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新世代ミステリの面白さと背景が良く分かる評論集『21世紀探偵小説』

今回紹介する21世紀探偵小説 ポスト新本格と論理の崩壊は、現在のミステリが退潮傾向にあることを前提に、次世代のために現状を分析しようという意欲的な評論集。執筆者は『ベストセラー・ライトノベルのしくみの飯田一史を筆頭に、海老原豊・藤田直哉・岡和田晃ら日本SF評論賞受賞者3名、現役のミステリ作家2名を含む錚々たるメンツによる限界小説研究会(限界研)。探偵小説のクリティカル・ターン』『社会は存在しない』『サブカルチャー戦争に続く限界研4冊目の書籍だ。
 
さて、なぜ現在のミステリが退潮しているのか。
限界研は、おそらく「現在のミステリの読まれ方を理解している読者が少ない」ということがその理由だと考えているようだ。よって、本書では「現在のミステリの読み方」を解説するものが大部分を占めている。「現在のミステリ」を読み慣れている読者ならば、自分の読み方と比べてみてもいいだろう。かつてのミステリを読んでいたが最近のミステリは面白くないと思っている読者には、自分の感性をアップデートする良い機会になるだろう。そして、ミステリの初心者にとっては、最新の作品から手をつけるための良い入門になっている。
 
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とれたて!近刊情報(2012年6月11日)

本日とれたての近刊情報から、ナガタが気になったタイトルをピックアップしてお届けします。
 

岩崎夏海『宇宙って面白いの?』目次あり

宇宙の技術大研究~体温計・寝具からカーナビまで

あるゾンビ少女の災難

人物刀剣史

明治二十一年六月三日─鴎外「ベルリン写真」の謎を解く

 
本が好き!らぼ「近刊情報サーチ」新着情報一覧より。

硫化鉄をまとう貝や頭スケスケの魚『進化しすぎた新種生物ファイル』

進化しすぎた「新種生物」ファイルが発売された。新種生物好きならお馴染みの面々が並ぶ。コンビニにも並んでいるので、まとまった新種生物情報を手に入れたいならオススメだ。(逆に常日頃から生物ネタを集めているようなマニアには物足りないかも知れない)
 
新種を探して活動している団体や、未発見生物種の数がどのように推測されているのか、古今東西のフィクションに登場した新種生物をまとめたものなど、意外にコラムも面白い。
巻末に収録された「ゾンビを作り出す菌は実在した」は、寄生したアリの脳を支配し操る菌類について書かれている。
 

 
本書には数十種類にわたる新種生物が掲載されている。それぞれの生物については、見開きを使って解説。解説といっても専門的なことはほとんど書いていない。たまに笑えることが書いてある。今回は、本書で紹介されている生物のなかから、僕の印象に残った生物を挙げてみよう。
 
まずは硫化鉄という金属を身にまとった巻貝「ウロコフネタマガイ」、別名「スケーリーフット」。2001年に深海で発見されたこの貝は、生物好きの間ではすでによく知られている。まだ世の中には知らない人がいると思うので、最初に挙げてみた。あらゆる生物のなかで硫化鉄を体の成分として持つ生物はこの貝だけだという。
良い動画がみあたらなかったので、画像サイトの検索結果を貼っておく。
 
次に、「頭がスケスケの魚」。これは動画があるので貼っておこう。

デメニギスと名付けられたこの深海魚は、2004年に初めて生きている状態で観察された。 (続きを読む…)

究極の医療と鳩レースを融合。奇想天外バイオSF『シオンシステム』

地球の人口はいま爆発的に増加中で、食料問題は近い将来には世界規模の重大な懸念となるだろうと言われている。その解決の希望のひとつとみなされているのがミドリムシ。学名ユーグレナとしても知られるミドリムシは、光合成をするという植物の特徴、動き回るという動物の特徴を併せ持つ微生物で原生生物の一種に分類されている。ミドリムシは、いわゆる昆虫ではない。ひとつの細胞だけでできている生物、いわゆる単細胞生物だ。なお、病理学において、ある病の病原体が単細胞で運動性がある場合、それは「原虫」と呼ばれる。マラリアが原虫感染症としては特に有名だ。
 
今回紹介するシオンシステム[完全版]は、この原虫という存在をモデルにした生物医療SF。こう書いてしまうと堅苦しい作品が思い浮かべられるかも知れないが、医療に関する既得権益を守るために奔走する医師協会会長が登場するなど、熱い人間ドラマとして読み応えのある物語だ。
 
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あなたもゾンビを作りませんか?「たったひとつの腐ったやり方」とは

先日開催された「文学フリマ」に行って来ました。今回は僕がゲットした同人誌の紹介したいと思います。何冊かまとめてゲットしてきたのですが、まだ読み切れていないので、他の同人誌は余裕があれば日を改めて紹介します。
 
今回の収穫のうち、真っ先に取り上げたいのは『bnkrR vol.4』。特集は「ゾンビ」。この同人誌は「ボンクララ」と読むようです。統一テーマとして「ゾンビ」を掲げ、裏表紙に書かれたキャッチコピーで「文学は死んだ。そして蘇った、ゾンビとして。」と刺激的に煽るこの一冊。なんと表紙は先日のマンガ大賞で2位に輝いた大東京トイボックスの著者「うめ」のお二人。ドストエフスキー『悪霊』の岩波文庫版を、まるで転校生のお約束のように口に咥えたセーラー服メガネおさげ女子が描かれています。しかも全身に包帯巻いて斬馬刀を両手に持って。萌え要素満載なのにごちゃごちゃした印象にならずにすっきりとまとまっているのはスゴイです。
 
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死の商人が主題の劇画、『ヨルムンガンド』が描くのは神話的運命論だ

