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うおおおっ、ムシ喰いてぇ!ってなる。絶品珍品、昆虫グルメガイド

今回紹介する昆虫食古今東西は、「昆虫食というものが世界中でどのように受け入れられているのか」というテーマにした1冊。数年前に工業調査会から刊行されていた本を再発行したものです。
昨今の人口爆発とそれにともなう食糧難に対して、昆虫食が有効な解決策になるのではないか、と著者の三橋淳氏は主張しています。レシピもたくさん掲載されていて、だんだん自分も虫を食べたくなってくるから不思議です。
 

 
本書のまえがきには、食糧難に関連して次のようなエピソードが紹介されています。
 
しばしば大量発生して農作物に甚大な被害を与える「飛蝗」という種類のバッタがいるのですが、この飛蝗の大量発生時に、食い荒らされた農作物ではなくて、飛蝗の方を食糧にするということがあるそうです。
飛蝗の大量発生に際して、その害を食い止めるために殺虫剤を使うのですが、この殺虫剤の影響で、飛蝗を食べた人が中毒になったり死んでしまうというケースがありました。
もちろん、殺虫剤を使う側は危険な飛蝗を食べないように警告を出すのですが、農作物は食い荒らされているし、住民は他に食べるものがないのです。
ここで本書の著者は「バッタに限らず、多くの作物害虫はそれ自身食料となり得るのに、殺虫剤などにより多額の費用をかけて、防除している。たった14パーセントのタンパク質しか含まない作物を保護するために、50パーセント以上も良質なタンパク質を含む昆虫を殺しているのはもったいない」と書いています。
 
※ちなみに「飛蝗」の「蝗」の字は日本でも食材になるイナゴにも使われていますが、飛蝗とイナゴとは生物学的には別の種類のバッタだそうです。
 
なお、ユリイカ2009年9月臨時増刊号 総特集=昆虫主義では、実際の調理例と味について写真付きで紹介している企画がありますので、興味を持たれた方はそちらも御覧ください。

『昆虫食古今東西』のほうにも、巻頭にカラーでたくさんの調理例や、実際に昆虫を食べている人たちの姿が写真で紹介されています。こちらは一般的な日本人が見るとちょっとあまりにも生々しくショッキングかも知れませんので要注意。
 
さて、『昆虫食古今東西』では、まず人間の昆虫食が太古から続いていることを紹介します。
考古学的な資料やローマ時代の文献などから、昆虫食の古代史を明らかにしています。
人類は、太古の昔から、世界中のあらゆる文化圏で昆虫食の文化を育んできたのだということがよくわかります。
19世紀にも昆虫食に関する出版物が多く発行されており、なかでも「昆虫は栄養もあり、清潔なものが少なくないので、大いに食べるべき」と紹介しているものがあるというのには驚かされました。
※当然ですが、あらゆる虫が完全に清潔というわけではありません。自主的に昆虫食にトライする人は、調理法に十分注意してください。(なお、昆虫食の危険性についても本書では触れられていますので、ご参考にどうぞ)
 
このような、昆虫食の歴史やレシピに続いて、本書のメインとなる世界各国の昆虫食の紹介が始まります。…最初に取り上げられるのは日本の昆虫食。
イナゴやザザムシ、カイコガ、クロスズメバチなど、現在も日本で食べられている昆虫料理の数々。
「鯨を食べるのは日本の文化」と言う人達ならば、きっと同様に「昆虫を食べるのは日本の文化」と言って、これら衰退しつつある文化を守ろうと思うこと間違いなしの豊富な事例が紹介されています。それにしても、いろんな昆虫料理の缶詰があるんですね。カイコガの缶詰の存在には驚きました。
日本の昆虫食
商品化された昆虫料理の画像も掲載されているページを参考までに紹介。
…いちおう閲覧注意です。
 
そして日本の次に紹介されるのがアフリカ大陸の各国。
本書を読む限り、近代化にともなって徐々に廃れてきている部分もあるようですが、全体的に昆虫食文化が絢爛に華開いているように感じました。
「子供に食べさせると、その美味しさのトリコになってしまって食べ尽くしてしまう可能性があるから子供には食べさせない」という風習があちこちにあるのが気になります。どれだけ美味しいんでしょうか。
また、こんな記述もありました。「ロマミ地方では、しばしばバッタが大発生し、群飛が通った後では、作物はほとんど残っていないが、住民は、バッタを食べて栄養が取れるので、むしろバッタを歓迎している」。マジですか。
 
本書を読んでいると、昆虫のなかでもとりわけ美味しいとされている種類がいたり(逆にあまり美味しくないというものも当然紹介されています)、季節の風物詩として食べられていたり、各地の文化のなかに密着しているケースを多く知ることができます。正直なところ、まだ虫食には少し抵抗があります。でも、清潔なレストランで、腕のいい料理人に、「今夜のディナーのテーマは『昆虫』です」とか言われてコース料理にして出されたらかなり魅力的だなあと思いながらお腹を減らしている僕でした。
 
