読書ガイド「本が好き!」が運営するニュースサイト

痛みや恐怖、生と死に対する想像力の限界に挑む『ハーレムエンド』

「アニメーション」という言葉は、精魂を意味するanimaに由来し、本来的に、命のないものに魂を吹き込むことを指す。チェコに住むシュルレアリストでもあり、高名なストップモーションアニメーションの巨匠でもあるヤンシュワンクマイエルの作品を観ると、まさに「命のないもの」がまるで生きているかのように動く不気味な面白さを楽しむことができる。
 
ところで、日本にはギャルゲーと呼ばれるゲームのジャンルがある。主に男性向けポルノゲームで、複数の女性キャラと関係を結び、エロティックなグラフィックを閲覧することを目的にプレイヤーはゲームを進めていく。一人のヒロインとの関係を関係させてロマンティックなハッピーエンドに落ち着くだけではなく、登場するすべてのヒロインに愛されたまま、ハーレムのような結末が用意されている場合がある。駕籠真太郎の新作のタイトルにあるハーレムエンドはこのような状態を指す。
 
さて、今回紹介する『ハーレムエンド』は、男性に復讐しようとする殺し屋であるヒロインたちと、彼女らを迎え撃つ、とあるアニメプロダクションの戦いを描いた作品だ。
 

 
少し前に公開された映画『キックアス』とその原作は、アメコミの世界にリアルな暴力の痛みや残酷さ、といった重みを導入しつつ爽快なアクションにしたてていたが、『ハーレムエンド』は似た構図でもって、アニメやゲームを取り巻く世界に陰惨な暴力を描いているといえるだろう。

 
そもそも、アニメやマンガ、ゲームに限らず、映画や小説など、あらゆる虚構において、人の生き様、死に様、そしてそこで経験される痛みや恐怖といったものが、どのように表現されうるか、というのは多くの作家たちが取り組んできた問題だった。
普通に考えれば、虚構内の存在に痛みはなく、普通の意味では命をもっていない「彼ら」が死ぬということはない。それにも関わらず、物語のなかで登場人物たちは痛みを感じ、恐怖を覚える様に描かれ、生き、そして死んでいく。そこにある痛みや恐怖、そして死と生は、いったいなんなのだろうか。
 
駕籠真太郎は、この問いに正面から答えはしない。しかし、作品内で登場人物に、現実の人間には到底許されない様な拷問をくわえ、殺し、その死体を弄び、その限界を追求する。そこに展開される限界の世界は、人間の、痛みや恐怖、生と死についての想像力の限界を垣間見せてくれる。
 

【関連書籍など】


 
 
 
 
==================================
【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
==================================
==================================
「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、
本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、
紹介させていただきたいのでBOOKニュース宛に新刊をぜひ送ってください!
↓宛先はこちら↓
〒333-0834
川口根岸郵便局留
Bookニュース 永田希

twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。
RSSフィード購読はこちら。

コメント

コメントをお寄せください。

コメントの投稿

コメント(必須)