読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

A・クリスティー賞第二回受賞作、審査委員絶賛『カンパニュラの銀翼』

早川書房が主催するミステリの新人賞「アガサ・クリスティー賞」第二回受賞作カンパニュラの銀翼は、審査員満場一致で選出された。
 
本作は、1920年代の後半のイギリスを舞台に、資産家の息子の替え玉として名門大学の哲学科に通う少年エリオットを主人公に描かれる物語。シグモンド・ヴェルティゴを名乗る謎の美青年、彼と奇妙な因縁を持っているらしき若き研究者が、エリオットの目の前に現れるところから、彼の日常は大きく変化し始める。哲学や論理学の薀蓄が散りばめられており、知的で幻想的な雰囲気が全体に漂っている。不吉に淀んだ悪徳の薫りに沈むばかりではなく、本書の後半には胸のすくような冒険が待ち受けているという、凝った構成になっている。
 

 
上掲の表紙画は、バチガルピねじまき少女なども手掛けたイラストレーターの鈴木康士が描く二人の人物が印象的だ。パッと見たところ古色蒼然とした古臭いデザインに見えるのだが、これは恐らく敢えて選ばれたスタイルなのだろう。鈴木康士のイラストが印刷されたジャケットを取り外すと、書籍本体の凝りに凝った細かい装飾が非常に美しい。書店で本書を手に取る際には、ぜひここまで見てみてもらいたい。なお、この造本にも表れているとおり、本書の内容もいっけんすると「古色蒼然」とした筋書きなのだが、細部の作り込みと端正さは目を見張らせるものがある。
ゴシックな活劇を求める読者には、ぜひオススメしたい作品である。
 
 

なお、10月29日には明治記念館で本書のアガサ・クリスティー賞授賞式が挙行された。
 
北上次郎は、審査員を代表し「アガサ・クリスティー賞は、ミステリの新人賞。新人賞というのは、そこからどんな作家が現れたかで価値があがるもの。いつか、『カンパニュラの銀翼』が受賞したアガサ・クリスティー賞、と言われるときがくる。」とスピーチ。
 
作者の中里友香は「本作がミステリとして認められるかということには不安があったが、作品には自信があった。賞の名前にもなっているアガサ・クリスティーは、「女性」作家として読まれているわけではない。私も、女性作家だからというわけではなく、たとえばゴシック作家と呼ばれるようになりたいと思っている。」と語った。

 
続いて受賞祝賀会が催されたのだが、乾杯の発声はライブドア事件などを担当した元検事総長。
「検事の仕事は事実を見極めること。事実は小説より奇なり、というが、私は”ミステリは事実より奇なり”と思うことがある。中里さんにもそういった作品を書き続けてほしい。」と語り、グラスを掲げた。
 
==================================
【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================
==================================

 
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。

コメント

コメントをお寄せください。

コメントの投稿

コメント(必須)