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『ほたるの群れ』シリーズ著者 向山貴彦さんインタビュー

ほたるの群れ 第四話 瞬(まじろぐ)が刊行された。本作は、暗殺者という裏の顔を持ちながら中学生生活を送る主人公たちの葛藤を描いたシリーズの第四話。
このシリーズでは、極秘組織「会」という暗殺集団を中心とした、暗殺者同士の凄絶な死闘が描かれている。あたかも普通の中学生のように生きる「表の顔」と、血で血を洗う抗争が繰り広げられる緊迫した「裏の顔」のギャップが鮮烈な印象を残す。
 
今回、そんな『ほたるの群れ』シリーズの著者、向山貴彦氏にインタビューの機会をいただくことができた。

 

  

 

  


 
質問1:
本作の執筆のきっかけを教えて下さい。

中学生の頃、テレビドラマに影響されて、自分の学校を舞台にした小説を書いていました。それが「ほたるの群れ」の原型で、主要キャラクターも「中学生が殺し屋として暗躍する」という無茶な設定も、全く同じです。当時は学校の中でその原稿を、友達中心に回し読みしてもらっていました。
 
 それから二十五年以上が経って、ふとその時の原稿を読み返してみると、今の自分には思いつかないような破天荒さが愉快で、大人になった自分の手でこの作品を作り直してみたらどうなるのだろう、と考え始めたのがきっかけです。奇妙な言い方をすれば、「ほたるの群れ」は今のぼくと、中学生のぼくとの共作だと言えるかもしれません。十代の少年の荒唐無稽な空想と、四十代の大人の理性的な物語が一緒になったらどうなるか、というのを楽しんでもらえたら幸いです。
 
 
質問2:
一番簡単にほたるの群れという作品を説明すると、どんな作品ですか?

洋画などのサスペンス/アクション映画・ドラマを想像して頂いて、そこに日本の普通の中学生を主人公として放り込んで頂いたら一番分かりやすいかと思います。

 
普通はそう言った映画で悪役と対峙するのは、FBIのエージェントやベテランの警察官ですが、「ほたるの群れ」では、戦うのはあくまでリアルな中学生です。
好きな子とまともにしゃべることもできず、深刻な顔をすると友達にからかわれ、帰宅が遅くなることさえ許されない――そんな少年が命を狙われ、武器ひとつない状況で戦う羽目になったらどうなるか、という物語をとことん細かく描いて
います。
 

また、ヒロインの方も、恋人や謎の美女ではなく、ただの隣の席の女の子で、命の危険にあっても手を握っていいのかどうかさえ悩んでしまうような存在です。
しかしそれでも悪役は容赦なく、あらゆる手段を駆使して主人公たちの命を狙ってきます。普通の中学生がそんな連中を相手にどう生き抜くのか、ぜひ見守ってやってください。

 
 
質問3:
サブタイトルがすべて漢字1文字に統一されていますが、どのような意図があったのか、教えてください。

ごく一般的な漢字でも、読み方を変えると二重、三重の意味になることから、各巻のテーマやイメージを漢字一文字に集約できたらと考えて付けました。また、作中で登場する組織が、多くの隠語を漢字一文字で表現する性質があるため、その主旨をサブタイトルにも利用しています。でも、何よりも中学生の頃の自分が好きそうだったからです(笑)。
 
 
質問4:
本作品の主人公たちは中学生という設定になっていますが、なぜこの年齢に設定されたのでしょうか。

大人になると忘れてしまいがちですが、「十代を生きる」ことは戦いだと思います。残酷な幼い人間関係の中で自分の居場所を見付け、仲間に認められる人間になり、学校という治外法権の社会でアイデンティティーを築いていかないといけません。「ほたるの群れ」は大げさな話ですが、ある意味でその中学生の戦いを描いています。
 
