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【新刊】『ドリフターズ2』少年画報社

「当たり前のサラリーマンみたいなこと書いてんじゃねえよ」と編集長に言われました。「当たり障りのないことばかり書いてたってしょうがないんだよ」と。
大々的にお許しをいただいたということなので、自らに課した戒めを解き放って、本来の性分を顕かにしてみたいと思います。というわけで本書の紹介です。
 
少年画報社は、10月に平野耕太ドリフターズ2を発売した。
本作は、織田信長や安倍晴明たちといった歴史上の死者たちがエルフなどのいる異世界に転生して戦うという作品。
 
ドリフターズ2 書影
 
「悪」に対する平野氏独特の見解が展開されているところに注目してください。
「異なる悪の美学が戦う」という設定で描かれたヘルシングでは、確かに構図やセリフが素晴らしかったものの、そこかしこに平野氏の優しさが見え隠れし、露悪趣味に徹し切らない潔さの不足があったことは否めません。
他方、本作では「悪の描き分け」をしている点が新しくワクワクさせられます。
 
主人公たち(島津豊久、織田信長、那須与一)が戦争の中毒者で嬉々として敵を殺す様を描きながら、異世界の圧政者やその他の敵たちにはより一層のおぞましさを与えて描いていることで、
・敵であれば嬉々として殺人を犯す(サムライたち)
・異民族に圧政を敷く(異世界の人間たち)
・人類皆殺しを目指す(「黒王」と呼ばれる者を首魁に抱く謎の大勢力)

(2巻でも既に他の勢力が現れつつあり、収集がつかなくなりそうなのですが、とりあえず大きなところでは上記3つでしょう)
といった現代日本の常識からすると一絡げに「悪」にまとめられてしまうスタンスを持つ集団が三つ巴になり入り乱れて戦うという展開を描いています。
 
「黒王」(たぶん人類に絶望して魔神化したキリスト)と戦国のいち武将にすぎない主人公たちがどのように戦うのか、ということよりも、この壮大に入り組んだ世界観のなかで平野氏がどのような露悪をぶちかましてくれるのかが今後の楽しみです。
なお、今回は(以下ネタバレ)「首を斬った敵兵の身体を埋めて火薬を作る」「矢尻に糞尿を擦り付けて毒矢にする」というグロテスクな表現が出てきますので、そういった表現に免疫のない方はご注意ください。
 
【関連リンク】
シビル・ウォーヴィレッジ・ブックス – 本が好き! Book ニュース
こちらは複数の「正義」が戦う話。オールスター戦という点でも共通していると言えるでしょう。
 
崇高とは何か 〈新装版〉法政大学出版局 – 本が好き! Book ニュース
露悪趣味、残酷趣味、悪の追究といった問題は、崇高論と重なるといって言い過ぎではありません。
特に平野作品の場合は、圧倒的な力や徹底的な絶望の描写による畏怖の感情が重要なので、崇高論の重要文献である本書との併せ読みはオススメです。
 
・本が好き! 石川雅之『純潔のマリア(2)
もやしもんの作者による中世を舞台にした物語。もともと歴史モノを描いてきた石川氏だけに、こっちもけっこうちからが入っています。
風の谷のナウシカばりの孤軍奮闘ぶり・献身ぶりで中世世界の戦争を必死に食い止めようとする魔女マリアの姿は必見。
「なぜ戦争がいけないのか」という問題に対しては『ドリフターズ』と正反対の方向から取り組んでいる作品だと思います。

 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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