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ゾンビもいいですが、吸血鬼も地味に流行っている気がします →『吸血鬼と精神分析』光文社

難解な精神分析理論を樹立したことで知られるジャック・ラカンをモデルにしたキャラクターと、フランス現代思想を代表するトンデモ理論家とも言われるジュリア・クリステヴァをモデルとしたキャラクターが登場し、ストーリーの本筋をなす国際諜報戦や連続殺人事件とはほとんど関係のない記号論的・哲学的・神学的な論争が延々と繰り広げられる800ページの大著、それが10月に光文社から発売された笠井潔吸血鬼と精神分析です。誰がこんなマニアックな作品を読むんですか?
「それは僕のような変態です」というのが回答になるのだと思うのですが、しかしこの本、ジュンク堂池袋本店では1回レジ前に平積みされていた注目の新刊でもあるわけで、「僕のような変態」もさほどマイノリティでもないのだなあと少しだけ感慨にふけってしまいました。
 
吸血鬼と精神分析 書影
 
話の大筋は、登場人物や設定の奇抜さから考えるとアクロバティックなところはほとんどなく、普通のミステリのように安心して読めます。
さすがに抽象的で難解なことで知られるラカン理論の解説のところは、そう簡単に読みこなせないのですが、数学ガールよろしく、難解な部分は読み飛ばしていいと思います。
主人公の女子大生ナディアと、名探偵的な役回りの日本人・矢吹駆との微妙な距離感を楽しむもよし、もう一組の主人公ともいえるナディアの父であるモガール警視とその相棒バルベス警部の掛け合いを読むもよし。
個人的にはクリステヴァの理論の骨子をとてもわかりやすく紹介してくれる良書です。
 
本書は、1979年のバイバイ、エンジェルで始まった矢吹駆シリーズの第6弾。
作者の笠井さんが参加している限界小説研究会の活動もとても面白いですが、実兄である名編集者の故・矢代梓さんの年表で読む二十世紀思想史と読み合わせることをオススメします。
 
それにしても、昨今の吸血鬼ブームはほんとうに興味深いです。
以前に黒薔薇アリスを紹介したときに「『マンガのキャラクター』の不死性のせいか、不死という設定はマンガで一番よく映えるのではないか」と書きました。マンガと違って視覚に訴えない分、あやふやな抽象概念や超自然的な存在を描写しても説得力を失わないのは小説ならではの特性を活かしていると言えるでしょう。
 
【関連リンク】

ブルガリアの博物館で「吸血鬼」の遺骨公開へ、100体以上発見 | 世界のこぼれ話 | Reuters

かつてブルガリアで行われた「吸血鬼狩り」の被害者の遺骨が発見され、このたび公開されることになったというニュース。
 

ニュース – 文化 – ブルガリアの吸血鬼、鉄杭と抜歯の意味 – ナショナルジオグラフィック

中世ヨーロッパでの吸血鬼進行についての記事。
なるほどー。
 
吸血鬼と精神分析 [著]笠井潔
 - 斎藤環(精神科医) – 書評 BOOK asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

ラカンの思想を紹介する著書で知られる斎藤環氏による書評。
 
ウラゲツ☆ブログ : ラカンが待望の文庫化!『二人であることの病い』講談社学術文庫
ラカンの初期論文集が文庫化されたというニュース。
関連書籍の書影多数。ラカンの写真が表紙になっている『パラノイア性精神病』『家族複合』の書影を見るかぎり、ラカンの風貌はかなり吸血鬼っぽいです。
 
「ドラキュラ」の作家ブラム・ストーカーの日記、100年の時を越えて発見される – GIGAZINE
「ドラキュラ」の作者ブラム・ストーカーの日記が子孫によって発見されたというニュース。
吸血鬼小説の手軽な概説としても読める良記事です。
 
魔女論 ~なぜ、空を飛び、人を喰うか~ – 本が好き! Book ニュース
ラカン派精神分析の治療論 理論と実践の交点誠信書房-編集者インタビュー – 本が好き! Book ニュース
僕の妹は漢字が読める(ホビージャパン)-ラノベの最先端?! – 本が好き! Book ニュース
言説、形象(ディスクール、フィギュール)法政大学出版局 – 本が好き! Book ニュース
 
