読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

NYにきらめく乙女の夢!プラダやSex&TCに至る女子映画の系譜

一般に「女子映画」と呼べる映画の一群があるように思います。それらの映画では、愛らしいヒロインが、イケメンたちと恋をし、都市で過ごす華々しい生活が描かれます。少女まんがの映画版のようなものだと言ってもいいでしょう。個人的には、アン・ハサウェイが主演を務めた『プラダを着た悪魔』なんかがそのその代表格です。山崎まどか女子とニューヨークは、この『プラダを着た悪魔』から『SEX AND THE CITY』に至る無数の「女子映画」を、テレビドラマやファッション誌などの周辺事情を交えながら紹介する1冊。
 
本書は、著者の「女子的なもの」に対する深い愛情によって、個々の作品やそれに関係した人々の大量のエピソードの相互関係をを明らかにしていきます。今回の記事では、その一端を少し詳しくご紹介します。
 

※なお、本書は装幀も非常に素敵です。上掲の書影画像ではわかりにくいのですが、実物はホログラムで小さな星のキラキラが印刷されていて、とてもゴージャスな感じ。眺めているだけでわくわくしてしまいます。
 
さて、本書の内容についてです。たとえば、第一章『プラダを着た悪魔』。
この映画は、なんといってもアン・ハサウェイが可愛いので、まずは予告編を観てください。

まあ、『ダークナイト・ライジング』でのアンハサのほうが素敵なんですけど。

 
それはさておき、この『プラダを着た悪魔』で、アンハサが演じる新人編集者を困らせる鬼上司のモデルは、1980年代末から20年以上の長きにわたってファッション界を牽引してきた、ファッション誌「ヴォーグ」の名物編集長アナ・ウィンター
 
『プラダを着た悪魔』はこのアナ・ウィンターのもとでアシスタントを務めた人物が書いたものです。この「文化系女子がファッション誌の編集部に入って鬼上司に振り回される」という設定は、『アグリー・ベティ』という大ヒットテレビドラマに引き継がれますが、『プラダを着た悪魔』じたいもファッション雑誌を舞台にしたハリウッド映画の伝統を受け継いでいるのです。
 
1950年代のオードリー・ヘプバーン主演ミュージカル映画『パリの恋人』には、ファッション誌の編集部が登場します。

文化系の垢抜けない女性がファッション界に足を踏み入れて成功していくところが、『プラダを着た悪魔』『アグリー・ベティ』『パリの恋人』では共通していると言えるでしょう。
そして、『パリの恋人』に登場するファッション誌の編集長役のモデルも、のちに「ヴォーグ」編集長となる人だったのです。彼女の名はダイアナ・ヴリーランド
 
ヴリーランドは、ただの「銀行員の奥さん」だったところをスカウトされてファッション誌の編集者になったという経歴を持つ変わり種ですが、独特のカリスマ性によって有名な人物です。彼女が住んでいたという、全ての家具を赤で統一した家は、『冷血』で知られるカポーティをモデルにした映画『インフェイマス』でも再現されて登場します。

この映画も面白そうですね。
 
本書では、この調子で軸にするキーパーソンやキーワードをどんどん変えながら、舞台と映画とテレビと雑誌という複数のメディアを縦横に辿り、ファッション界で「女子」や「乙女」たちの夢のイメージがどのようにして紡がれていったのかを明らかにしていきます。本書の帯には「これは乙女の『ダ・ヴィンチ・コード』ですか?」というコメントが記載されていますが、まさにそのとおりだと言えるでしょう。
 
本書で興味深かった他の作品について、動画を挙げながら紹介しましょう。
まずは『恋は邪魔者』。

レニー・ゼルウィガーは色んな役柄をこなす女優さんですが、この作品ではほんとうに可愛いですね。
そして、この元ネタとなったという『夜を楽しく』。

 
ちなみにこの『夜を楽しく』を監督したマイケル・ゴードンは、『ダークナイト・ライジング』にも脇役で登場するジョゼフ・ゴードン=レヴィット。最初に挙げたTVスポットの動画にも登場していますね。
 
そして『恋は邪魔もの』のもうひとつの元ネタ作品『求婚専科』。

この作品の原題は、『Sex and the single girl』。そう、この作品は大ヒットドラマ『SEX AND THE CITY』の元ネタでもあるのです。
 
さらに、『SEX AND THE CITY』と『プラダを着た悪魔』の元ネタ中の元ネタ、いわば元祖として挙げられるのが1959年公開の『大都会の女たち』。

 
なお、『SEX AND THE CITY』は、都会的なスタイリングが魅力の一つですが、この作品でスタイリストを務めたパトリシア・フィールドは、『プラダを着た悪魔』や『アグリー・ベティ』でもスタイリングを手がけています。
そしてこのパトリシア・フィールドのアシスタント出身のエリック・デイモンが意匠を手掛けたのが、ヤングアダルト小説のシリーズが大ヒットになりテレビドラマも大成功を収めた『ゴシップガール』。

