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FSSを語れない人は不幸、語れる人は異常?ユリイカで永野護特集

ナガタが心酔する執筆者に寄稿していただく企画の第二弾は、先日発売されたユリイカ増刊号 特集:永野護で御大・永野護へのインタビューなど、編集者なみに仕事をしまくった飯田一史さん。
飯田さんはベストセラー・ライトノベルのしくみで産業との結びつきに焦点を当ててライトノベルを読み解き、データを重視した仕事をたくさんこなしている人物です。
作家の高遠るいさんとともに「日本オタク大賞」にも登壇されるとのこと。
 
「今このときまで永野護ファンにならなかったお前にこの楽しみは渡さない!」と繰り返す、挑戦的な内容になりました。
これ大丈夫なのかなあ(笑)
 

 
……今日中に仕上げなければいけないレポート作業に支障が出た。
……まる3時間近く、拡散性ミリオンアーサーにログインするのも忘れちゃったよ。
いやあ……読みふけってしまった。
 
何がって?
……の前にお前だれだって?
 
申し遅れました、ナガタくんに「永野護先生に取材したよ」と言ったらなぜか原稿を依頼されたライターの飯田一史です。で、読みふけってしまっていたのは僕が永野先生にインタビューさせていただいた原稿が載っている
 
『ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃』
です。
永野護といえばいま監督・脚本・原画・動画(!)等々を自ら手がけた劇場用アニメーション『花の詩女ゴティックメード』(以下GTM)が絶賛公開中、コミック『ファイブスター物語』(以下FSS)やアニメ『重戦機エルガイム』のキャラクター&メカデザイン、それから『機動戦士Zガンダム』のキュベレイとかハンブラビのデザインで知られております。
 
おります、が!
 
ファン以外は読まなくていいです。この本は。オススメはしません。
もちろん、あの安彦良和がダイ・グ……じゃなかったトリハロンを描きおろしてるのが観たい!とか『シャーマンキング』が好きだから武井宏之のトークが読みたい!という理由で買ってもいいと思います。
思います、が!
 
今このときまで永野護ファンにならなかったお前にこの楽しみは渡さない!
 
この本は、そういうアイテムですね。
 
■ファン語りがアツイ!
永野先生といえば先日、
「ひらめき☆マンガ学校によるF.S.S.入門」という記事が公開されたり、
2.5D特別集中講座 試験に出る永野護とF.S.S.というイベントが行われたり、
FSS大好きなひとたちが想いのたけをぶちまけた公式ファンブックが出たりと、GTM合わせで“濃い”人たちが吠えまくってます。みんなほんとに好きなんだなーと感動するくらいに熱く。
 
今回の「ユリイカ」も例外ではなく、僕のようなヌルオタは肩身の狭い思いをしておとなしく黙っていようと思うくらいですが、それでももう一度言う。
 
今このときまで永野護ファンにならなかったお前にこの楽しみは渡さない!
 
……永野作品は異常です。
線も、デザインも、設定も、物語も、キャラクターも、すべてが。
で、その異様さゆえに、惹かれたひとは魂を取り込まれてしまう。
永野さんもおかしいけど、信者もたいがい頭がおかしい。
だから、そのファントークや思い思いの考察を聞いているのが最高に楽しい。
FSSはそういうマンガだし、永野護というのはそういうひとです。
 
逆に言うと、永野ファン、FSSファン、そしてなぜか何も知らずGTMを観て「なんだこれ???」とびっくりしちゃったひとは全員読んだほうがいい。
7500円したあの『KNIGHT FLAGS』のたった17%の値段ですよ(税込1300円)。
 
■内容を軽く紹介
目次詳細から一部だけ紹介すると、
【ロング・インタビュー】 まだまだスゴいのは見せてないよ 
【「マモルマニア」へ至る道】 武井宏之×西島大介×梅沢和木
【トリビュート・イラスト】 安彦良和/TOKIYA/前田浩孝
【永野護へのオード】 穂村弘 古野まほろ 渡辺玄英
【対談】 新城カズマ×伊藤盡 伊藤剛×中田健太郎
こんな感じ。
 
永野先生のインタビューでは、作品の歴史観や「なぜGTMでは一切CGを使わなかったのか」といったことを突っ込んで訊かせていただき、手前味噌ながら、ほかではあまり語っていないことを伺えたと思っています。
 
さすが「ユリイカ」という感じなのがトールキンと永野護というフリから神話論的にFSSを語る新城カズマ×伊藤盡対談とか、マンガ論的に語る伊藤剛×中田健太郎(中田さんがFSSでは「縦にコマを割らない」と指摘していて「そうそう!」と思った)、近年の二次創作とFSSは何が違うのかについて語ったさやわか×村上裕一、ファッションから観たFSSを語る蘆田裕史×小野原誠の対談ですね。
 
FSS女子は金田淳子×岡田育のトークを読むと「わかるわかる!」ってなるんじゃないでしょうか。
俺は「こいつら頭おかしい……」と思いましたね。
中高時代、学校でこのひとたちがFSSを読んでいるのを見かけても「あっ」とは思っても近づかなかっただろうなと正直感じるくらいのパッション。
ミラージュ騎士団好きが高じて高校のころオレンジとグリーンの二色だけでノートに傍線引いてたとか語る岡田さんに軽く引くw この子、病気だよ!
 
