読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

ラジカルな詩で子育てしよう!『じゆうなことばであいうえお』

東京書籍が刊行した絵本じゆうなことばであいうえおを、編集者さんからご恵投いただいた。「なぜBookニュースに?!」と最初は不思議だったのだけれど、中を読むにつれて疑問は氷解した。なるほど、そういうことだったのかと。どういうことだったのかというと…
 
まずこの絵本、「子どもが初めてであうひらがな」として、俳句・短歌・詩などの名文を使おうというコンセプト。そこで選ばれる詩が、端的に言うとこのBookニュース向きだったというか。ひとつ参考までに挙げておくと、たとえば尾崎放哉「せきをしてもひとり」。尾崎は、20世紀に活躍した、種田山頭火と並ぶ自由律俳句の大家で、この句は「咳をしても、誰も心配してくれない。孤独で寂しい」と解釈されることが一般的だ。放埒な性格で、仕事もできず、妻に見放され、近所の人達からも疎まれていた尾崎の代表的な一句。
しかしこれを子どもが覚えたとしたら、それは多くの子どもたちが生来持ち合わせる「我儘さ」に寄り添う格好の座右の銘になりうるかもしれない。たとえば風邪をひきかけて、鼻水も咳も出る、でもお母さんの言うとおりにおとなしくしていることができなくて「もう知らない!」と言われてしまうようなとき。「せきをしてもひとり…」と子どもが呟くとしたら。それを見た親が、我が子の可愛さに思わず頬をほころばせてしまうだけではなく、子ども自身も単に我儘をしただけではなくて、何か良いことをしたようなちょっと誇らしい気持ちになるかもしれない。そのときに、孤高の果てに夭逝した尾崎の存在の残響がそこに響いているのではないだろうか。
もの凄い絵本である。
 

 

絵本なので、文字の他に視覚的な要素も重要だ。表紙を見てもらうとわかるとおり、使われている色の深みは素晴らしい。五十音から一文字ずつ選ばれて、その文字をおぼえるために見開きの右ページに大きくその文字が描かれている。たとえば上掲の「せきをしてもひとり」ならば「せ」が大きく書かれている。右ページには、ひらがなでそれぞれの詩が書かれていて、その詩のイメージイラストも付されている。
たとえば、上掲の画像は、「せきを しても ひとり」のページの見開き。
また、たとえば下の、「つ」では「つきが つめたいおと おとした」という住宅顕信の自由律俳句が挙げられており、夜のような暗い青地に、右ページには月のような黄色で「つ」の字が、左ページには同じ色で詩が書かれ、左ページには水面に同心円状のさざなみがたち、その真ん中に月の影が映り込んでいるというイラストが置かれているのだ。詩も素晴らしいのだが、それとセットになることで、ごく単純なイラストがいちいち胸を打つ。

 
このほか、この絵本には、尾崎と並ぶ自由律俳句の大家・種田山頭火の句も多く取り上げられている。「むぎのほの おもいでが ないでもない」など、これも子どもが呟いていたらとても可愛いのではないだろうか。果たしてその子は本当に「麦の穂の思い出」があるのだろうか。あったら素敵である。是非、麦畑に連れて行って教えてあげて欲しい。

※編集者のご厚意で画像掲載の許可をいただきました。ありがとうございます。
 
 
【関連書籍など】


 

 
 
 
==================================
【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================
==================================

 
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。

コメント

コメントをお寄せください。

コメントの投稿

コメント(必須)