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『シビル・ウォー』ヴィレッジ・ブックス

ヴィレッジ・ブックス(http://www.villagebooks.co.jp/)は、9月にシビル・ウォーを発売した。
『スパイダーマン』『アイアンマン』『X-メン』『キャプテン・アメリカ』などの作品を持つマーヴェルが展開した史上最大規模のクロスオーバー作品の邦訳。
本作によってマーヴェル社のスーパーヒーローたちは架空の法律「超人登録法」の監視下におかれることとなった。アメコミの新局面の到来を示す画期的な作品。
 
シビル・ウォー 書影
 
先日刊行されたメタフィジカル・クラブ――米国100年の精神史によれば、現代のアメリカの哲学や政治思想の根源となるプラグマティズムは、「南北戦争(アメリカでは「シビル・ウォー」と呼ばれます)」への反省から生まれたと言われています。そのシビル・ウォーをタイトルに冠したのが本書。
第二次世界大戦の英雄として創造されたキャプテン・アメリカ、ベトナム戦争中の軍需産業の申し子として生まれたアイアンマン、この両雄を筆頭に、「国家の管理下に入って悪と戦うか/あくまで素顔を隠しながら自警団的に戦うか」という、ヒーローにとっては究極ともいえる選択を迫られることにより、正義を体現し、ともに巨悪と戦ってきたはずの約100名にのぼるスーパーヒーローたちが互いに否定しあう内戦状態に陥ります。
 
素顔を晒すかどうかというのは、プロレスや魔法少女もの、日本のウルトラマンや仮面ライダーでもここぞというときに問われる重大問題。
しかし本作の白眉は、単にヒーローが苦悩するというところではありません(もはや苦悩するヒーローを描くことじたい紋切り型のひとつになってきています)。
本書の見所は、ヒーロー達が二分して戦わざるを得ないというところ。
 
ジャンル批判的な側面を高く評価されたウォッチメンも、本作と同様の法律の施行をストーリーの重要な前提にしていましたが、本作は「その法律が現代に制定されたならばヒーロー達がどう振舞うか」ということを描いた作品だといえるでしょう。
『Mr.インクレディブル』なども同様のメタヒーロー、ポストヒーロー的な設定を導入していますが、本作はこれらの総決算であり、かつさらなる発展形だと思います。
アメコミ界最大手のひとつであるマーヴェル社のほぼすべてのエピソードで、今後この法律を前提に物語が作られていくことを考えると、とんでもない時代になったなあという感慨を拭い切れません。
 
しいてこの現象を日本の漫画界に無理やり当てはめて例えるなら、小学館と集英社の刊行するすべての漫画誌に登場するキャラクターたちが、ひとつの政府の元に正義を執行する集団として団結するか、あるいは各自それぞれの秘密を保ちながら従来の活動を続けるか、その決断を迫られ、かつそれ以降のすべての作品でそのルールが生き続けるという状況だと想像してもらうとわかりやすいかも知れません。
 
映画化も素晴らしかったキック・アスのマーク・ミラーが原作を担当。
上掲の表紙画像でも多少は感じて貰えると思いますが、絵の描き込みの重厚さも特筆に値します。
宗教画か歴史画かという緊張感に満ちた画面がフルカラー200ページで展開され、まさに圧倒されます。
 
【関連リンク】

特別企画 : アメリカン・コミックスの歴史 第1回 【ゴールデン・エイジ】 | 瞬きて、視覚

とても参考になる良い記事。きわめて簡潔にまとめられているので、アメリカンコミックスに興味あるけどまだよく知らないという人から、それなりにアメコミ読んでるけど歴史をおさらいしようかな、という人にまでオススメです。
 
シビルウォー : オタクを辞めようかと思います。
「私はこの作品は「TIGER & BUNNY」のファンの人ならば色々と考えるところがあるのではないかと思っています。」と語るかたのブログでの書評。
また、「「アメコミは勧善懲悪で能天気」。そう思っている人こそ、これらを読むとなかなか面白いんじゃないかと思います。」という締めが渋いです。
 
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刊行が楽しみです。
 
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