古賀廉造書翰
 
参考文献一覧
あとがき
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【関連リンク】
『松本清張研究』第十一号 特集 『神々の乱心』の背景  ―― 未完の遺作を解読する
松本清張記念館研究誌-コンクール・研究など 事業のご案内-松本清張記念館公式ウェブサイト
 
原 武史氏×福田和也氏×藤井康栄氏による特別対談「二大聖域 -宗教と宮中- に迫る渾身の遺作を読む」を収録。
松岡正剛氏、森光一氏も寄稿しています。
 
華族画報 吉川弘文館 – 本が好き! Book ニュース
「大東亜共栄圏」経済史研究 名古屋大学出版会 – 本が好き! Book ニュース
帝国崩壊とひとの再移動 (アジア遊学 145) 勉誠出版 – 本が好き! Book ニュース
植民地建築紀行: 満洲・朝鮮・台湾を歩く (歴史文化ライブラリー) 吉川弘文館 – 本が好き! Book ニュース
 
本が好き! 松本清張の「遺言」―『神々の乱心』を読み解く
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々とし、現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、紹介させていただきたいので是非BOOKニュース宛に新刊を送ってください!
twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。

コメント

  1. 当社の書籍を掲載頂きまして心より感謝申し上げます。
    古賀廉造はこれまであまり書籍として採り上げられてこなかった人物で、部分的に採り上げられても、伝聞の域をでない記事が多かったのです。
    本書の著者は古賀廉造の実孫で、著者しか知り得ない廉造の個人的な思い出や本邦初公開の写真も多数掲載されております。
    大正デモクラシーに新たな光を当てる面白い本になったと自負致しております。

    P.S 当社は慧文社で、「恵」という字ではなく、「慧」という字を書きます。ヨミは「けいぶんしゃ」で同じですが・・。

    • コメントありがとうございます。
      古賀氏のことも大連アヘン事件のこともほとんど知らなかったので、本書のおかげで勉強になりました。
      貴社名の誤記、誠に申し訳ありませんでした。修正いたしました。
      大変失礼いたしました。

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