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生死の曖昧な世界に艶めかしいキャラクターを描く、新鋭ひよどり祥子

死人の声をきくがよいが刊行された。
 
死んだ人間の姿が見える主人公の岸田は、殺されてしまった幼馴染「早川さん」に導かれて、不気味な事件に巻き込まれる。短編形式で描かれる岸田の受難、彼は果たして生き残れるのか?そして、「早川さん」は成仏できるのだろうか?
本書の作者「ひよどり祥子」は、すでに闇夜に遊ぶな子供たちなどで注目を集めているマンガ家「うぐいす祥子」の別名義。
 

 
巻末にある、伊藤潤二・高橋葉介・押切蓮介・三家本礼という、錚々たる怪奇漫画家たちによる「推薦の言葉」が豪華だ。名前があがっているマンガ家たちの作風を、おそらくそれとわかるようにさりげなく作中で引用しており、どこに誰の作風が参照されているのかを探りながら読むのも楽しい。
押切蓮介が「”死”に溢れているのに”生”が活き活きしている」と書いているとおり、ひよどり祥子の描く世界は「幽霊」がずっと傍らに立っている生死の境が曖昧な世界だ。おそらくそれを指して伊藤潤二は「ホラー湿度94%」「日本の怪奇漫画の湿気がここにある」と書いたのだろう。
 
なお、本書収録の「番外編 岸田と早川」にあるように、作者は「怖くない少女」を描くこともできる。そこできっと担当の編集者が「ライトノベルみたいに可愛い女の子がたくさんでてきてキャッキャウフフみたいな作品を描いて」と言い出したのだ。
ただし「それをホラー漫画家が描いた感じで」と付け足してしまったのが、本書の業の深さ、あるいは作者の業の深さだと言える。
 
普通に可愛い女の子たちが作るハーレムでキャッキャウフフという内容の作品、ホラーが苦手な人にも広く受け入れられたと思う。
幼馴染の幽霊=「早川さん」をはじめ、セクシーな養護教諭の先生、高慢な女子高生、美大生の従姉、さらには美人なお母様、霊能アイドルまで登場し、主人公の岸田のまわりはハーレム状態と言えなくもない。そして彼女らの可愛らしさといったら堪らないものがある。
伊藤潤二と高橋葉介と押切蓮介と三家本礼(彼らも怪奇要素なしで描かせたら普通の作家以上に艶かしい絵を描く)から少しずつエッセンスを抜き出して、独特のフィルターにかけたような絵柄で描かれる少年少女たち。
本書の表紙だけでは、この作者の魅力が伝わりにくいと思うので、「うぐいす祥子」名義で既に刊行されている『闇夜に遊ぶな子供たち』の表紙を紹介しよう。

お分かりいただけただろうか。
 
「怪奇漫画に描かれる人物の艶めかしさについて」というテーマは、死を前に生命の躍動が際立つという当たり前の構図が引き合いに出されるだけかも知れない。それにしてもこの作者の描く湿度のある世界、そこに生きる少年少女(あとお母様)の色っぽさは何なのだろうか。今後も彼女には注目していきたい。
 
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当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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