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危ない爺さんと臆病な僕の物語。バンドデシネ『レオン・ラ・カム』

フランスのコミック(バンド・デシネ)を代表する才能ニコラ・ド・クレシーの作品の邦訳が相次いでいる。今回刊行されたレオン・ラ・カムは、ド・クレシーの代表作のひとつであると同時に、『イリュージョニスト』『ベルヴィル・ランデブー』などのアニメーション映画で知られるシルヴァン・ショメの共作による作品でもある。
 
『レオン・ラ・カム』は、フランスの化粧品業界で大成功した一族の物語。一族の繁栄を築いた祖父レオンと、現在の一族を切り盛りする父、その子でレオンの孫であるジェジェ。物語はこのジェジェとレオンを中心に展開する。もうひとつの代表作である既訳の『天空のビバンドム』と比べると本作は、ストーリーも世界観もかなり「マトモ」だ。ほとんど幻想的な神話だった『ビバンドム』に対して、『レオン』のほうはかなりリアリスティックだと言える。
 

 
この表紙のおじいさんが主役の一人、祖父レオン(よく見ると、ナイフの持ち方からして怖い)。彼が非常に魅力的な存在として描かれている。彼は99歳の隠居の身なのだが、かつては自らが経営する企業の従業員たちと共闘する左翼であったし、引退後はどうやらドラッグの売人でもあったらしい(本書のタイトル「レオン・ラ・カム」とは「売人のレオン」という意味だ)。そして大企業となった彼の会社を継いだ父の元で、極端に臆病者に育ってしまった、もうひとりの主人公ジェジェ。彼の臆病さは読んでいてイライラしてしまうくらいなのだが、しかし、正直、いわゆる「ビジネスシーン」に萎縮したことがある人間ならば、実は誰でも共感できるキャラクターでもある。
 
この二人が出会って、ジェジェの臆病さを破天荒でかっこいいおじいさんレオンがふっ飛ばし、颯爽とビジネス界で大活躍!という筋書きであったならば、それはそれで面白いかもしれないが、二人の作者は「そうは問屋がおろさない」とばかりにひねりを加えてくる。

 
物語の冒頭で、レオンはほとんど廃人になってしまっている。作品の描写は、その冒頭の時間から少し巻き戻し、ジェジェとレオンの出会いから話を語り直す。
ジェジェがレオンと出会い、レオンの破天荒さ(と、彼のドラッグの力)によって、臆病さを徐々に克服していく姿が描かれはする。しかしその「臆病さの克服」は、いわゆる社会的成功とはまったく異なっている。
 

このあたりは、やはり先日邦訳されたド・クレシーのサルヴァトールでの微妙な物語の運び方にも似ていて面白い。

 
残念ながら今回邦訳された『レオン・ラ・カム』は2巻組の第1巻目で、第2巻の邦訳の予定は今のところまだないとのこと。是非、本書を手にとって第2巻を待望する世論を作り出し、一日でも早く続編が日本語で読めるようにしたいところだ。
 

これはこれで非常にお爺さん萌えな作品『イリュージョニスト』。
泣きました。
 

こっちはお婆さん萌え作品『ベルヴィル・ランデヴー』。
これもいいですねー。
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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