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この夏はアメコミ映画ラッシュ!存分に楽しむための紹介本を読み比べ

今年の夏は、アメイジング・スパイダーマンダークナイト・ライジング、そしてアベンジャーズと、アメコミ原作映画の猛攻勢が予定されています。(来年は更に『スーパーマン』『アイアンマン3』なども控えている、とのこと)
 
このうち『アメイジング・スパイダーマン』は6/30に封切られ、既にあちこちで高く評価されている。7/28公開予定の『ダークナイト・ライジング』は、前作となる『ダークナイト』や、オリジナル作品の『インセプション』でも成功しているクリストファー・ノーランが監督するということで注目を集めています。また最後に挙げた『アベンジャーズ』は8月中旬公開。個別に活躍しているキャプテン・アメリカ、アイアンマンたちによって結成された同名のヒーローチームを主人公にした作品で、これも既に公開されているアメリカ本国での評判がきわめて高く、映画好き・アメコミ好きの間で公開への期待が膨らんでいる状況。
 
これに先駆けて、雑誌『BRUTUS』では「沸騰!コミックヒーロー」という特集を組んでいます。また映画秘宝では「『アベンジャーズ』完全攻略!」という特集を組み、また別冊映画秘宝 アメコミ映画完全ガイド スーパーヒーロー編も刊行。映画をより深く楽しむための企画が目白押しです。
 

    


 
『BRUTUS』の特集では、まず映画評論家の町山智浩氏によるざっくりとしたアメコミ史の概説を見開きを掲載。これが要点をバシッバシッとおさえにおさえた内容で、広大なアメコミ・ヒーローの物語と産業の両方における歴史、特に主要キャラクターたちの位置づけが明快になります。その裏ページにはアベンジャーズに関連するキャラクターたちの、イラスト付きの詳細な相関図が。これも読み応えのある素晴らしい内容。いやー、「最大の武器は備忘。多くのヒーローたちを虜に」とここで紹介され、映画ではスカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドウがやっぱりいちばん素敵な気がしますね。まるで峰不二子です。
 
そして、この『BRUTUS』の記事では、「アメコミの読み方」と題して、次の4本柱をおさえることでもっと楽しくなる、と解説。挙げられている4本柱とは
1)キャラクターを読む
2)アートワークを楽しむ
3)時代を感じ取る
4)構造を知る

 
「アメコミのヒーローは苦悩する」という書き出しで始まる「キャラクターを読む」は、主にアベンジャーズのメンバーであるキャプテン・アメリカ、アイアンマン、スパイダーマン、ハルク、そしてX-MENたちが、どのような苦悩を抱えているのかを概説。精神科医の名越康文氏による解説が読みやすくて、これも初心者にオススメ。
 
「アートワークを楽しむ」では、同じキャラクターを何世代にもわたって多くの作家が描き継いでいくというアメコミ最大の特徴を、主要な「アーティスト(アメコミでは作画担当者をこう呼ぶ)」を挙げながら紹介。これは嬉しい。
アメコミが世界中からいろんなタッチの「アーティスト」を発掘して起用することで、どんどん新しくなっていることなども興味深い。『BRUTUS』の記事では、1977年フィリピン生まれのレイニル・ユーが挙げられているが、日本出身、ヨーロッパ出身のアーティストもいるし、それぞれの影響を受けて色んなタッチが入り乱れているのを嗅ぎ分けるように読むのもアメコミの非常に魅力的な読み方なのです。
 
「時代を感じ取る」では、戦争・政治・社会問題・セクシャリティの問題など、時代を映す鏡のようなエピソードを挙げ紹介。
「構造を知る」では、「アベンジャーズ」が登場する問題作シビルウォーを例に挙げながら、「アベンジャーズ」のように、もともと異なった出自だったはずのヒーローたちがともに戦う「クロスオーバー」というシステムについて解説が試みられています。
なお『シビルウォー』は、ヒーローたちが政治的な意見の対立によって2派に分裂し、たがいに死闘を繰り広げるというもの。史上最大規模のクロスオーバーでもあり、「アベンジャーズ」が中心的に登場していることもあり、今回の映画で「アベンジャーズ」に興味を持った人にもぜひ読んでもらいたい作品です。
 
『BRUTUS』は全体的にアメコミへの豪華絢爛な入門書といった内容ですね。
 
 
映画の方にフォーカスしたのは「映画秘宝」の「『アベンジャーズ』完全攻略」特集。
映画雑誌らしく、監督のジョス・ウェドンさんの紹介から特集は始まります。
ちなみにウェドンさんは大ヒットドラマ『バフィー』を手がけた御人。また、悪評高いエイリアンシリーズのなかでももっとも忌み嫌われているジャン=ピエール・ジュネ監督の『エイリアン4』の脚本も担当。「あれはあれでアリ」と必死に擁護しようとする映画秘宝のライターさんに僕は強く共感しました。
ウェドンさんはアメコミの原作も手がけているとのこと。

