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「日本語を使う人が選ぶSFとファンタジー」のランキングをtwitterで呼びかけてみました

[Text by 本が好き!Bookニュース編集部 ナガタ]
 
去る9月1日に、日本人の作家に限らない「SFとファンタジーの人気ランキングを作れないか」とふと思い立ち、「#日本語使いが選ぶSFとファンタジーランキング」というハッシュタグを使って呟いてみたところ、100tweet以上の反応をいただくことができました。
(結果をTogetterでまとめたら1000view以上になりました)
 
さてランキングの結果は以下のとおり。
TLでも予想されていましたが、集計たいへんでした。
 
まずは第4位から。
得票数が同じだったので同率4位が4作品です。
 
伊藤計劃『ハーモニー
ハーモニー 書影
個人的な趣味でいえば、Jコレクション版の美しい表紙は断固譲れません。
フィリップ・K・ディック賞特別賞も受賞した、伊藤氏の遺作です。
北欧神話からとられた耳慣れない名前の少女たちが繰り広げる、切ないディストピア物語。
闘病中の作者が、医療万能の管理社会に警鐘と皮肉を鳴らすという両義的な背景を考慮すると物語の切なさが胸に重く響いてきます。
 
 
徳弘正也『狂四郎2030
狂四郎2030 書影
まさかランクインするとは思っていませんでした。
ジャングルの王者ターちゃんシリーズを週刊少年ジャンプに連載していた徳弘正也氏による長編漫画。
受賞歴なし、メディアミックス展開なしなのに4位ランクインは快挙だと思います。いちファンとしてとても嬉しいです。
映画『ガタカ』『アイランド』『トゥモローワールド』のような遺伝と社会不安を描きながらも、『ターちゃん』を髣髴とさせるナンセンス下ネタギャグも笑える、という異常な作品。
センス・オブ・ジェンダー賞特別賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、小学館漫画賞など錚々たる受賞歴をもつ、よしながふみ大奥と併読してみてはいかがでしょうか。
 
 
永野護『ファイブスター物語
ファイブスター物語 書影
これは言わずと知れた名作。
壮大すぎて敬遠されることもあるようですが、自信を持ってオススメします。
物語は複雑を極め、それだけに読み応えたっぷり。
Zガンダムなどのデザインにも関わった永野護氏による美意識が炸裂した作品で、表紙を眺めるだけでも楽しめます。
 
 
 ・C・S・ルイス『ナルニア国物語
ナルニア国ものがたり 書影
アメリカの公共ラジオ局が行ったSFとファンタジーの人気作品ランキングTop 100では1位になっていたトールキン『指輪物語』でもなく、100位にランクインしていた同著者による『別世界物語』でもなく、日本ではこちらの『ナルニア国』のほうが人気があるようです。
いわば純然たるファンタジーの古典として、本作が一番人気があるということはじっくり考えてみたい現象だと思いました。
 
 
第3位伊藤計劃『虐殺器官
虐殺器官 書影
この『虐殺器官』と4位の『ハーモニー』が、この寡作な作家の長編作品のすべてです。
彼がもっと長生きしていたならば、ランキングの結果はどうなっていたのでしょうか。
僕も何度読み返したかわからない傑作です。
メディアミックスされることの多い昨今のSF・ファンタジー業界で、これだけ注目されていながら漫画化も映画化もされていない、小説ならではの表現がされているのが興味深いです。
『ハーモニー』のほうは映画化されるという噂を耳にしたことがありますが、それはそれで楽しみですね。
 
 
そして第2位磯光雄『電脳コイル
電脳コイル 書影
こちらはアニメ・小説・マンガと積極的にメディアミックスが展開され、投票してくれた人のすべてがメディアミックスの全体を評価しているのかわからないのですが、それでもこのインパクトのある題名と一貫した世界観が支持された堂々の2位だと言えるでしょう。
「原画」というアニメ業界ならでは職業で一部の熱狂的な注目を集めたという出自を持ちながら、独特の世界観を表現する磯光雄氏。
その磯光雄氏のマルチな才能をいわば世に知らしめたのが本作だと言えると思います。
本作で、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞、東京アニメアワードTVアニメ部門優秀賞、星雲賞メディア部門、日本SF大賞を受賞しています。
 