・本が好き! オイディプス症候群
・本が好き! 探偵小説論序説
本書の前作となる矢吹駆シリーズ第5弾『オイディプス症候群』と、ミステリ論である『探偵小説論序説』は、第3回本格ミステリ大賞を小説部門と評論・研究部門とのそれぞれで受賞。
ちなみに『オイディプス症候群』は乙一のGOTHと同時受賞。『探偵小説論序説』は高山宏殺す・集める・読む 推理小説特殊講義ほかを抑えての受賞です。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々とし、現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
最近は映画『モテキ』にメルツバウが出てこなかったことが気に障りました。
秋田昌美の本の装丁をしていた宇川直宏は一瞬出てきてたのに!
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「BOOKニュース」では出版系のイベントからマニアックな新刊情報まで、本に関する情報を収集して紹介しています。
ユニークな本を出される出版社様、紹介させていただきたいので是非BOOKニュース宛に新刊を送ってください!
twitterアカウント(@honzuki_news)でもときおり呟いております。

乾物ブーム到来か 【新刊】『乾物と保存食材事典』誠文堂新光社

以前、ある友人の実家に突然おしかけていったことがあります。
優しい彼のお父さんは、当時極貧だった僕に海外旅行の土産にといって、「干しナツメ」をくれました。
口に含むとまず乾いた硬い皮があって、とても良い薫りがして、噛み締めると舌が痺れるくらい甘い味がしたことを今でもとてもリアルに思い出すことができます。
 
乾物と保存食材事典 書影
誠文堂新光社が10月に刊行した乾物と保存食材事典は、9月に東京堂出版から刊行された『乾物の事典』と同様、「乾物」を扱った事典。
 
450種類(1種のバリエーションも含め)近くの“乾物”の特長、栄養素、食べ方を事典的にカラー写真とともに解説する。
掲載種は野菜(山菜、キノコ:かんぴょう、切り干し大根、キクラゲ、干し椎茸、干しシメジ、山くらげ、ゼンマイ、干し芋、干葉、いもがら)、果物(レーズン、クコの実、干し柿、プルーン)、海藻(寒天、海苔、アオノリ、ひじき、あらめ、昆布、ワカメ)、魚介類(ふかひれ、干しアワビ、干しなまこ、干しえび、身欠きニシン、干貝、棒だら、氷下魚、塩クラゲ、鰹節、煮干し、ちりめんじゃこ、とば、スルメ、イカ徳利、干しダコ、干しヤツメウナギ)。その他のものとして、茶、高野豆腐、ジャーキー他を掲載。
 
冒頭で僕が突然「干しナツメ」の話をし始めたのは、この『乾物と保存食事典』で紹介されている「干しヤツメウナギ」を「干しナツメ」に見間違えたからなのですが、「これは砂漠で『命の食べ物』といわれているらしいよ」と言って「干しナツメ」をくれた、あの友人の父の言葉が僕の記憶違いでなければ、そのエピソードもこの本に記載されていてもおかしくないと思います。
 
【関連リンク】
@nifty:デイリーポータルZ:乾物を酒に漬けて焼くとヤバイ
以前にも紹介しましたが、あらためてもう一度ご紹介。
 
ラーメンと愛国講談社 – 本が好き! Book ニュース
日本の食文化史年表吉川弘文館 – 本が好き! Book ニュース
魚と人をめぐる文化史弦書房 – 本が好き! Book ニュース
むし学東海大学出版会 – 本が好き! Book ニュース
樹海の民 舟・熊・鮭と生存のミニマム法政大学出版局 – 本が好き! Book ニュース
風が変えた世界史: モンスーン・偏西風・砂漠原書房 – 本が好き! Book ニュース

高山宏氏『新人文感覚』全2巻完結記念イベント「知の風神・学の雷神 脳にいい人文学」開催

「食事中に蘊蓄を語ると罰金100円払う」というルールのある家庭があるらしい。蘊蓄は無粋なものとして、あたかもシモの話のような扱いを受け、ときとして排斥すらされる恐れがあるようです。
高山宏氏の語る、古今東西まさに縦横無尽の蘊蓄の嵐は、ただの蘊蓄とは大違いで、何故か飄々とした粋を感じさせるもの。
さすがに「学魔」と呼ばれる域に達した人の話芸は尋常ではないと思わされます。
 
