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筋金入りのおもしろ数学者が「数」の魅力を歌にのせて語っちゃう

今日紹介する、数学者の加藤和也氏の素数の歌が聞こえるは、「数論」という数学のマニアックな理論を歌にのせて語る1冊。いわゆる解説本ではないのが面白いです。
かつて、研究の山場にさしかかったときに半裸で外を歩き警察のお世話になったことがあるという筋金入りのおもしろ数学者、加藤氏によるやさしい語り口が非常に魅力的で、ぜひ読んでみて欲しいと心から思う内容。
 

 
数学の面白さを紹介する本としては、最近「数学×萌え」で爆発的な支持を得ている結城浩氏の数学ガールシリーズが有名です。僕もこのシリーズは大好きです。ただ、どうしても数学の理論の部分がわからなくて、ひたすら登場人物のミルカさんとテトラちゃんに萌えてるだけなのですが。
 
『素数の歌が聞こえる』が主題にしている「素数」とは、19とか9931といった、「1 と自分自身以外に正の約数を持たない、1でない自然数」のこと。
大人気マンガシリーズの『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する数多の個性的なキャラクターのなかでも、とりわけ人気の高いプッチ神父は、この「1と自分以外には割り切れない」という性質に孤高性を見出して、素数を愛しました。彼が作中で口にする「落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…」というセリフは名言として知られているし、たぶん本当に落ち着きたいときに素数を数える人は多いと思います。
 
さて、『ジョジョの奇妙な冒険』のプッチ神父もそうとうな変人ですが、本書を読む限り『素数の歌が聞こえる』の著者である加藤和也氏もそうとうな変人。この本は、このステキな変人であるところの加藤氏が、いかに数学的に世界を眺め、その感動に浸りながら生きているのかを、素人でも何となくわかるように書いてあります。
 
たとえば、
1-1/3+1/5-1/7+1/9-1/11+……=π/4
という式には、数学的にみて非常に「深い意味」があり、こういう深みのある式を指して「ゼータ」と呼ぶらしいです。このゼータというのがまったく僕にはわからないのですが、専門家が「人の心を高ぶらせる」というのがゼータの条件だ、と言っていて、しかもそれで「誰もが納得する」と書いてあります。
 
同様に、僕のような数学音痴にはぜんぜんわからない「p進世界」とか「類体論」といった用語が、非常に素朴な語り口で淡々と語られていきます。『数学ガール』と同じように、書かれていることはぜんぜんわからないのですが、何故か読めてしまう。
 
それでこのかなり難解な数学の話を、加藤氏はなんとよりにもよって日本昔話「鶴の恩返し」と混同します。「筆者は数学と日本昔話を混同しており」とご自身でも書いていらっしゃるので、ここは面白がって良いところだと思います。それにしても、その話を掲載した数学研究の報告集を読んで他の数学者が共感し、英語論文にまで入れるというのには恐れ入りました。
 
数学と文学と、そして詩と音楽の関係については、古代から連綿と続く歴史があって、そこに興味はあるのですがなかなか奥行きが深くて容易には近付けません。
 

※詳細はよくわからないのですが、数と天体と音楽的調和の理論に大いに貢献したヨハネス・ケプラーをテーマに作られた動画。加藤氏とはたぶん関係ありません。
よくわからなくても楽しめます。ああ、色々とよくわかればきっともっと楽しめるのに!悔しい!と思えます。
 
 
【関連書籍など】


 

目次
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はじめに 数のおもしろさ
序章 無限遠点は遠い。
  Ⅰ 素数の歌
第1章 宇宙が先か素数が先か
     p進数の歌 
第2章 素数の歌は愛の歌
     平方剰余の相互法則の歌
  間奏の章1 数論の現在
 間奏の章2 数論幾何の発展
  Ⅱ 恋する数
第3章 心高ぶるゼータのふしぎ
      ──岩澤理論の拡張について
 間奏の章3 類体論の一般化について
第4章 イデアル類群の喜び
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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