……などと思いながら本書を読み進めていたら、なんと自分で食用の虫を採集する方法、それを保存する方法、あるいはすでに流通している食用昆虫を入手する方法、さらには「近代化された大都市にも、片田舎の農村地帯にも、昆虫料理を食べさせるレストランは結構ある」ということで、日本を始め世界各国の「昆虫料理を食べられるお店」が紹介されています。
日本では東京都江東区住吉駅前にある「やき蛤」、愛知県瀬戸市の料理旅館「三宅亭」が紹介されています。
 
ともあれ、当ページ下部に目次を掲載しているのでそちらをご覧いただきたいのですが、とにかく凄い情報量です。290ページほぼすべて二段組。巻末には虫の名前による索引もついててすごく便利(?)。世界中の昆虫食が網羅されているので、外国文学や外国映画を楽しむときに舞台となる土地の昆虫食をチェックしてみるのも面白いと思います。
 
昆虫食と言えば、以前に僕が大好きなマンガ家の水城せとなさんの『黒薔薇アリス』を紹介したときに、作中で虫が登場人物の口の中に入るシーンがある、ということで「昆虫食ポータルサイトむしくい」なるサイトでレビューがあがっているのを見つけたときは感動しました。
それにしてもこのサイトでレシピも紹介されている『蝉のカスタードパイ』は写真も素敵でほんとに美味しそう。蝉はナッツの味がするらしいです。
 
なお、きたる8月2日には、本書の刊行を記念したイベントが催されます。
オーム社『昆虫食古今東西』刊行記念 三橋淳先生トークイベント開催! | 東京堂書店 最新情報
本書に興味をもった方は是非この機会に貴重なお話を聞きに足を運んでみましょう!
(僕は多分行きます)
 
昆虫食といえば、ブログ昆虫食彩館や昆虫料理研究会の活動で知られている内山昭一氏の書籍も要チェック。

  

 
【関連書籍など】


 

目次
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はじめに
 
■第1章 昆虫食概観
昔から行われてきた昆虫食
昆虫食の危険性
食物に混入する昆虫
飼料としての昆虫
昆虫料理のあれこれ
食用昆虫の栄養価
 
■第2章 日本の昆虫食
カゲロウ目
トンボ目
カワゲラ目
バッタ目
カマキリ目
カメムシ目
甲虫目
アミメカゲロウ目
トビケラ目
チョウ目
ハチ目
 
■第3章 アフリカの昆虫食
ナイジェリア
カメルーン
中央アフリカ共和国
コンゴ共和国
コンゴ民主共和国(旧ザイール)
ウガンダ共和国
タンザニア連合共和国
ザンビア
ボツワナ
ジンバブエ(旧ローデシア)
南アフリカ共和国
マダガスカル
アンゴラ
マラウィ
エチオピア
スーダン
シエラレオネ
リベリア
ベナン
ガボン
ケニア
ナミビア
ガーナ
 
■第4章 アジアの昆虫食
韓国
中国
台湾
モンゴル
ベトナム
ラオス
タイ
カンボジア
ミャンマー(旧ビルマ)
マレーシア
シンガポール
インドネシア
フィリピン
ネパール
インド
スリランカ
 
■第5章 中南米の昆虫食
メキシコ
ホンジュラスおよびニカラグア
西インド諸島
アマゾニア
ブラジル
コロンビア
エクアドル
ペルー
パラグアイ
ベネズエラ
ガイアナ(ギアナ)
スリナム
ボリビア
チ リ
アルゼンチン
 
■第6章 北米の昆虫食
アメリカ合衆国
カナダ
 
■第7章 オセアニアの昆虫食
オーストラリア
パプアニューギニア
太平洋諸島
 
■第8章 その他の国の昆虫食
イラン
イラク
サウジアラビア
トルコ
イスラエル
エジプト
モロッコ
ヨルダン
リビア
近東
イタリア
フランス
イギリス
チェコ
その他のヨーロッパ諸国
 
■第9章 食用昆虫の確保と流通
食用昆虫の採集
食用昆虫の保全
食用昆虫の養殖
食用昆虫の流通
 
■第10章 薬用昆虫
薬として食べられた昆虫
昆虫副産物・生産物
抗がん作用を持つ昆虫
 
おわりに
参考文献
昆虫写真・図索引
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【関連ページ】

アブラゼミはナッツ味?『昆虫食入門』 – HONZ

HONZさんでは内山昭氏の書籍を紹介。
孫引きになりますが「わたしたちが昆虫を食べないのは昆虫がきたならしく、吐き気をもよおすからではない。そうではなくて、わたしたちは昆虫を食べないがゆえに、それはきたならしく、吐き気をもよおすものなのである」というのは僕も同感です。

 

三橋『昆虫食文化事典』:昆虫食そのものから、それをとりまく古今の文化まで網羅した力作。 – 山形浩生 の「経済のトリセツ」

本書と同著者による、より踏み込んだ著作『昆虫食文化事典』を山形浩生氏が紹介。ほぼ絶賛です。
 

 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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