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現代思潮新社、鈴木創士氏のコラム「第15回 『ナジャ』のように?」追加

現代思潮新社ウェブサイト(http://www.gendaishicho.co.jp/)内で連載されている作家・鈴木創士氏のコラムに、新記事「『ナジャ』のように?」が追加された。


「『ナジャ』のように?」http://www.gendaishicho.co.jp/news/n2406.html

★「本が好き!」編集部ナガタのコメント★
シュルレアリスムという非常に重大な問題について、その創始者であり主導者であったアンドレ・ブルトンという人と、その彼が残した書物は、無視したくてもなかなか簡単には無視できません。
自身、シュルレアリスムを踏まえた困難な問題系のなかで言葉を紡いでいる鈴木創士氏がとうとう本丸とも言うべきブルトンに切り込んだ、というのが今回の印象です。
ブルトンの代表的な「小説」である『ナジャ』を取り上げ、相変わらず斬新な切り口を提示し読者を驚かせながら、言葉とイメージのめくるめく迷路へと誘ってくれます。


ナジャ 書影


「ブルトンの書いたものには『里程標』という言葉がよく出てくる」と鈴木氏はまず指摘します。
やられた!と思いました。
素人なりにシュルレアリスムに関心を持ってきたつもりでしたが、そこは今までまったく気付いていませんでした。
シュルレアリスム運動とその運動が生み出してきた膨大な作品群のことを思うとき、この単純な指摘がどれくらいの根本的な意義を持つのかを考えると、これだけでノックアウトされてしまうほど鋭い指摘です。
鈴木氏はこのブルトンにおける「里程標」を、入り組んだ路地からなるパリの迷路的な地理を引き合いに出しながら語り始めます。
まったく言及されていないのですが、現代社会のライフスタイルや思想を批判したシチュアシオニストが描いたメンタルマップのことも、鈴木氏は意識しているに違いありません(シチュアシオニストのことは、鈴木氏のコラムで以前にも触れられていました)。
一本道でありながら、特定の目的地に辿り着くとは限らない路地。そこに沸き起こる砂塵、敷き詰められた石畳とそれを怒りを込めて投げつけた反社会運動にも軽く言及しながら、鈴木氏はようやく『ナジャ』の話を始めます。


『ナジャ』の訳者が言うとおり、僕もこの作品を恋愛小説だと思っていました。
鈴木氏は「今にして思えばそうでもないとも言える」と書いています。
ファム・ファタル、魅力的だけれど手に入れるにはあまりにも危険な少女、その代名詞としての「ナジャ」、というのはその筋ではあまりにも当たり前のことだったはずです。
鈴木氏の発言は意外でした。
『ナジャ』が恋愛小説ではなかったとして、それでは、いったいなんだったのか。
明快な解釈を飄々とすり抜けていく鈴木氏の文体からは、はっきりとした回答はもちろん得られません。
しかし、この文章を終わらせるために敢えて、いったん仮説を述べておきます。
『ナジャ』は、ブルトンが自分自身と、そのナルシシズムと対決するものだった、と鈴木氏は指摘したのではないでしょうか。


シュルレアリスムにとって、ナルシシズムは根本的に危険なものです。
その危険なものを前に徹底的に向き合おうとすることでブルトンは、シュルレアリスム運動の創始者となり、その主導者となり、また現代に至るまで強く深い影響を残し続ける運動としてシュルレアリスムの可能性を開花させることに成功したのだ、とすら僕には思えてきます。
こうまとめてしまうとあまりに単純なので、やっぱりあと何度か、また鈴木氏の文章を読み直す必要がありそうです。


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