読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

超絶な暴力と破壊を美麗絢爛フルカラーで魅せるバンドデシネの怪作

なんでこんなに最近のフランスのコミック(バンド・デシネ、BD)の邦訳が盛んなのか。その謎はまだ解けないのだけれど、今回もまたかなりマニアックな作品が邦訳された。
 
カルト作家として名高い、アレハンドロ・ホドロフスキー原作メタ・バロンの一族。下に掲載する書影をまずは見て貰いたい。わけがわからないと思うが、とにかくカッコいいのはわかってもらえるだろう。ちなみに、この作品は表紙だけではなく中のページも、この美麗な筆致でフルカラーの世界が繰り広げられている。作画はフアン・ヒメネス。

 

  

 
ホドロフスキーは「キング・オブ・カルト」と呼ばれる人物で、出世作『エル・トポ』が漂わせる「胡散臭さ」「気持ち悪さ」はさすがに唯一無二だと言わざるをえない。
※人によっては不快な映像や音響が含まれています。ご注意ください。

 
また、『エル・トポ』に続いて公開された『ホーリー・マウンテン』は、意味不明さとグロテスクさ、ダイナミズムと胡散臭さを増幅させた怪作。
※人によっては不快な映像や音響が含まれています。ご注意ください。

 
そして今回紹介する『メタ・バロンの一族』は、冒頭に紹介したとおり、このホドロフスキーが原作を手がけている。本人は「ギリシャ悲劇を現代の想像力で再構築してみた」というようなことを、まえがきで語っている。それはさておき、宇宙を舞台にしてとにかく「最強の殺戮者」の一族が縦横無尽に駆け回るという、タガの外れたようなイマジネーションの奔流が迸っている。ときどき話の流れが荒唐無稽すぎて読むのが辛くなるほどなのだが、そういうときはとにかく、ただ画面の絵を眺めてページをめくってしまうことをオススメする。原作者の言うとおり、このお話がある種の神話なのだとしたら、大事なのは「話の辻褄」のようなものではない。超絶な暴力と破壊、壮大なスケールを飛び回る物語が、「進んでいくこと」なのだ。そのさきに何があるのか。凡人の知るところではない。

 
さて、実はこの『メタ・バロンの一族』は、別の作品に登場する「メタ・バロン」というキャラクターの一族を大河ドラマ風に追ったものになっている。そのメタ・バロンが登場する「別の作品」というのは、今年惜しまれつつ亡くなったバンド・デシネ界の巨匠メビウスが作画を手掛け、スペース・オペラとして高く評価されているL’INCAL アンカルだ。これも原作はホドロフスキー。意味不明で必然性がまったくなさそうな世界設定が、気が遠くなるほど集積している世界を、主人公の探偵が駆け抜けていく。強烈にグラマラスな『メタ・バロンの一族』と比べると、作画の方向性がまったく違うことも相俟って、同じ世界とは思えないほどさっぱりすっきりとしている(どっちも荒唐無稽なことには変わりがないのだけれど)。

 
日本にバンド・デシネをはじめヨーロッパのコミックを積極的に紹介していた『ユーロマンガ』このメビウスの死去をうけて復刊し、追悼特集を組んだことにも触れておきたい。この号には、やはりホドロフスキーが脚本を務めた未邦訳の作品『猫の目』を完全収録。この作品は、『アンカル』や『メタ・バロンの一族』のような壮大な世界観ではなく、教会のような建築物の周辺で起きる物語。メビウスの象徴的な描き方が、静謐な雰囲気を絶妙に表現しています。

 
「バンド・デシネの巨匠」といえば、メビウスと双璧をなすもうひとつのビッグネーム、フランソワ・スクイテン(シュイッテン)が手がける思弁小説的な『闇の国々』の第二弾も、今月発売の予定。

  

 

 
【関連書籍など】


 
 
 
==================================
【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================
==================================

 
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。

コメント

コメントをお寄せください。

コメントの投稿

コメント(必須)