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真の主役はいつも闇の英雄だ!アメコミ映画ダークヒーロー徹底ガイド

『ダークナイト・ライジング』のアン・ハサウェイが演じたキャットウーマンの素晴らしさは、間違いなく映画史上に残る偉業だったわけだが、先日刊行されたアメコミ映画完全ガイド ダークヒーロー編も映画MOOK史に残る偉業だと言わざるをえない。
 
いつだって、英雄譚の真の主役はダークヒーローだった。
本書は、編集部の溢れ出て止まらない猛烈な勢いの「ダークヒーロー」への愛情が詰め込まれた1冊。アメコミ映画とその原作コミックスを大量に紹介している。
 

 
「この原作者を見逃すな!」では、ウォッチメン』『フロム・ヘルのアラン・ムーアはもちろん、バットマン:ダークナイト・リターンズのフランク・ミラー、キック・アスそして近日公開予定の映画『アベンジャーズ』のベースとなった『アルティメッツ』のマーク・ミラー、さらにサンドマンのニール・ゲイマン、1冊も邦訳が出ていないけれど滅法面白そうなガース・エニス(子連れのやさぐれた娼婦がカネ目当てにヒーロー稼業に乗り出すThe Pro.とか…)まで紹介。濃すぎます。素晴らしい。

    

 
 
「日本語翻訳版バットマン・コミックス総ざらい」では、実際には総ざらいではないのだが、バットマンもののコミックスのなかから、入門にオススメとして高品質な6作品が紹介されている。
上掲の「この原作者を見逃すな!」で名前が出ていた『サンドマン』のニール・ゲイマンが原作を手がけ「バットマンの葬儀」が描かれるザ・ラスト・エピソード。この作品は、長年にわたって続いてきたバットマンシリーズならではの、年代ごとに異なるバットマンの相貌を描き分けるアーティストの技巧にも注目したい。物語のメタフィクション性も深い味わいを残す逸品。
 
ジョーカーに恋する小悪魔ハーレイ・クインというキャラクターを中心に据え、ポップ&キュートそしてちょっとエロ入りで描かれるマッドラブ/ハーレイ&アイビー
 
アメコミは通常フルカラーで描かれるが、敢えて白黒のみで描くという試みで、ジム・リーやフランク・ミラー、「ザ・ラスト・エピソード」のジョー・キューバート、そして日本からはなんとあの大友克洋が参加した短編作品集ブラック&ホワイトなど。

  

 

 
読み物での注目は、アメコミにアンチ・ヒーローが大量に登場し読者の支持を集めることになった、いわゆる「モダン・エイジ」について書かれた「Grim’n Grittyの時代」という文章。『ウォッチメン』のアラン・ムーアと、『ダークナイト・リターンズ』のフランク・ミラーによって切り開かれた、ヒーローが苦悩し、凄惨な暴力シーンがあけひろげに描かれる「大人向け」アメコミが擡頭した時代についての解説だ。
そしてそのまま、アメコミの歴史の中でスーパーヒーローたちがどのような死に方をしてきたのかを列挙した「アメリカン・コミックス トラウマ決定戦!」を読んでみて欲しい。また、業界自主規制基準によるアメコミ界最大のタブーである「セックス」を論じた、そのまんまのタイトルの文章「アメコミとSEX」も必読。

  
 

 
なお、バットマンの映画化シリーズのなかでもっとも評判の悪いジョエル・シュマッカー監督版バットマンを大いに擁護する、映画監督の中野貴雄氏による「バットマンはキャンプな世界がいちばん!」も面白い。「ダークナイトの青い幼稚さにくらべて、シュマッカー・バットマンは黒光りするぐらい幼稚」「女の子が考える”男って幼稚”の度合いなんてたかが知れている。男はもっともっと、計り知れないぐらいに幼稚なのだ!」「”アメコミ映画に収まらない深みがある”?”善とは?悪とは?ヒーロー映画の範疇を越えた哲学的考察がある”?そんなものは中学の時に買ったサングラスと同じようなものなんだよ!」と、終始ハイテンションである。

ものすごく幼稚で、だがそこが面白い!と言われるとなんだか魅力がわかるような気がするシュマッカー版バットマン。上掲の文章でもっぱら絶賛されている『バットマン&ロビン』の予告編はこちら。ノーラン版バットマン『ダークナイト・ライジング』でメインの悪役を張っていたベインも、ぜんぜん違う方向性のキャラ造形で登場。
 