そんな高山氏の最新刊となる『新人文感覚』全2巻の完結を記念して、羽鳥書店紀伊國屋書店の共催でトークイベントが開催されます。
 
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日  時|2011年11月12日(土) 19:00開演(18:30開場)
会  場|紀伊國屋サザンシアター(紀伊國屋書店新宿南店7F)
※同時開催:【紀伊國屋画廊】 高山宏 「学問はアルス・コンビナトリアというアート」展 (2011年11月10日~15日)
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詳しくは紀伊國屋書店お知らせページへ。
 
高山宏『新人文感覚1 風神の袋
風神の袋 書影
 
【関連リンク】
-CHUNICHI BOOK WEB-中日新聞・東京新聞に掲載された書評 話題の書籍を斬る!
 『 新人文感覚1 風神の袋 』 高山 宏 知の境界超える類推の魔術

S.キングダーク・タワーの訳者で、きみがアリスで、ぼくがピーター・パンだったころの著者の風間賢二氏による書評。巻末の「訳者あとがき」はアメリカでのゾンビブームの紹介にもなっていて面白いです。
 
・【新刊】ウォーキング・デッド飛鳥新社 – 本が好き! Book ニュース
風間賢二氏が翻訳を手掛けている。
 
ブックワーム特集 – 本が好き! Book ニュース
クジラ解体春風社 – 本が好き! Book ニュース

テーマ選書リスト「ウォール街を占拠せよ!若者たちの反乱」(大月書店)

ニューヨークの金融街を9月から占拠しているデモについて、実際に目の当たりにした知人は「空間を占拠する」という行為の持つ訴求力に感銘を受けていました。
 
さよなら、消費社会 書影
このデモ呼び掛け人カレ・ラースンの主著さよなら、消費社会の版元である大月書店は、サイト上で選書リスト「ウォール街を占拠せよ!若者たちの反乱」を公開しています。
詳細は大月書店お知らせページへ。
リンク先では、ラースン氏への主要各誌のインタビュー記事へのリンクや「『反乱』は何を要求しているのか」「日本で、世界で。呼応する『反乱』」、「『反乱』の背景にあるもの」といった小テーマで関連書籍が紹介されています。
 
【関連リンク】
ニューヨーク「ウォール街を占拠せよ!」デモの概要・様子【動画あり】 – NAVER まとめ
「ゾンビマーチの様子」など動画を多数紹介。
 
aliquis ex vobis : スラヴォイ・ジジェク – 民主主義と資本主義の結婚は終わった [完全版/日本語字幕]
先日ニコニコ生放送でウィキリークスのJ.アサンジ氏とも対談していたS.ジジェク氏がデモに参加したときの演説の日本語訳(字幕付き動画へのリンクもあり)

【新刊】『都城の系譜』京都大学学術出版会

1970年代に6万人近くあった商店街の歩行者通行量が30年を経て激減し、2000年代には1万人程度になってしまったという群馬県前橋市の駅前商店街。今では全国有数のシャッター街となり、「町おこし」のために1000人以上の参加者による巨大合コンを開催するなど様々な試みが展開されている。ライフスタイルや交通事情の変化、全国的な景気の低迷などの要因が考えられるが、都市計画の失敗も原因としてあげられるだろう。だが、どのようなモデルで計画すればシャッター街化を避けられたのだろうか。
ノーベル賞を受賞した経済学者クルーグマンの著書自己組織化の経済学の理論に基づいて、建築家の柄沢祐輔氏が提案している「中心が移動し続ける都市」とというプランは、かなり興味深い。「特定の区域を都市の中心部として決めてしまうと、周縁部が生まれて荒廃する」という経済的な必然を前提として、その前提を逆手にとり、「周縁地域が荒廃するなら、中心部を動かしてしまえばいいじゃないか」というモデル。都市が空間経済学的にみて必然として抱え込む格差の発生を、あらかじめ見込んでコントロールしようという発想である。
もっとも前橋市の場合は中心地じたいが荒廃してしまっている状態のため、動かしようにも中心地がない可能性もある。
 
ところで11月には、京都大学名誉教授で人文地理学者の応地利明氏による集大成的著作都城の系譜』(京都大学学術出版会が刊行される予定だ。
本書は、紀元前に遡る古代インドの計画都市=都城の思想から、古代インドと古代中国のグリッドパターンの計画都市に対する思想の比較、そして東南アジアと中国における計画都市の「バロック的展開」、長安でバロック化を完成させた中国の都城思想が日本を含む周辺地域にどのように伝播したのか、都城思想をもつアジアともたないアジア/都城思想とイスラーム世界の比較までを語る1冊。
 
