読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

【新刊】『僕の妹は漢字が読める』(ホビージャパン)-ラノベの最先端?!

ホビージャパン(http://www.hobbyjapan.co.jp/)のライトノベルレーベル「HJ文庫」が7月1日に発売する僕の妹は漢字が読めるが、ネット上で話題を読んでいる。

本書は、第5回ノベルジャパン大賞で銀賞を受賞した作品。
漢字が衰退した未来が舞台というSF設定で、ひらがなと記号だけの極端な萌え系ライトノベルが「正統派文学」とされ、漢字を使用した文学は作中では「近代文学」と呼ばれる。
公式サイトで試し読み(http://www.hobbyjapan.co.jp/hjbunko/kanji/)が可能。
遺跡として魔法少女の像が発掘されるなど、現代の文化を相対化しているところが注目を集めているようだ。

僕の妹は漢字が読める 書影

★「本が好き!」編集部ナガタのコメント★
「携帯小説は、近代文学のなかでは入りやすいほうよ」というセリフにグッときました。
日本語がこれからどうなっていくのかを問うというのは、水村美苗氏の日本語が亡びるとき 英語の世紀の中でなどで話題になったのはまだ記憶に新しいところ。
それがまさかラノベの題材になるとは……。
「試し読み」を読む限りでは未来の文豪の文章はたいへんなことになっていました。
ある意味で映画『26世紀青年(原題はIdiocracy)』のような世界なのかも知れません。

ちなみに、「日本語が世界の言語の中でもっとも習得が難しい言語である」という説を僕は支持しませんが、漢字・カタカナ・平仮名・アルファベットを縦横無尽に組み合わせて読み書きしている言語というのは日本語くらいなのではないかと思っています。
このような複数の文字体系を駆使することで、中国や欧米からの外来の思想をいつまでも保留し温存していく日本の独特の思想が育ったのだというのは批評家・柄谷行人氏の日本精神分析
異なる思想体系を対決させることなく延々と保留させていくという日本語による思想は、つまりは現在もよく目にする、止め処なく論点のかみ合わない議論であり、議論が噛み合わないために政治でも非常に場当たり的な決定が下されていくのだと読むことができます。
『僕の妹は漢字が読める』に登場する未来の文豪の文章は、現在の読者にとってはバカバカしいものに見えるかもしれません。
しかし少なくとも漢字が衰退し、平仮名による思想が発達することによって、日本の政治は意外にも一貫性を獲得していく可能性がありえる、と言えるのではないでしょうか。
ちなみに近代文学の文豪で「小説の神様」として知られる志賀直哉氏は、日本語を廃止してフランス語を公用語にしようとしていたそうです。
これは戦後、日本語をすべてローマ字にしようとしていた所謂「国語国字問題」の影響ではないかと言われています。
なお、お隣の韓国では1970年代から国策として漢字廃止が進んでいて、ほとんど漢字が使われなくなっています。

『僕の妹は漢字が読める』は、田中ロミオ氏の人類は衰退しましたの、前段階という認識でいいんでしょうか。
あの未来も、どう読むか悩ましいところなのですが。
ともあれ、刊行が待たれます。

【関連リンク】
・本が好き! 僕の妹は漢字が読める2
続編が刊行されました。
 
ラノベのタイトルがこんなに短い筈がない。『人生』 - 本が好き! Book ニュース
『IDEA No.348 : 漫画・アニメ・ライトノベルのデザイン EXTRA -』誠文堂新光社 – 本が好き! Book ニュース
国書刊行会『日本人の言語観とその未来』 - – 本が好き! Book ニュース
『坂部恵―精神史の水脈を汲む(別冊水声通信)』水声社 - – 本が好き! Book ニュース
玉川大学出版部『福田恆存対談・座談集 第一巻 新しき文学への道』 - – 本が好き! Book ニュース
『ユニコード戦記 ─文字符号の国際標準化バトル』 -東京電機大学出版局 – 本が好き! Book ニュース
 
・本が好き! 図説 アジア文字入門 (ふくろうの本/世界の文化)
・本が好き! 図説 世界の文字とことば (ふくろうの本/世界の文化)
・本が好き! 田中ロミオ『人類は衰退しました』
・本が好き! 『「漢字廃止」で韓国に何が起きたか』
 
ラノベ『僕の妹は漢字が読める』がマジキチ これがラノベの最先端だ! – ゴールデンタイムズ

コメント

コメントの投稿

コメント(必須)