このほか、ゴーストライダーから、「え、これもアメコミ原作だったの?」というヒストリー・オブ・バイオレンスダークマン』『コンスタンティン』『ウォンテッド』『エイリアンVSプレデターなど、名作映画・駄作映画のイメージが強くて原作やコミカライズがいまいち注目されていないものまでしっかりと、非常に力の入った紹介が続く。これがまた読んでいて涙が出てくるほど愛情が篭っていて素晴らしいのだ。
 

【関連書籍など】


 

目次
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ダークナイト三部作ついに完結!
『ダークナイト ライジング』徹底解剖
クリストファー・ノーラン版プレイバック
『バットマン ビギンズ』
『ダークナイト』
ジョーカー徹底研究!
 原作コミックスガイド/図解/名言集

コラム:
 バットマンの世界(漫画版/日本語吹替黒歴史/if…)
 日本語翻訳版バットマン・コミックス総ざらい
 映画ができるまで――ヒストリー・オブ・バットマン

40本超のアメコミ映画から迎える!
保存版!ダークヒーロー紳士録
『バットマン』
『バットマン・リターンズ』
 コラム:メイキング・オブ・『バットマン・リターンズ』
『バットマン フォーエヴァー』
『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』
 コラム:バットマンはキャンプな世界がいちばん!
『ブレイド』シリーズ
『コンスタンティン』
『クロウ/飛翔伝説』
『ダークマン』
『デアデビル』
『エレクトラ』
『フロム・ヘル』
『ゴーストライダー』
『ゴーストライダー2』
『ヘルボーイ』
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
『ジョナ・ヘックス』
『キック・アス』
『ルーザーズ』
 コラム:バーティゴ・コミックスとは?
『リーグ・オブ・レジェンド』
『パニッシャー』シリーズ
『RED/レッド』
『ロード・トゥ・パーディション』
『スコット・ピルグリム VS 邪悪な元カレ軍団』
『シン・シティ』
『スポーン』
『ザ・スピリット』
『スターダスト』
『スーパー!』
 コラム:君は『スーパー!』を観たか?
『怪人スワンプシング』
『300』
『30デイズ・ナイト』
『30デイズ・ナイト2:ダーク・デイズ』
『V フォー・ヴェンデッタ』
『ウォーキング・デッド』
『ウォンテッド』
『ウォッチメン』

《注目のダークヒーロー・クリエイターズ・ファイル》
アラン・ムーア/フランク・ミラー/マーク・ミラー/ブライアン・マイケル・ベンディス/ウォーレン・エリス/ガース・エニス/グラント・モリソン/ニール・ゲイマン

コラム
 アメトイの栄光と没落
 アメコミとバイオレンス
 本当は面白い『エイリアン VS プレデター』
 アメコミ映画とゴス・カルチャー
 アンダーグラウンド/オルタナティブ・コミックの歴史
 2013年以降のDC/マーベル映画はどうなる?
 アメコミのモダン・エイジ
 アメコミとSEX
 アメコミヒーロー・トラウマ決定戦

インタビュー
 寺田克也
 三家本礼
 ベン・ディマグマリュ(アメコミ着色師)

小野耕世「ダークヒーローの起源とその時代」
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【関連記事】

技術と美術の粋を尽くしたあの名車を堪能できる超ゴージャスな写真集


『バットモービル大全』を紹介した記事。
 

この夏はアメコミ映画ラッシュ!存分に楽しむための紹介本を読み比べ


すでに名特集の誉れ高い『BRUTUS』「沸騰!コミックヒーロー」特集、映画秘宝「『アベンジャーズ』完全攻略!」特集、そして今回取り上げた「ダークヒーロー編」のいわば前哨戦となるMOOK『別冊映画秘宝 アメコミ映画完全ガイド スーパーヒーロー編』を紹介した記事。「関連ページ」の項目から、アメコミ関連情報が辿れるように、リンクを充実させています。あわせてどうぞ。
 

『ウォーキング・デッド 』

ゾンビ流行が浮き彫りにする現実『ウォーキング・デッド』2巻


ゾンビもの大ヒット作『ウォーキング・デッド』の紹介記事。
 

絶滅した世界でヒーローたちが互いを貪り合う『マーベルゾンビーズ』


アメコミ界最狂と言われる『マーベルゾンビーズ』。ヒーローたちが死んで腐って互いを貪り喰らいまくります。マーク・ミラー原案+ロバート・カークマン原作+アーサ・スイダム装画+ショーン・フィリップス作画という豪華なメンツによる限界への挑戦作。
 
 

 
 
 
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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