都城の系譜 書影 (続きを読む…)

【新刊】『ラプンツェルと5人の王子』新書館

僕も王子だったら良かったな…と漠然と思わされました。
 
初めて当編集部宛にいただいたご献本です!ウィングス編集部様ありがとうございます。僕の好みの作品だったのでとても嬉しいです。
水城せとな黒薔薇アリスを先日紹介した関係でしょうか。
見た目年齢と実年齢の違いや、黒薔薇アリスにも共通する眠り姫のモチーフなど、共通点を多く見出せる1冊です。
共通点を多く見出せるというか、グリム童話のような民話には、現代の物語の多くが参照する「物語の原型」が見出されるといったほうが精確なのだと思いますが。
 
装丁は、薮内貴広イン・ワンダーランドのようなとても美しい色合い。
また影絵のように黒く挿入されている装飾も素晴らしいです。
ラプンツェルと5人の王子 書影
高橋葉介や奈知未佐子の作品が好きな人にはきっと響くと思います。
根っからの悪人が登場しない、微笑みに満ちた世界。それでも引き起こされる波瀾を優しく描いていて安心して読めます。
ジブリが配給したフランスのアニメ映画『キリクと魔女』で知られるミッシェル・オスロ監督の『プリンス&プリンセス』のことも思い出しました。SF風味はありませんが。
 
【関連リンク】
魔女論 ~なぜ、空を飛び、人を喰うか~ – 本が好き! Book ニュース
ドイツメルヘン街道 夢街道郁文堂 – 本が好き! Book ニュース
IDEA No.348 : 漫画・アニメ・ライトノベルのデザイン EXTRA誠文堂新光社 – 本が好き! Book ニュース
「日本語を使う人が選ぶSFとファンタジー」のランキングをtwitterで呼びかけてみました – 本が好き! Book ニュース
 
続・10月下旬発売コミックス情報!!|ウィングス編集部のブログ
編集部ブログでの本書の紹介。
 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
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【新刊】『日本人が知っておきたい森林の新常識』洋泉社

森メタルという音楽ジャンルを御存知で無い人はいらっしゃらないと思う。森ガールではない。森METALである。
このジャンルを知らないという無学な人に簡単に説明させていただくと、
ロック・ミュージックにおける悪魔崇拝趣味のひとつの行き着く先として森林信仰
(キリスト教の否定、ネオ・ナショナリズム、エコ志向などが合流している)、
いまや世界的な流行の結果各地で異形の進化を遂げているブラックメタルシーン内のある種の揺り戻し、
つまり、「反グローバリズム・反消費主義の現われとして生まれてきたジャンル」こそ森メタルなのだ。
 
森林信仰は遠い北欧だけのものではない。世界中に巨木信仰・山岳信仰が見出され、アニミズムにおける大きなジャンルとして森林信仰を挙げることができるだろう。
そこで今回紹介するのは日本人が知っておきたい森林の新常識洋泉社。10月26日ごろから書店に並ぶ予定とのこと。
日本人が知っておきたい森林の新常識 書影 (続きを読む…)

【新刊】『私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔』慧文社

源氏名って、元々は公家の世界で使われていたものだったということは知っていましたか?
かの有名な「源氏物語」にちなんで呼び名をつけたのが始まりで、最初は公家に使える女官に使われていたものが武士社会の大奥などでも使われるようになったそうです。それを遊郭などが真似たのが、現代の「源氏名」の使われ方の由来のようです。
僕もこのことを知ったのは最近です。
松本清張の遺作のひとつ神々の乱心に登場する女性がこの源氏名を持っているのですが、その人は同時に宮内庁の女官という設定。
現代の「源氏名」の使われ方しか知らなかったので驚いて調べてみたら上記のことがわかったという次第です。
 
この『神々の乱心』、当時の新興宗教の暗躍と、大正時代の有名な疑獄「大連アヘン事件」の影響を骨子にしています。
大連アヘン事件は、アヘン戦争でも知られる当時の中国に蔓延していた麻薬の取引に関する疑獄。この疑獄で、20世紀初頭の日本屈指の政治家と言われた原敬内閣が揺らいだと言われています。
今回ご紹介するのは、この大連アヘン事件で失脚した祖父を持つ著者が「渾身の筆を執る生身の伝記(出版社サイトより)」。
私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔慧文社
私の祖父 古賀廉造の生涯―葬られた大正の重鎮の素顔 書影
 