  

 
『アベンジャーズ』の前作にウェドンさんが監督を担当した『セレニティー』も気になります。

 
特集とは関係ないけど、宗教学者の島田裕巳氏の著書映画は父を殺すためにあるが刊行されていることをこの号で知りました。『BRUTUS』の特集冒頭にビシッとした語りを寄せていた映画評論家の町山氏も影響を受けたという島田氏の宗教学的な映画論。内容もさることながら、表紙がカッコいいですね。

 
 
そして、映画にもアメコミにもどちらにもマニアックな愛情を注いで作られたのが『別冊映画秘宝 アメコミ映画完全ガイド スーパーヒーロー編』(ちなみに7月下旬には『ダークヒーロー編』の刊行も予定しているとのこと。非常に楽しみです)。
一見すると、『アメイジング・スパイダーマン』と『アベンジャーズ』の解説にとどまっているようにみえて、それぞれの関連作品(サム・ライミ版『スパイダーマン』はもちろん、原作の歴史解説、ベストエピソードの概説)、各登場人物から、『スーパーマン』や『X-MEN』の原作から歴代映画化作品まで幅広く紹介する一冊です。
『BRUTUS』に掲載されているのとはまた違った切り口で作られた『アベンジャーズ』のキャラクター相関図も掲載されているので、見比べてみても面白いでしょう。
 
この本は「ガイド」と銘打たれてはいますが、実際のところ内容が盛り沢山過ぎでガイドどころか、この世界に迷い込むためにあるような感じすらしてしまいます。
 
たとえば「スパイダーマンの世界」という企画。
池上遼一氏による一部ではコアなファンを持つ劇画化『スパイダーマン』にはじまり、単行本化すらされていない『ゲームセンターあらし』のすがやみつる氏による『スパイダーマン』、そして小学生が主人公の「コミックボンボン」に掲載された『スパイダーマンJ』までを紹介する「スパイダーマン 漫画の世界」。そしてスパイダーマンのゲーム、アニメ、アトラクション、果てはミュージカルに至るまで触れられていて、「スパイダーマンだけでこんなに広大な世界があるんなら、スーパーヒーローが集結してるアベンジャーズとかどうなってしまうんだよぅ!」と嬉しい困惑が待っていること必至です。

 
また、本書に収録されている「アメコミ映画前史」も面白い。1978年に公開された『スーパーマン』以前の、長く険しい「アメコミ映像化(主にテレビドラマ化)」の苦難の歴史を三段組3ページにわたって解説。
それからそれから、巻末の「スーパーヒーロー映画カタログ」も圧巻。『レトロヒーロー部門』(グリーン・ホーネットやディック・トレイシーなど)、『SFヒーロー部門』(メン・イン・ブラックやタンク・ガールなど)、そして『ギャグ・パロディ部門』(マスク、Gガールなど)から『どうぶつ・アニメ部門』『オリジナル・ヒーロー部門』まで幅広く紹介。『Mr.インクレディブル』も『アンブレイカブル』も紹介されています!
 
 
 
【関連書籍など】


 
 
【関連ページ】
特別企画 :アメリカン・コミックスの歴史 | 瞬きて、視覚
超早足でアメコミの歴史を辿る企画。上掲の『BRUTUS』の町山氏の文章よりももう少し踏み込んだ内容。これも読みやすくて非常に簡潔にまとまっているので、とりあえず読んでみてください。
 
映画『アヴェンジャーズ』日本公開に向けてのマニフェスト - The Red Diptych
映画『ダークナイト』に関する補足(主に小田切博さんへの応答) - The Red Diptych
アメリカ映画史から『アベンジャーズ』の見所をまとめてくれているブログエントリ。筆者の方がどうしても映画『ダークナイト』が許せないらしく、後半は『ダークナイト』批判になっています。これはこれでバットマン愛に溢れていて勉強になります。そしてそれに対して、アメコミ研究者の小田切博氏とコメントの応酬が発生。これも読み応えあります。
 
『ダークナイト』トリビア - Togetter
『ダークナイト』の周辺情報が満載。
 
ダークナイトの奇跡 – 伊藤計劃:第弐位相
故・伊藤計劃氏は無類の映画好きとしても知られていた。その彼が「自分の魂にぴったりくる映画」と断言する『ダークナイト』。伊藤氏はアメコミを指して「悪」という表象について、不断に思考し続けてこなければならかなかった特異なジャンルと書いています。
 
『ダークナイト』~苦悩映画の最高傑作: たけくまメモ
竹熊健太郎氏が同年に公開された『スピードレーサー』を問題作と書いていますが、僕もあれは問題作だったと思います。それはさておき、このページで竹熊氏が語るように、『ダークナイト』でバットマンは、敵のジョーカーによって「スーパーヒーロー物が本質的に内包している矛盾」を容赦なく指弾され、苦悩します。