 
そして気になる第1位は!!
既に予想できてしまってるかもしれませんが、攻殻機動隊です。
攻殻機動隊 書影
ただし、しかし、これを1位にしていいものかだいぶ悩みました。
というのも、『攻殻機動隊』は、これをひとつの「作品」と呼んでいいのか、そして仮にこれをひとつの「作品」と呼んでもいいとしたら、その作者は誰なのか、さらに、どこからどこまでをひとつひとつの「作品」と呼んでいいのか、非常に難しいものだからです。
これは主人公も敵対する勢力も仮想的で流動的だという点で、非常に「攻殻機動隊」的な問題だと言えるのかも知れません。
『攻殻機動隊』は士郎正宗氏の漫画作品なのか、押井守氏の映像作品なのか、神山健治氏の映像作品なのか。
しかも『攻殻機動隊』のファンを自称する人たちのなかにも、士郎正宗作品しか認めない派、押井守作品しか認めない派、神山健治作品しか知らない派、それぞれの作品のなかでも特定の作品は認めない派、など、様々に好みが分かれ、ときに激しく対立していたりするので、ひと括りにしていることにじゃっかんの後ろめたさすら覚えています。
とはいえ、関連作品が膨大に生産され、海外での認知度もとりわけ高いと思われる本作。
集計の仕方に困りましたが、全体としての得票数はダントツだったので思い切って1位としました。
 
『攻殻機動隊』が1位になるということは、呼び掛けて集計した僕が言うのもナニなのですが、この「日本語使いによるSF・ファンタジー作品のランキング」という企画の、ある種の性質を表しているようにも思われました。
それは、twitterでハッシュタグで呼びかけて集計した・日本人という国籍にとらわれない・SFとファンタジーのどちらの作品でもよいという漠然とした括りしかない・小説でも漫画でも映画でもゲームでもいい・ただ「日本語」という言葉を話せる人が選ぶランキングだ、という掴み所の無い性質(「無理のあるハッシュタグwww」とTLでツッコミをいただいたりもしました!)が表れたということなのかも知れません。
 
 
 
ということで、ここまではカウントダウン形式で作品を紹介してきました。
他の上位作品も含めて普通のランキング形式で概観すると下記のようになります。
本当は挙げていただいたすべての作品を紹介したかったのですが、5位以下で2票以上の得票があったものまでを「ランク外」として列挙しています。
順不同です。
 
1位:攻殻機動隊
2位:磯光雄『電脳コイル
3位:伊藤計劃『虐殺器官
4位:伊藤計劃『ハーモニー
4位:徳弘正也『狂四郎2030
4位:永野護『ファイブスター物語
4位:C・S・ルイス『ナルニア国物語
 
ランク外:エヴァンゲリオン』シリーズ
ランク外:大友克洋『AKIRA
ランク外:舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼
ランク外:パプリカ
ランク外:アンドロイドは電気羊の夢を見るかもしくは『ブレードランナー』
ランク外:ソラリス
ランク外:A・ベスター『虎よ、虎よ!
ランク外:M・エンデ『はてしない物語
ランク外:山田正紀『神狩り
ランク外:渋澤龍彦『高丘親王航海記
ランク外:J・R・R・トールキン『指輪物語
ランク外:宮崎駿『風の谷のナウシカ
ランク外:serial experiments lain
ランク外:フリクリ
ランク外:G・マクドナルド『リリス
ランク外:D・エヴィングス『ベルガリアード物語
ランク外:東浩紀『クォンタム・ファミリーズ
ランク外:神林長平『戦闘妖精・雪風
ランク外:藤子不二雄『ドラえもん
※メディアミックスにより、特定の個人を作者としにくい作品は、じゃっかん恣意的な名称になっています。

 
1票だけの推薦作品にも興味深いものがたくさんあり、とても勉強になりました。
ここで紹介できないのが残念でなりません。
 

 
今回は突発的な思い付きでの呼びかけでしたが、次回以降は当「BOOKニュース」の本体サービスである「本が好き!」のレビュアーの皆さんにも参加していただいて、もっと大々的にランキングを作成したいと思っております。
企画が固まり次第、あらためて告知いたします。
今回ご参加くださった皆様も次回以降も、あらためて奮ってご参加いただければ幸いです。
 
【関連リンク】
アメリカの公共ラジオ局が、SFとファンタジーの人気作品ランキングTop 100を発表 – 本が好き! Book ニュース
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々とし、現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、紹介させていただきたいので是非BOOKニュース宛に新刊を送ってください!
twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。

コメント

  1. とても興味深い記事でした。特に1位の作品についての考察が。私もこれはtwitterでという限定された中での集計結果だと思います。

  2. コメントありがとうございます。お返事遅くなり申し訳ありません。
    1位の「作品」はとても興味深い結果でしたので思わず長文を書いてしまいました。
    今後も引き続きランキングをやってみようと思っておりますので、そのときは是非またご参加ください。

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