大審院検事・判事、法典調査会刑法起草委員として刑法学の第一人者となり、また貴族院勅選議員・植民地の統治監督、南満州鉄道・東洋拓殖の業務監督として「平民宰相」原敬の腹心として活躍した古賀廉造氏。
この古賀廉造氏は大連阿片事件の責任を負って失脚した一人で、著者は本書でその経緯をあらためて追う。
古賀氏と親交のあった陸軍大将の日記などの貴重な一次史料を調査、さらに自らの実体験や古賀一族の伝承をも交え、古賀氏の業績と生身の人物像を浮き彫りにした1冊です。
 
目次
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写真
まえがき
年表・系図
第一章 生い立ち
出自と両親
 古賀家の来歴と父・源吾
 母・チカと石田家
幼少期
 松永家との関係
 古川家と乳兄弟武一
佐賀の乱
上京、法学校入学
第二章 法曹界および政界での足跡
司法官としての経歴
 フランス・ドイツ留学
 刑法改正審査委員会
 大審院判事
刑法学者としての経歴
 著述と講義録
 厳罰主義を旨とする法思想
第一次西園寺内閣の警保局長
 内務大臣原敬との親交
 警保局長としての業績
 第一次警保局長の免官後
 社会主義活動家との関わり
第三章 広東紙幣偽造事件
事件の経緯
 事件の発覚と判決
審理の争点と事件の評価
事件の背景と関連人物
 大アジア主義と梅屋庄吉
 宇都宮太郎
事件の後
第四章 大連アヘン事件
当時の植民地政策とアヘン専売制
拓殖局長官就任の背景
事件の詳細
 事件発生の経緯
 大連取引所背任問題
 「複雑怪奇」な事件の審理
 判決
事件の真相
 背任罪は認められず
 事件に関する原敬および政友会との関係
 朝鮮軍司令官宇都宮太郎と三・一独立運動
 三井物産の関与と長男邦夫
 廉造の政治家としての資質
 現代での世評
結び
第五章 弁天町の家と古賀家の人々
屋敷の普請
古賀家の人々
 廉造の妻・美刀
 妹・宮内ツル
 長男・邦夫
 邦夫の妻・興代
 次男(父)・隆夫
 隆夫の妻(母)・鶴(資子)
 三男・郁夫
 長女・サヨ、次女・千穂
 三女・喜久
 四女・須磨、四男・陶夫
 その他の同居人達
第六章 御宿の別荘での晩年
祖父の思い出
 御偉いお祖父様、お祖母様
御宿の家の来歴
 不毛の砂丘に大普請
 大きくなって還ってきた家
晩年の社会活動
 御宿の最高の名士
 用心棒・江口氏
 日中戦争時の国家改革を提言
最晩年
 
付録 史料編
史料1 法学志林 第三九号 八十「経歴談」
史料2 感化院の目的及其事業 古賀廉造君講演
史料3 現職時代の世評および小著述
史料4 警保局長の椅子
史料5 外国紙幣偽造事件ノ古賀ニ関スル事実ノ真相
史料6 広東紙幣偽造事件関連記事
史料7 奇物凡物―古賀廉造
史料8 宇都宮太郎宛古賀廉造書翰
史料9 夫人花くらべ(五の一)
史料10 真崎甚三郎宛古賀廉造書翰
 
参考文献一覧
あとがき
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【関連リンク】
『松本清張研究』第十一号 特集 『神々の乱心』の背景  ―― 未完の遺作を解読する
松本清張記念館研究誌-コンクール・研究など 事業のご案内-松本清張記念館公式ウェブサイト
 
原 武史氏×福田和也氏×藤井康栄氏による特別対談「二大聖域 -宗教と宮中- に迫る渾身の遺作を読む」を収録。
松岡正剛氏、森光一氏も寄稿しています。
 
華族画報 吉川弘文館 – 本が好き! Book ニュース
「大東亜共栄圏」経済史研究 名古屋大学出版会 – 本が好き! Book ニュース
帝国崩壊とひとの再移動 (アジア遊学 145) 勉誠出版 – 本が好き! Book ニュース
植民地建築紀行: 満洲・朝鮮・台湾を歩く (歴史文化ライブラリー) 吉川弘文館 – 本が好き! Book ニュース
 
本が好き! 松本清張の「遺言」―『神々の乱心』を読み解く
 
 
 
