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テーマは孤独。昨年もっとも評価された海外コミック『皺』

「テーマは孤独。老いやアルツハイマーではない」と語る作者によるコミック皺 shiwaは、いっけんすると地味な作品だが、文化庁メディア芸術祭で海外コミックとしては初の優秀賞を受賞し、読者投票による2011年度「この海外コミックがすごい!」ランキングで第一位になった傑作。
 
本書のストーリーは、アルツハイマー症の老人が老人ホームに入れられるところから始まる。年老いた灯台守と、戦線から逃げ出した若い兵士の交流を描いた『灯台』という作品も併録されており、この二作品は似ていると作者は言う。どちらもありきたりな友情や恋情ではない、寂しさを内包した苦くて優しい交流を静かに描いている作品だ。
今回は、この『皺』の文化庁メディア芸術祭での受賞にともなう著者の来日イベントを取材してきた。このイベントでは「スペインのアカデミー賞」といわれるゴヤ賞で最優秀賞・最優秀脚本賞をダブル受賞したアニメ版『皺』も上映。アニメもマンガに劣らない傑作だった。
 
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萩尾望都の初の対談集。手塚治虫、松本零士、寺山修司、小松左京…

「少女漫画を代表する知性」というとご本人に叱られてしまいそうですが、萩尾望都氏ほど、この呼称の似あう存在は他にいません。
 
そんな萩尾氏の初の対談集マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編が刊行されました。対談相手は手塚治虫氏、松本零士氏、寺山修司氏、小松左京氏という錚々たる面子(特別対談として『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の著者・羽海野チカ氏との対談も収録)。
繊細な情景描写、酷薄なほどの人物造形、胸に迫る物語など、唯一無二の世界観で今でも多くのファンを持つ萩尾氏。実はSFファンでありSF作品も多く手掛けていることはあまり知られていません。戦後マンガの巨人・手塚治虫氏もまた大のSF愛好家でした。本書は萩尾ファンやSFファンだけでなく、戦後のマンガを担っていた作家たちのあいだで、どのようにSFが受容されていたのかを手軽に知ることのできる格好の資料でもあります。
 
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カリブ海から世界経済へ。人文書院Web新連載『カリブ-世界論』

人文書院のサイトで、中村隆之氏によるカリブ‐世界論の連載が始まりました。
 
コロンブスによって「世界で最も美しい場所」とも呼ばれたマルティニック島を含むフランスの4つの元植民地で起きた、大規模なストライキ。このストライキををめぐって連載は開始されます。このリゾート地での出来事を、フランス本土の「68年5月」(いわゆる五月革命)や、チュニジアの「ジャスミン革命」と関連付け、さらに普段あまり知られることのないカリブ海の歴史的展開から、ヨーロッパ・アフリカ・カリブ海を繋ぐ三角貿易がどのように資本主義を発展させたかという話題に繋げていく、著者の中村氏の筆致は鮮やかです。
 

中村隆之氏も論考を寄せている『ブラック・ディアスポラ』書影
 
17・18世紀イギリスに産業上の発展をもたらした三角貿易は、第一に奴隷輸出のための造船業を中心に海運業を発達させ、。次いでアフリカ向けの毛織物・砂糖、そして船内で奴隷を縛る足枷や鎖などの産業が発展、この貿易で得た資本が金融業・重工業・保険業へ投資され、イギリス産業がさらに発展することになりました。
 
この産業の発展のなかで、たとえば砂糖の消費量が急激に増大します。有名なイギリスの「ティータイム」はこの時期に定着しています。それまでは王侯貴族だけのものであった砂糖ですが、貿易の発達とともに新しい消費文化となっていったのです。
 
興味深いことに、中村氏は奴隷制の廃止は「人道主義的理由よりも経済的理由から説明」される見解を紹介しています。砂糖生産量が世界的に拡大するなかで、砂糖を生産する植民地を保有し奴隷制を維持するメリットがなくなってきたことに着目しています。
     
大学受験の時にしかたなく勉強して頭に叩き込んだ「三角貿易」などの世界史の知識が、英仏の複雑な植民地政策や革命前後の事情の絡まり合いの中に活き活きとした意味を伴ってくるのはとても楽しい体験です。
連載の続きが楽しみですね。
 
目次
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プロローグ
ゼネストという出来事
LKP
「高度必需品宣言」
本書の試み
 
