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第1回ジャニーズ研究部「ディスコ文化として見るジャニーズ〜極東★でぃすこてぃっく、情熱熱風☆せれなーで〜」に行ってきました

[Text by 本が好き!Bookニュース編集部 ナガタ]
 
7月11日に荻窪ベルベットサンで行われた第1回ジャニーズ研究部「ディスコ文化として見るジャニーズ〜極東★でぃすこてぃっく、情熱熱風☆せれなーで〜」に行ってきました。
 
評論家・音楽家の大谷能生氏、タイアップの歌謡史自分探しが止まらない思想地図βの特集を監修したことでも知られる編集者・ライターの速水健朗氏、ライター・DJ・漫画家・イラストレーターとして活躍している矢野利裕氏という3人のトークイベントです。
 
ケータイ小説的。 書影
速水健朗氏の著書ケータイ小説的。―”再ヤンキー化”時代の少女たち
 
菊地成孔氏とコンビを組んで現代音楽から前衛ジャズまで語りつくす評論家・音楽家の大谷能生氏も、
「トークのテーマにあわせて『ディスコっぽい曲を適当に探すかー』みたいなノリになるかと思ったら、今回のためにジャニーズのシングル全部をじっくり聞きなおすことになってしまった。どれも良すぎてないがしろにできなかった。SMAPにいたっては、アレンジも演奏も歌詞も、緊張感がいちいち高すぎて、聞きながら毎回泣いてしまった」と語っていました。
 
社会史的な視野で全体の流れをリードする速水氏、冷徹な印象すら与える分析と熱い勢いのある音楽批評をかます大谷氏、DJとしてコメントをする矢野氏によってトークはどんどん進み、あっという間にイベント終了。
 
トークは、
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もともとゲイたちのアンダーグラウンドな文化として発祥したディスコがアメリカで売れるようになり、「誰でも踊れる」四つ打ちという方法論が確立したという背景があった

「何を言ってるかわからなくても踊れればそれでいい」という理由から、英語圏以外の音楽が世界的に売れるような事態が発生するようになる(最近だと日本で『マイヤヒ』やt.a.t.u.が売れたような現象)

しかし日本では独自のディスコ理解が発展した(日本で確実に売れるように焦点を絞ったプロデュースがされた)

ジャニーズ系はディスコから「夜」っぽさとアンダーグラウンドさを抜き去り独特の世界観を構築するに至った!
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という流れで、ジャニーズ系のディスコ性を分析・紹介していました。
 
ハイライトは近藤真彦のギンギラギンにさりげなくを大谷氏が歌っていたところでしょうか。
 
また各楽曲については、以下のような楽しい指摘がありました。
・少年隊デカメロン伝説の「ワカチコ!」って言ってるのはサンプリング感覚
仮面舞踏会はBPMが遅めにしてダンスをしやすくしている(大谷氏「ビックビートだ!」という名言もあり)
・ディスコはキラキラな衣装でドレスアップするが、ハウス以降はドレスダウンしていく(「SMAPは仮面舞踏会してくれない」)
・Kinki KidsのBack Fireを例に挙げ、「元ネタと言われる名曲と聞き比べても遜色がないほど作りこまれている」と評価
「ワカチコギターはPrefuse 73的ですよね」という話題が出なくて残念(冗談です)。
大谷氏によれば「Pro Tools(などに代表されるデジタルオーディオワークステーション)登場以降の制作側の環境の変化がその背景に見てとれる」とのこと。
デジタル処理による垂直方向の分割と、1960年代から始まった例えばリズムトラックとウワモノのような多重録音技術による水平方向の分割―音を層状に分化すること―とによって、「音をどんどん分解し緻密に再構築していく」という音楽史的な現象がジャニーズ系にも起きているという指摘。
V6のGuiltyが、そのデジタルな再構築の例として紹介されていました。
 
印象に残ったのは、ジャニーズ系の楽曲の素晴らしさにあらためて驚いたと登壇者の方々が口を揃えていたこと。
ジャニー喜多川氏の思想としてはミュージカルのような現場主義の総合芸術の完成が目指されているため、楽曲というのはその「現場」への入り口に過ぎない位置づけに過ぎないはずなのに、「・・・恐るべしジャニー喜多川」という呟きが再三にわたり壇上から聞こえてきました。
 
アレンジ、演奏、歌詞などの点で、ジャニーズ系の楽曲が良いという評価は音楽好きのあいだでは既に定説。
でもこうして比較的大きな音で実例を鑑賞しつつ、社会史的な背景や音楽史的な位置づけを確認させてもらえる機会はなかなかなかったので、とても堪能できるイベントでした。
 
なお、「ジャニーズ研究部」の公式サイトは準備中とのこと。
今後「第2回 ジャニーズとアメリカ」「第3回 ジャニーズとコンテンツビジネス」「第4回 ジャニーズと歌謡曲」「第5回 ジャニーズとミュージカル」と続く予定だそうです。

【関連リンク】
ディスコ文化として見るジャニーズ: NCK ADDICTION
(コメント欄に熱いレポートが投稿されています)
Togetter – 「イベント『ディスコ文化として見るジャニーズ』関連」
夜のプロトコルBLOG: イベント「黒人音楽として見るジャニーズ、及びK-POP」
(今回の企画の前身)
『クレズマーの文化史 : 東欧からアメリカに渡ったユダヤの音楽』人文書院 – 本が好き! Book ニュース
『レヴィ=ストロース 夜と音楽』みすず書房 – 本が好き! Book ニュース
音楽学者ユニット「公魚」による企画「日本のゲソオソ2000-2011」で片山杜秀氏・沼野雄司氏・松本祐一氏のトーク – 本が好き! Book ニュース
『日本の作曲2000-2009』アルテスパブリッシング – 本が好き! Book ニュース
『ラテン音楽名曲名演ベスト111』アルテスパブリッシング – 本が好き! Book ニュース
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