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【新刊】『黒薔薇アリス6』秋田書店

教え子との恋に悩んでいた28歳の晩生女性教師の魂が、見た目16歳のオーストリア貴族の少女(本当は116歳)の身体に宿って、127歳のイケメン(見た目は27歳)との恋に揺れる。
…どんな年の差恋愛なんだ。この一文だけ読むと完全に頭がおかしい感じがしますね。
 
入り組んだ恋愛物語を描かせたらたぶん当代右に出る者なしの水城せとな氏の現行連載3作品のうちのひとつ黒薔薇アリス秋田書店)最新刊が10月に発売された。
黒薔薇アリス6 書影
 
この第6巻で第一部完とのこと。
単に設定が複雑なだけではなくて、盛り沢山な設定をいちいち細やかな伏線にしていく手腕はさすが。
ヴァンパイアものといえば月刊コミックバーズに連載されているQUO VADISも無視できません。
『QUO VADIS』が壮大なスケールで展開する歴史スペクタクルだとすると、『黒薔薇アリス』は数人の閉じた関係を描いたものだといえます。
不死の者としてのヴァンパイア、そして独特の「繁殖」というシステムが、閉じている筈の人間関係を突き破って、100年間の何人もの人々の関係を結び付け積み重ねていき、やがて、冒頭に上げたような荒唐無稽な設定が説得力を帯びてしまうという物語。
愛とは何か、人とは何か、という、ともすればとても陳腐になってしまうテーマを真正面から扱いながら、フィクションならではの荒唐無稽な設定に説得力を与えてしまう。
実は真正面から問われているように見える「愛」や「人間」とは何かという問題よりも、作者にとって重要なのは、愛のようで愛かどうかわからない、人のようで人かどうかわからない、大上段に構えられたお題目に対して堂々と向き合うときの怯えた感覚や、その怯えを共有することで生じる、簡単には名付けられないような不思議な連帯感(あるいはその連帯感への希求)のほうなのではないかと思ってしまいます。
 
【関連リンク】
・本が好き! 書評 QUO VADIS~クオ・ヴァディス by nagata_n
知られざる名作『QUO VADIS』についての拙文です。参考までにご笑覧ください。
そういえば成人女性の魂が少女に宿っているという設定まで似てますね。
 
『黒薔薇アリス』 : 昆虫食ポータルサイト 「むしくい」
「今最も口に虫を詰め込んでいる少女マンガ!」として本作を紹介。確かに間違ってはいませんが…。
昆虫食を専門にしているだけに、興味深く鋭い分析を加えています。
 
おすすめマンガ時評『此れ読まずにナニを読む?』 NTT出版Webマガジン -Web nttpub-
元ガイナックス広報・現マンガエッセイストの川原和子氏による紹介。失恋ショコラティエの紹介も含まれています。
 
NTT出版webマガジンの連載、更新!! : マンガラブー
上掲の川原和子氏が水城氏の現行連載のもう一本脳内ポイズンベリーも絶賛してたので思わずリンク。
 
ウォーキング・デッド飛鳥新社 – 本が好き! Book ニュース
ドリフターズ2少年画報社 – 本が好き! Book ニュース
上掲の「NTT出版webマガジン」の連載で川原氏とともにレビューを連載している伊藤剛氏が主著テヅカ・イズ・デッドで述べていたような、「マンガのキャラクター」の不死性のせいか、不死という設定はマンガで一番よく映えるのではないかと思うようになってきました。
 
 
 
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百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
最近は映画『モテキ』にメルツバウが出てこなかったことが気に障りました。
秋田昌美の本の装丁をしていた宇川直宏は一瞬出てきてたのに!
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ジョブズを語るために、ラーメンと愛国、ゲーミフィケーション、言説、形象、そして文化系のためのヒップホップ。10月前半の人気記事紹介。

ジョブズ個人を単に追悼するだけではなく、彼を語るために=彼を理解するために読んでおきたい本。
それはまず第一に未来をつくった人々―ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明だった。
ジョブズの名前を知っている人のなかで、いったい何割がパロアルト研究所のことを知っているでしょうか。その割合はとても少ないと思います。これは嘆かわしいことです。人々は無知すぎるのではないか。
僕は、パロアルト研究所のことを考えるとき、とても強く「人類の未来が明るい」という気持ちになります。
 
