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現代日本における売春の実体。データに基づき赤裸々に紐解く良書。

今日紹介する本は彼女たちの売春(ワリキリ)。現代日本では違法とされている売春行為であるが、様々な理由で、敢えてそれを選択し続けている女性達がいる。本書は、100人もの「ワリキリ(売春)女性」に対する取材が明らかにする、赤裸々な現実を綴った1冊だ。
 
この本、よく出来た小説のような文体で極めて読みやすく、ひとりひとりの取材対象の人生の重さが効果的に切り取られていて非常に読み応えがある。端的に言って素晴らしい良書であり、多くの人にオススメしたい。しかし、この本をどのように紹介したらいいのか、正直なところ悩ましいのだ。
 

 
本書の著者は、シノドスというWEBメディアを運営している荻上チキ。経済からフェミニズムに至るまで、実に幅広い分野を扱っているシノドスと同じように、荻上自身が扱う対象も幅広い。
 
今までの荻上が手掛けた書籍のテーマは、東日本大震災のときの流言やデマの検証、テレクラやエロ雑誌などのセックスメディアの歴史、いじめ問題、フェミニズム以降の女性問題など。
 
比較的センセーショナルな話題を扱いながら、極めて慎重な配慮が文章から読み取れるため、「キレイすぎる」「優等生的」という印象があり、多くの読者から食わず嫌いならぬ「読まず嫌い」を受けている著者のひとりだと僕は考えている。
 
なお、前田敦子はキリストを超えたで話題の濱野智史とも交友関係があり、以前には共著を出そうという計画もあったそうだ。(結局、濱野は共著を降り、企画は『セックスメディア30年史に結実した。)そんなほぼ同世代の2人の書き方の違いを読み比べてもいいだろう。
 
 
本書には、違法行為である売春を問題視した結果、売春する場を「浄化」しようとして失敗するケースに触れている。うつ病やパニック障害(その背後にはDVや貧困があることも多い)を抱えているがゆえに、「昼職」と呼ばれる正規の業務から女性が排除されてしまうという現実がある。「昼職」から排除されてしまうなら、行き場をなくした彼女たちは「売春の場」に居場所を求めるしかなくなってしまうのは自然な成り行きなのだ。
 
もっとも、荻上はワリキリ女性のすべてが、精神疾患や貧困から売春に手を染めていると見做すような乱暴な立場には立たない。取材対象の100人のなかの少数派にも目を向けるのだ。

 
本書には、取材対象のひとりひとりにつき、下記のような細かいデータが添えられている。
・名前
・取材日
・年齢
・アポをとった場所
・インタビューをした場所
・セックス1回あたりの平均価格
・売春での月収
・最終学歴
・結婚経験
・初交年齢
・初売年齢
・貯金額
・DV経験の有無
・性病経験の有無
・精神疾患の有無
・他の仕事
・風俗経験の有無
・売春を始めたきっかけ

 
また、本書の巻末には「ワリキリ白書」として、これらのデータをまとめたページがある。上記のデータのほかに、買春側の男性のデータや、1950年代の売春についての調査データが収録されている。

 
売春について何かを語る際にとても参考になるデータ集だと言えるだろう。

 
冒頭にも書いたとおり、本書はとても読みやすく、膨大なデータが気にならないくらい、随所にユーモアやドラマがちりばめられていて、読んでいてとにかく「面白い」。
人気漫画の闇金ウシジマくんや、経済学ブームを巻き起こしたヤバい経済学などを楽しく読んだ人には、自信を持ってオススメできる。

 

 

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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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