『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』で高く評価されているアンドリュー・ニコルが、武器商人いわゆる「死の商人」を主人公にして撮った映画『ロード・オブ・ウォー』。
実在の武器商人への取材を元に作られたこの映画は、ニコラス・ケイジ演じる架空のフリーランス武器商人が巨万の富を手にし、イーサン・ホーク演じる国際警察の捜査官と対決するという物語。
 
今回紹介するヨルムンガンドも、武器商人たちが活躍する物語だ。もっとも、こっちの主役たちはみな若い。本作の主人公は、元少年兵ヨナと、武器商人少女ココの二人。この二人を巡る物語について紹介しようとしたら、「神話的運命論」とでも呼べるような構図が浮かび上がってきた。今回は厨二病だと罵られることを恐れずに、その様々な符合から本作を読み解いてみたい。
 

 

ヨルムンガンド1   ヨルムンガンド2   ヨルムンガンド3   ヨルムンガンド4

 

ヨルムンガンド5   ヨルムンガンド6   ヨルムンガンド7   ヨルムンガンド8

 

ヨルムンガンド9   ヨルムンガンド10   ヨルムンガンド11

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とれたて!近刊情報(2012年5月8日)

本日とれたての近刊情報から、ナガタが気になったタイトルをピックアップしてお届けします。
 

自殺について

死後はどうなるの?

再生

自由

日日日『ささみさん@がんばらない 8

高橋 慶太郎『ヨルムンガンド 1』目次あり

 
本が好き!らぼ「近刊情報サーチ」新着情報一覧より。

ヒトは、シン・クライアントなのか?神林長平『いま集合的無意識を、』

神林長平氏の短篇集が発売された。タイトルはいま集合的無意識を、。本書に収録されている同タイトルの短編は、作者本人と思しき主人公がtwitterのようなサービス「<つぶやき>」の異常な動作を見つけるところから始まる。かつて『SFマガジン』2011年8月号で初音ミクが特集された際に掲載された「伊藤計劃論」とも呼べる作品だ。
 
伊藤計劃は2009年に34歳で死去したSF作家。先端医療によって支配された近未来のディストピアを描くハーモニーは死後に日本SF大賞を受賞している。この作品は日本人の作品としては初のフィリップ・K・ディック記念賞の特別賞も受賞した。伊藤は、デビュー後わずか2年ていどでこの世を去ったため、オリジナルの長編は『ハーモニー』のほかには虐殺器官しか発表されていない。しかし、死後現在にいたるまで強い支持を集めている人気作家である。先日道化師の蝶で芥川賞を受賞した円城塔とはデビューした時期が近く、親交も深かった。
 
『いま集合的無意識を、』は短編小説でありながら、『ハーモニー』と『虐殺器官』で伊藤が描いたある「呪い」に対する神林からの回答となっている。本稿では、この短編を読むための基礎知識を紹介していきたい。
 
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ゾンビ流行が浮き彫りにする現実『ウォーキング・デッド』2巻

ゾンビという単語にもう食傷気味だという諸賢に告ぐ。
 
「俺たちが、生きた屍(ウォーキング・デッド)なんだ。」
 
これは先日、待望の邦訳第二巻が刊行されたウォーキング・デッドで、主人公がくちにする痛切な一言。しかし、「自分自身がゾンビなんだ」というこの発言にすら、なんとなく飽き飽きしていることはないだろうか。
 
現代ゾンビの太祖である映画監督ジョージ・ロメロ氏が指摘するように、ゾンビとは現代消費社会を生きる人々のメタファーだ。「自分で考えている」つもりの人間が、傍から見ると愚かしい欲望に突き動かされ、支離滅裂に彷徨っているだけに思われる。人間は、消費社会のメカニズムに欲望を掻き立てられ、人間らしい行動よりも、まるで互いの肉を貪り食うようなおぞましい行為に手を染めていく。他人を出しぬいて自分だけ得をするような仕組み、苦しむ人の存在を見て見ぬふりをして保つ生活の安定、何も考えないでそんな世の中で耽る娯楽。もう気がついている。自分自身がゾンビなんだ。
……だが、ゾンビは互いを喰らうということはない。ゾンビは人に襲いかかるが、ゾンビどうしで殺し合いはしない。共食いをしているのは、人間のほうなのだ。なんというメタファーだろうか。ロメロの映画『ゾンビ』に代表されるゾンビ映画では、本当は人間の恐ろしさのほうが描かれている。ゾンビとは、人間の共食い性を強調するための触媒でしかない。
 
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現代SFの最先端!むせかえる官能と悪趣味の世界『第六ポンプ』

映画ブレードランナーがかっこよかったのは、アジア的な熱気を帯びた近未来都市を描いたからでした。その熱気は、そこに生きる人々や人ならざる者たちの生命活動の痕跡として、様々な汚れを強調することで描かれていました。バチガルピの作品にも、その魅力が引き継がれているといっていいでしょう。
 
いまSF作家のなかで最も注目されている一人であるパオロ・バチガルピは、昨年文庫が刊行されたねじまき少女で、長編デビュー作にしてネビュラ賞・ヒューゴ賞・ローカス賞・キャンペル記念賞という名だたるSF賞を総ナメにしました。今回、文庫にまとめられた第六ポンプは、本邦初訳となるバチガルピのデビュー作から『ねじまき少女』直前までの短編10作品を収録したもの。たっぷり二段組みで400ページ。ビニールカバー付きで重量感があります。
巻頭の「ポケットのなかの法<ダルマ>」は、デビュー作とは思えない密度のある作品。バチガルピらしいジメジメとした空気感、国際的な政治的・経済的対立の気配、都市文化のなかで死や危険と隣り合わせに生きていく地方出身の弱者の姿が描きこまれています。
 
第六ポンプ (続きを読む…)