さて、10月もあと少し。今月の人気記事を振り返ってみました。
 
人気ランキングは下記のとおり。
1位:スティーブ・ジョブズを本気で語るために読んでおきたい8冊
2位:速水健朗ラーメンと愛国
3位:J.マクゴニガル幸せな未来は「ゲーム」が創る
4位:J=F.リオタール言説、形象(ディスクール、フィギュール)
5位:長谷川町蔵×大和田俊之文化系のためのヒップホップ入門
 
未来を作った人々 書影
ジョブズの決まり文句だった「ウィンドウズのGUIはマッキントッシュのパクリ」の、更に元ネタになったといわれるコンピュータ「ALTO」はパロアルト研究所で作られたものです。
他にも、パロアルト研究所は、それまでは夢物語でしかなかったようないくつものプロジェクトを実現し、現代人の生活のあちこちに浸透している技術の基礎を築いてきました。
ジョブズの功績が物凄いということに異論はありません。しかし孵卵器(インキュベーター)としてパロアルト研究所が果たしてきた役割もまた、とても重要です。
 
2位はラーメンと愛国
ラーメンと愛国 書影
アメリカの小麦戦略、イメージ分析、そして国土開発・ファスト風土化問題・ご当地ラーメンの関連を喝破する本書は、なんとなくそうではないかと思い描いていた絵図を的確かつ読みやすく整理してくれた1冊。膝をポンと打ちすぎて膝を痛めないように注意してください。それにしても速水さんの守備範囲は広大だわ…と思ったのですが、意外にライターの人達のラーメン好き率は高いような気がします。なんでなんでしょう。
 
3位はゲーミフィケーション関連書籍
幸せな未来はゲームが創る 書影
ソーシャルゲームはなぜハマるのか – ゲーミフィケーションが変える顧客満足『ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変えるが定期的にアクセスを集めているのに加えて、今月は「ゲーミフィケーション」というキーワードの提唱者のひとりであるマクゴニガル氏の著作幸せな未来は「ゲーム」が創るが刊行されたことが影響していると思われます。
 
4位は、19日にとりあげた哲学書言説、形象(ディスクール、フィギュール)
既にゲーミフィケーション関連本に並ぶ注目を集めています。
とても分厚い難解な本で、しかも原書が刊行されたのが40年前という、ある意味でゲーミフィケーション関連本とは対極をなすように思われるかも知れません。
しかし社会運動との距離感の近さや、扱っている問題(人々の認識の構造や欲望の分析など)が近い1冊。
非常に興味深い並びだと思います。
 
そして5位は、先月後半に紹介した文化系のためのヒップホップ入門
本の評判がとても良いので、アクセスが集まってきてるのだと思われます。
ここ数年注目されている思想家の佐々木中氏や、上掲の『言説、形象』の関連リンクでも挙げた現代詩人の急先鋒・佐藤雄一氏らが、ヒップホップを重視していることとも関連しているのでしょうか。
気になるところです。
 
【関連リンク】
スティーブ・ジョブズとパロアルト研究所物語(改編版) – Macテクノロジー研究所
マッキントッシュのファン・松田純一氏が語るジョブズとパロアルト研究所のエピソード。
 
3年半待たされたラーメン文化史「ラーメンと愛国」を献本いただきました:[mi]みたいもん!
いしたにまさき氏による『ラーメンと愛国』紹介。「きっちり1つの魔改造の歴史をひもといている書物」とのこと。
読後の感想も拝見したい!
 
速水健朗さん『ラーメンと愛国』と文学フリマ告知 – Culture Vulture
『ラーメンと愛国』文中で参照されている論考「カップヌードルを知らなかった連合赤軍 独身者たちの一九七〇年代」の著者・近藤正高氏による紹介。
 
実社会の行動まで変えるゲーミフィケーション。 | 無限クエスト。
ゲーミフィケーションを紹介した日経新聞の記事に引用されたマクゴニガル氏の「ゲーミフィケーションの4つの要素」を元に考察された記事。面白いです。
 
Twitter / @parages: 先日出た待望のリオタール『言説、形象』は本当に読みどころ満載の本だ…
判断と崇高──カント美学のポリティクス著者・宮﨑裕助氏のtwitterでの紹介。140字未満ですが読む価値ありです。
 
・本が好き! 書評 『文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)』 by ふみよし
ふみよし氏による『文化系のためのヒップホップ入門』のレビュー。2500字以上におよぶ丁寧な書評です。

 
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々とし、現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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