 
こんな感じで、様々な作品を紹介している本書の終章で、著者が挙げるのは「女性版ウディ・アレン」という惜しみない称賛を捧げているレナ・ダナム監督による『girls』というドラマです。

この作品もまた『大都会の女たち』の系譜に連なる作品であり、かつ、田舎のファンタジーにとらわれていない新世代らしさがあるといいます。僕はこの作品、まったくノーチェックだったので、本書で知りました。面白そう。
 

【関連書籍など】


 

 

目次
==================================================

第一章 『プラダを着た悪魔』の文化史
『プラダを着た悪魔』の正体 『プラダを着た悪魔』と『アグリー・ベティ』
「SATC」のスタイリスト、パトリシア・フィールドの存在
『パリの恋人』とダイアナ・ヴリーランド 
ダイアナ・ヴリーランドを演じるのにふさわしい女優
『パリの恋人』ができるまで 
『ポリー・マグー お前は誰だ』とイーディ・セジウィック
もう一人のアンドレア 『ヴォーグ』のヴリーランド時代
エロティックなファッション写真と70年代 
ミラベラからアナ・ウィンター時代へ 
ファッション・マガジンが教えてくれること
 
第二章 『恋は邪魔者』の文化史
60年代のセックス・コメディのイマージュにあふれた『恋は邪魔者』
『夜は楽しく』と『恋は邪魔者』 『恋は邪魔者』のもうひとつの元ネタ作品
『セックス&ザ・シングル・ガール』の衝撃 元祖「お一人様」のカリスマ
『MAD MEN』の女たち
『大都会の女たち』と『ザ・ベスト・オブ・エブリシング』
「SATC」と『プラダを着た悪魔』のオリジン
ザ・ベスト・オブ・エブリシングを求めて
摩天楼から墜落する女たち トライアングル・シャツ・ウエスト工場火災
セルフ・ヘルプ本のヒロインたち
 
第三章 「ゴシップガール」の文化史
四人のヒロインによる「ザ・シティ」のちず
アッパー・イーストのセレブ高校生たちの世界
「ゴシップガール」と「SATC」の接点
アッパー・イースト・サイダーたちの告白
本当のプレップの世界を描いた『メトロポリタン』
元祖アッパー・イースト・サイダーの物語『無垢の時代』
ビューティ・サロンはバトル・フィールド
『ザ・ウィメン』の作者、クレア・ブース・ルース
クレア・ブース・ルースのライバル 「ゴシップガール」たち
元祖ゴシップ・「ガール」トルーマン・カポーティ
地下に潜ったゴシップ・ガール
 
第四章 キャリーとホリーの文化史
五番街から歩いて帰る女たち ふたりのホリー・ゴライトリー
ホリー・ゴライトリーたち その1-スワンたち
ホリー・ゴライトリーたち その2-モデル、ゴシップ・ガール
ホリー・ゴライトリーたち その3-マリリンとオードリー
アンディ・ウォーホルのホリー・ゴライトリー
スタジオ54のイット・ガール
キャンディス・ブシュネル≠キャリー・ブラッドショー
キャリー・ブラッドショーとは誰か ゴシップ・ガールとしてのキャリー
地方出身者としてのキャリー キャリーの財布の中身
「ヴォーグ」とキャリー ミスター・ビッグとは誰か
さよなら、キャリー・ブラッドショー
 
終章
 
あとがき
==================================================

 

 

【関連ページ】

新刊について | Romantic au go! go!

著者自身のブログでの紹介。
ちなみに僕もいつも拝読してます。
 

Girls & The City

本書のための参考動画・画像集。
在りし日のシャロン・テート、ディアナ・ヴリーランドの映画(超かっこいい!)、激シャレオツなトルーマン・カポーティ、『プラダを着た悪魔』の編集長のモデルになったアナ・ウィンターの写真も!
 

Amazon.co.jp: イー・イー・イー: タオ・リン, 山崎 まどか: 本

山崎氏が翻訳した小説のamazonでの紹介ページ。
動画で山崎氏の美しい手と指が写っています。
 
 
【関連記事】

女性でも少女でもなく、不気味に進化する「女子」という存在


 

『ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』太田出版


 

『ファッションは語りはじめた 現代日本のファッション批評』フィルムアート社


 

ヘルタースケルター公開目前!原作者、岡崎京子の世界を徹底研究


 

ハーゲンダッツの名前の由来を知っていますか?『アイスクリームの歴史物語』


 

『ニューヨーク 地下都市の歴史』東洋書林


 
 
 
 
==================================
【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================
==================================

 
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。

コメント

コメントをお寄せください。

コメントの投稿

コメント(必須)