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中身も装丁も超カッコいい哲学書シリーズ。エクリチュールの冒険 前篇

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今回の記事は2章構成
・前篇:シリーズ「エクリチュールの冒険」を紹介
後篇:『到来する共同体』の内容について紹介

 
 「月曜社」という人文系の出版社がある。ブログウラゲツ☆ブログなどで、人文系の書籍の刊行情報や、研究者の活動などを定期的に告知している出版社だ。その月曜社が刊行しているシリーズに「エクリチュールの冒険」というシリーズがある。つい先日はイタリアの現代哲学者ジョルジョ・アガンベンの到来する共同体という本がこのシリーズの一環として刊行された。
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この「エクリチュールの冒険」というシリーズ、内容もさることながら、なんといっても造本が文字通り「ヤバい」
今回は記事を2章構成として、前篇ではシリーズ「エクリチュールの冒険」を、後篇では『到来する共同体』の内容について紹介したい。まずは『到来する共同体』の書影を見てもらいたい。
 

 
スキャナーで読み取った画像だけでは伝わりにくいかもしれないが、この本は、太陽を照り返すように輝く向日葵色と、焼け焦げたあとの炭化した何かを思わせるような墨色で構成されている。
真面目な哲学書なのに、とんでもないことをしている。
信じてもらえないかもしれないが、真っ黄色の紙に、墨色で字が書かれているのだ。
黄色と黒。そう、勇気のしるし…というか、警戒色だ。
 
常識的に考えれば、目がチカチカしてとても読めたものではない。
視覚が徐々に焼きつくされていくような読書経験がそこには待ち受けている。

読者諸氏から苦言を寄せられることもあるそうだ。
その気持ち、わからなくはない。
 
しかし、本来、哲学書とはそういうものだったのではないだろうか。
難しいことが書かれてあり、読めば思考を捻り上げられ、考えずに済ませて脳の隅っこに追いやっていた問題が、虫眼鏡で集めた太陽光線によって焼き焦がされるような体験。
 
読書することが、何かの探検旅行で生命や身体の危険に遭遇する体験に、そのまま通じるような本。そんな「冒険的なもの」こそ哲学書だったのではないだろうか。
※眼の健康のために、敢えて本書は暗がりのなかで読まれてしまうかも知れないのだけれど、それは出版社の狙い通りのような気がしないでもない。暗がりで本書を読むと驚くほど読みやすい。その「暗がりで読む」という独特の読書体験もまた、本書と本書の課題である「共同体」というテーマに、何故かとてもよくマッチする気もするのだ。
 
この『到来する共同体』を含む、シリーズ「エクリチュールの冒険」は、既に3冊刊行されている。
 
最初のひとつが、もはや伝説となっているモーリス・ブランショによる『書物の不在』。
タイトルも凄いが、何が凄いってこれもまた造本が壮絶だ。
表紙は血のような真っ赤。本文の紙も同じ赤色で、文字の色は黒。
ある意味で今回の『到来する共同体』よりも冒険的な色遣いかもしれない。なお、これもPCで見るよりも実物のほうが赤みがキツい。一部では「魔導書」と呼ばれているという。

 
これに続くのは同書の第二版。デザインを大幅に変えており、これはこれで面白い。
鉄色と呼ばれる本文の紙に、銀色のインクで印字。「死」というものを強烈に意識した文学者ブランショに対して、遺灰をイメージさせるようなデザインだった。

 
そして「エクリチュールの冒険」第三弾は、ヨーロッパからアメリカにわたった哲学者ロドルフ・ガシェいまだない世界を求めて

この書籍については、刊行時に当Bookニュースで取り上げているので、興味のある人はそちらも参照してもらいたい。
 
なお、9月中にはやはりアメリカの批評家ポール・ド・マンの『盲目と洞察』という本がこのシリーズでの刊行が予定されているという。やはり装幀に凝ってということなので、今から非常に楽しみだ。
この「エクリチュールの冒険」というシリーズは、つまるところ「超カッコいい」哲学書なのだ。もちろん、装いだけ着飾って中身が空疎というわけではない。書かれている内容も、極めてハードコアなものになっている。専門家はもちろん、背伸びをして「難しい本読んでるんだぜ」というポーズをしたい中高生にも自信を持ってオススメできる。
 
今回の記事は2章構成
・前篇:シリーズ「エクリチュールの冒険」を紹介
後篇:『到来する共同体』の内容について紹介

 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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