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日本を愛したイギリス人芸術家が素直に表現した優しく柔和な美しさ

「民藝」運動あるいは「民芸」運動という実践の伝統がある。「民芸品」といえば、旅先の土産物売り場などで普通に接することのできるものだ。
 
今回は、筑摩書房『日本民藝館所蔵 バーナード・リーチ作品集』と、この「民藝」運動について概説したい。
バーナード・リーチは、19世紀末、香港のイギリス人家庭に生まれ、幼年期から青年期を日本・香港・シンガポール・イギリスで過ごし、高村光太郎や柳宗悦と交流しながら、「民藝」運動に大きく寄与した作家である。
本書はその書名のとおり、このリーチの作品の写真をおさめた作品集だ。
 

 
民藝運動は、柳宗悦が大正時代にはじめたもの。日本や朝鮮半島の工芸品に「美」を見出し、文明開化から強まっていた西洋の絵画や彫刻にのみ「美」を認める風潮に反対する。
 
柳は『用の美』、つまり「日常の使用のなかにあらわれる美しさ」を賛美した。
西洋の美術にも造詣深く、実際に日本へ西洋美術を紹介する役割も担っていた柳は宗教哲学者でもあり、ウィリアム・ブレイクなどのイギリス文化にも詳しい人物だった。
 
19世紀末からイギリスで新しい思想として提唱されていた、社会思想家でデザイナーでもあるウィリアム・モリスらの「アーツ&クラフツ」運動に共感した柳は、当時の日本で失われつつあった手工芸の文化を評価する言説を展開したのだ。
 
今回紹介するバーナード・リーチは、イギリス人でありながら生涯の多くの時間を日本で過ごし、柳の友人として、作陶を中心にこの「民藝」運動に深く関わった。また、当時世界でもっとも進んでいた日本の陶芸を、六代目乾山に学び、イギリスに窯を開くなど、国際的に活躍した。彼は、東西の文化のかけ橋となることを願い、みずから実践していたのだとも言える。
 
本書に収録された柳のリーチ評「リーチの位置」には、「優しい柔和なものが多い」「力んだものや、えばったものや、強さ荒さを表に出したものはない。華々しいものではないから、或ものは見栄えがしないかもしれぬが、併し美しさを素直に現す」と書かれている。読者は、本書におさめられた作品のいずれをみても、確かな技術に裏打ちされていながら、個人主義的な野心や奢りの感じられない、穏やかでユーモラスな佇まいを感じることができるだろう。
 
【関連書籍など】


 

目次
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前期 一九〇七‐一九二〇年
中期 一九二〇‐一九四五年
後期 一九四六‐一九七三年
 
刊行によせて
リーチの位置 柳宗悦
バーナード・リーチの人と作品 鈴木禎宏
The Unknown Craftmanのこと 水尾比呂志
図版目録
バーナード・リーチ年譜 鈴木禎宏
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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