思い返してみると、中学時代は人生の中でも特に不思議な時代で、どこか不安定で、生きることに対しての危うさ、儚さが常に付きまとっている時期のように思います。まだ理性が完全に育っていないのに大人と同じ事ができるため、ふとしたことで命を危険にさらしてしまったり、些細な理由から本当に自殺を考えることがあったり……。あとから振り返ると「あれはまずかった」と震えがくるような、親にも言っていない経験をこの時期に持っている人は少なくないのではないかと思います。死とまったく無関係のように見えて、それでいて死のすぐそばに
いる危うさを持つ「中学生」という年齢がこの話には一番しっくりくる気がして、敢えて主人公たちを中学生に設定しました。
 
 
質問5:
今回、書籍の発売にあわせてアニメ動画を作成されておりますが、書籍のPRとしてはとても新しい手法だと思います。この動画についてご紹介いただけますでしょうか。

言葉だけでは説明できない作中の「空気」を、未読の方に伝える方法を模索していた時、アニメーション作家の川崎健司くんと知り合い、「いっそアニメPVにしてみたらどうか」という話になりました。川崎くんのオリジナル映像作品「チルリ(http://www.youtube.com/watch?v=_VK2il0LnOY)」の持つ独特の空気感が、ぼくが過去に書いた作品にぴったり合っていたこともあり、書籍の宣伝としては異例ですが、チャレンジしてみたいと思いました。
最初はごく小規模な1~2カット程度のものを想定していたのですが、川崎くんと、音楽担当のoo39ドットコム(www.oo39.com)の八幡さんの熱意と努力により、音、声などにも凝ったPVが出来上がりました。たった二分間ですが、いろんな要素を詰め込んでいますので、未読の方にも既読の方にもご覧頂ければ嬉しいです。タイトルが出たあとの数秒が特に必見です。

 
 
 
質問6:
本作と併せて読むことを薦めたい書籍はありますか。

書籍ではないのですが、webマガジン幻冬舎(http://webmagazine.gentosha.co.jp)で「ほたるの群れ 日常編 ~五倉山中学日記~」という四コマ漫画を連載しています。こちらでは登場人物の日常での姿を中心に、本編の裏側で起きている出来事などを追っていて、本編に絡んだたくさんの仕掛けをしていますので、併せて読んで頂くと、あっちこっちに「これはあれだ!」と思うことがあって、二度楽しめるのではないかと思います。
 
書籍だと童話物語』『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』『BFC BOOKS』『絶叫仮面(いずれも幻冬舎刊)などが、大体同じスタッフで作っている作品です。スタジオ・エトセトラのwebサイトや、各作品の公式サイトを見て頂くと詳しいことが載っていますので、そちらの方もぜひよろしくお願い致します。(ほたるの群れのサイトには五倉山中学校の校歌、給食表なんてものも載っています。)
 
スタジオ・エトセトラサイト:http://www.studioetcetera.com/main/(こちらでスタジオ関連作品の連載や、最新情報をいち早く提供しています。また、ここから各作品の個別サイトへ行くことができます。)
 

  

 

  

 
 
質問7:
実は私は1979年にコネチカット州で生まれ、のちに日本に「帰国」しました。向山さんは「1970年にテキサス州生まれ」とプロフィールに書かれていますが、生まれ育ったのはどちらになるのでしょうか。
ぼくはテキサス州のウェーコという町で生まれて、小学校に上がるまでそこで育ちました。帰国したのは小学校入学式の前日で、「し」と「J」の区別すらつかない状態で山口県下関市の小学生になりました。それからも親の仕事の都合で何度か短い期間、アメリカへ連れて行かれることがありましたが、基本的に「育ったのはどこか」と聞かれれば、下関市だと思います。「ほたるの群れ」の舞台も、設定では「架空の西東京」ですが、全体のイメージや心象風景は下関から借りているところが大きいと思います。
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インタビューは以上です。
ご協力くださった向山さん、ありがとうございました。
 
 

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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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