ほかにも山中智省さんがFSSとライトノベルの影響関係のような意外な切り口で書いていたりするんですが、残念なのがロボットアニメ/マンガ史的に観てどうとか、ガレージキットとFSSみたいなド直球な論考がないんですね。
そのへんはアニメ誌や模型誌に譲ったんでしょうけど。そこはちょっと物足りないところですね。
 

■FSSは二次創作に向いてない、が!
この特集の中では僕も含め何人もの論者がFSSと二次創作について語っているんですが、みんな口を揃えて最近のミクや東方に比べるとFSSはいじりにくいと言っている。
この「みんな同じ事を言っちゃう」感じがおもしろいなーと。
 
もうひとつ思ったのが、二次創作なんかしなくても、FSS語りだけで「芸」になるなと。
(ちなみに永野先生はFSS世界に他の人間が参入するのはOK! でも俺がやる気なくなって投げたらね、みたいなことを言ってました)、
 
つまりニコ動やpixivでキャラを使った何かにはしにくいけれど、「FSS芸人」は成立する。
西島大介さんは「成立しない!」って言ってたけど、絶対するよ!
みんなが語るFSS、むちゃくちゃおもしろいもの。
FSSは作者も狂ってるし、読者も狂ってる。すごいコミュニティ。
 
たいして語る対象のことを好きでもないひとがスカして難しいこと言ってるだけの原稿が「ユリイカ」にはよく載ってるけど、この特集にはそういう残念なひとはあんまりいない。高確率でマジで永野護が好きなひとの集まり。
 
そういうわけでGTMからFSS連載再開までの空前の永野まつりに参加したいひとはみんな安心して買って読んで、そしていっしょになって好き勝手語るといいと思います。
 
どうしても参加したいけど読んだことがないというひとは今すぐFSS全巻(単行本+リブート)を買って読んでGTMのPV観て「あのボロい布これか」とか「炎の女皇帝とか言ってるから星団年表のこのへんの話か」とか瞬時にわかるくらいまで浸かってから劇場に行って、で、映画観た帰りに川村万梨阿の歌聴きながらこの本買ってください。
 
FSS語りは最高に楽しい。できないひとは、不幸。
できるひとは、異常。

 
そのことがよーくわかる一冊です。
 
 目次
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総特集†永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃

 

【ロング・インタビュー】
まだまだスゴいのは見せてないよ 「踏み外す」ことからすべては始まる / 永野護 聞き手=飯田一史

 
【「マモルマニア」へ至る道】
神はデザインする 永野護をめぐるトラフィクス / 武井宏之×西島大介×梅沢和木

 
【トリビュート・イラストギャラリー】
永野護の旗の下に / 安彦良和/TOKIYA/前田浩孝/しまどりる/佳嶋/mot/空木朔子

 
【永野護へのオード】
『ファイブスター物語』という謎 / 穂村弘
AMX‐004 キュベレイ / 古野まほろ
震 電 / 渡辺玄英

 
【『GTM』見参!】
荒地の歌 『花の詩女 ゴティックメード』論 / 藤田直哉

 
【七七七七年の愉楽】
生きている神話をどう読むか / 新城カズマ×伊藤盡
傀儡は宙を跳ね回る / 佐藤俊樹
人形はどうして動いてしまうのか / 中田健太郎
年表を生きる者 永野護は何を表現しているのか? / さやわか

 
【『FSS』解析事始め】
絵画的マンガ論のほうへ 『FSS』とキャラを描く快楽 / 伊藤剛×中田健太郎
Schwingungen ブランドとしての永野護『ファイブスター物語』小論 / 飯田一史
構築される「歴史」とフィクション 『ファイブスター物語』を中心に / 玉井建也
神話と伝説のあいだ 古典文学の現代的パラフレーズとしての『ファイブスター物語』 / 木村朗子
神はいないが、花を着る / 西川アサキ
永野護と奇想のエンターテインメント / 蔓葉信博

 
【エフェメラルに、エターナルに】
肩、袖、腰…ラインが語り出す物語 / 蘆田裕史×小野原誠
『ファイブスター物語』の服飾世界 服飾的異教習合とポストヒューマニズム / 樋口ヒロユキ

 
【女たちの永野ワールド】
『FSS』はこの男に萌えろ! 女子たちのための『FSS』(再)入門 / 金田淳子×岡田育

 
【永野護とアニメ】
星団歴2988年、西暦2015年、昭和20年 悔恨の記号としての「年号」 / 宮昌太朗
ファティマの瞳は何色なのか / 高瀬司

 
【永野後の世界】
星団史を改竄する想像力 二次創作の時代から読む『FSS』 / さやわか×村上裕一
アーカイブと戦争の日本的性格 『ファイブスター物語』と戦後日本サブカルチャー史 / 福嶋亮大
永野護の視点 / 小田切博
ライトノベルに息づく『F.S.S.』の遺伝子 / 山中智省

 
【資料】
永野護/FSS/GTM年表 / 飯田一史

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【飯田一史プロフィール】
ライター、編集者、講師。’82年生まれ男性。
墨田区在住。出版社勤務を経て独立。
「新文化」「ユリイカ」「SFマガジン」「QuickJapan」などにサブカルチャーやコンテンツビジネス関連の記事を寄稿している。
単著に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に限界研・編『21世紀探偵小説』『サブカルチャー戦争』(ともに南雲堂)ほか。
坂本真綾さんのファン。ぼちぼち大学院を卒業するので仕事を増やしたい。
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