※映画『スピードレーサー』予告編
 
超映画批評『ダークナイト』97点(100点満点中)
まさに大絶賛。
 
【関連書籍】
キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ
つい先日刊行された一冊。
アベンジャーズのブラック・ウィドウも素晴らしいのですが、アメコミ界の峰不二子といえばむしろこっちのキャットウーマンのほうが正しいかも知れません。『ダークナイト:ライジング』にも登場するというキャットウーマン。
本書でもその魅力を振りまいています。

 
バットマンVS.ベイン
『ダークナイト・ライジング』での悪役になる「ベイン」が登場するエピソード。7月13日発売予定。

 
バットモービル大全
バットマンの足となり、ゴッサム・シティを疾走するバットモービル。その情報を満載した大型本とのこと。7月13日発売予定。

 
 

バットマン:アーカム・アサイラム 完全版


『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーの元イメージになったジョカーが描かれていると言われている作品。
ヒーローもののアメコミのなかでもとりわけ「アート」っぽくて近寄りがたいとも言われている。美術・オカルト・哲学とか心理学好きな人に強くオススメ。正直ヤバいです。
それにしても表紙のジョーカーの顔がハンパなく怖いですね。

※ゲーム化もされている『アーカム・アサイラム』。ゲーム版も好評とのこと。
 

ウォッチメン

バットマン:ザ・キリング・ジョーク

  

『ウォッチメン』は、『アベンジャーズ』にも通じる「ヒーローチームもの」の作品。暴力大国アメリカの暗部に踏み込みまくった傑作。作者アラン・ムーアはバットマン:ザ・キリング・ジョークでバットマンシリーズの原作を担当しました。イギリス・ロンドンを舞台に、その魔都的な側面を陰鬱きわまる物語に描き出したフロム・ヘルも有名です。

※映画『ウォッチメン』予告編
 

キック・アス

シビルウォー

  

『アベンジャーズ』や『ウォッチメン』のような、ヒーローチームものの極北を描くのが『キック・アス』と『シビルウォー』のフランク・ミラー。『キック・アス』は映画化もされ、その出来の良さで知ってる人も多いかも知れない(原作は更にシリアスなので、未読の人は是非)。なんのスーパーパワーを持たない、いち庶民の少年を主人公に、正義のために闘うとはどういうことなのかというテーマを描く。そして文字通り「アベンジャーズ」が登場し、上掲の『ウォッチメン』のようにアメリカ合衆国の法律とヒーローたちが対峙することになるのが『シビルウォー』。

※『キック・アス』予告編
 

ウォーキング・デッド

マーベルゾンビーズ

  

アメコミ界の2大勢力だったDCコミックスにもマーヴェルにも属さない、クリエイターたちによるギルド的な会社「イメージコミックス」から刊行され、現在の世界的なゾンビブームの象徴のようにヒットしている『ウォーキング・デッド』シリーズ。テレビドラマ化もされ、その高い完成度は日本人も認めるところ。
さて、ヒーローチームものの極北が『シビルウォー』だとすれば、それを更に超越してしまったのが『マーベルゾンビーズ』。上掲の『キック・アス』『シビルウォー』の原作者であるマーク・ミラーが原案、そして『ウォーキング・デッド』のロバート・カークマンが原作を担当しています。完全にネタものの作品ですが、キワモノ好きにはオススメです。グッチョグチョです。

※ドラマ『ウォーキング・デッド』の予告編。グロ注意。
 

ゴーストワールド

スコット・ピルグリム』シリーズ

  

スーパーヒーローばかりがアメリカン・コミックスではない、というのは、『キック・アス』が青春マンガとしても優れていたことを考えれば理解されるところでしょう。『ゴーストワールド』と『スコット・ピルグリム』シリーズは、どちらも映画化されヒットした人気作。オススメです。
 

小野耕世『アメリカン・コミックス大全

ちなみに僕がアメコミに入門するときに参考にしたのは、海外漫画の日本紹介の第一人者である小野耕世氏のこの本。
本人があとがきで認めているとおり、「看板に偽りアリ」で、「大全」にはなっていないのだけれど、軽快な語り口で書かれるエッセイ風の文章が多いので、アメコミに詳しくなくても概観をつかむことができます。
 
 
【関連ページ】

Superman: Red Son – good reading

アメコミ映画とは直接関係ありませんが、スーパーマンがアメリカではなくてソ連を舞台にしていたら?という設定の作品があるそうです。
ソ連版のバットマン?も登場して…これはやばい。邦訳が待ち遠しい(邦訳されるのか?)

赤過ぎるだろこれJK 
あとスーパーマンの胸のマークがソビエト連邦の国旗のアレになってるのがかっこいい。
ちなみに『キック・アス』のマーク・ミラーによる仕事です。
 

この夏はスマホで遊ぶアメコミヒーローが熱い! | アプリ★ゲット|Androidレビュー&ニュース

友人の今井晋君によるアメコミ関連スマホゲームのまとめ。
「Batman Arkham City Lockdown」はかなりやってみたい。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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