第一章 植民地と海外県、その断絶と連続
 
1 「カリブ海のフランス」という問題
小さな場所
カリブ海のフランス
植民地としての海外県
 
2 風景と痕跡
刻まれた岩
食人種の住む島々
サトウキビ畑
大邸宅と奴隷小屋
逃亡奴隷の森
 
3 植民地と奴隷制
フランス史のなかの島々
資本主義と奴隷制
フランスの植民地政策と奴隷制
〈革命〉と奴隷制廃止
1848年
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【関連記事・関連書籍】

砂糖の通った道《菓子から見た社会史》


大航海時代の結果として世界的に生産量・消費量の増加した砂糖。
江戸時代の日本から、その砂糖や、砂糖を使用したお菓子の歴史を辿った研究をまとめた一冊。
 

植民地を謳う シャンソンが煽った「魔性の楽園」幻想


植民地の現地人を「野蛮人」「食人種」と侮蔑しながら、歌謡曲シャンソンの歌詞などでは異国を魅惑的に描いてきたフランス。
その背景を元NHK国際局フランス語班チーフ・ディレクターの著者が追う。
 

見えない流れ


「ジャスミン革命」で知られるフランスがかつて植民地にしていたチュニジア。その首都チュニスを舞台にした小説です。
 

ラテンアメリカ銀と近世資本主義


植民地時代のラテンアメリカ銀山が、近世のヨーロッパ資本主義の成立と発展にどのような影響を与えたのか。その絶大な役割について実証的に解明する一冊。
 

 
【関連ページ】

早瀬晋三の書評ブログ?:?『両インド史 東インド篇』ギヨーム=トマ・レーナル著、大津真作訳

今回の連載で扱われるのはもっぱら西インド(現在のアメリカ)の植民地ですが、対する東インド(現在のインド以東の地域)の植民地について18世紀に書かれた文献についての書評。今回の連載とこの書評を読むことで、あまり知られていないフランスの植民地政策や当時の思想を概観することができます。
 
 
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【本が好き!編集部ナガタのプロフィール】
当「BOOKニュース」を担当している’79年生まれ男性。
アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は板橋区在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
百科事典と画集と虫と宇宙が友達です。
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『闇の国々』翻訳者・原正人氏にインタビューしました!

昨年末、闇の国々という大著が刊行されました。ヨーロッパのコミックシーンの大家のひとりフランソワ・スクイテン(シュイッテンとして紹介されることもある)の代表作であり初の単行本化となる一冊。日本でもよく知られているメビウスやエンキ・ビラルに並ぶビッグネームとして評価されているスクイテンの作品の単行本化は快挙だと言えるでしょう。
 
今回は、訳者の一人である原正人氏にメールインタビューにご協力いただきました。ヨーロッパコミックの研究者としても活躍し、昨年のこの海外マンガがすごい2011 結果発表! :: 1000planchesで第三位になったニコラ・ド・クレシー天空のビバンドムの翻訳も手掛けた原氏。情報量の多いご回答をいただけたので、これから海外コミックの世界を広げていこうという読者には参考になります。
 
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東京堂書店フリーペーパー『三階』最新号、真理についての哲学的メモ

神田神保町の東京堂書店が発行しているフリーペーパー「三階」の最新号が発行された。
批評家の丹生谷貴志氏の新刊〈真理〉への勇気に収められた論考「鏡の魔、或いは砂浜の上の痕跡 en mode sans fin…」と、大友真志氏の写真集『GRACE ISLANDS』(KULA)に関する参考資料という内容。
 

東京堂書店発行のフリーペーパー『三階』vol.4 (続きを読む…)

テーマ選書リスト「ウォール街を占拠せよ!若者たちの反乱」(大月書店)

ニューヨークの金融街を9月から占拠しているデモについて、実際に目の当たりにした知人は「空間を占拠する」という行為の持つ訴求力に感銘を受けていました。
 
さよなら、消費社会 書影
このデモ呼び掛け人カレ・ラースンの主著さよなら、消費社会の版元である大月書店は、サイト上で選書リスト「ウォール街を占拠せよ!若者たちの反乱」を公開しています。
詳細は大月書店お知らせページへ。
リンク先では、ラースン氏への主要各誌のインタビュー記事へのリンクや「『反乱』は何を要求しているのか」「日本で、世界で。呼応する『反乱』」、「『反乱』の背景にあるもの」といった小テーマで関連書籍が紹介されています。
 
【関連リンク】
ニューヨーク「ウォール街を占拠せよ!」デモの概要・様子【動画あり】 – NAVER まとめ
「ゾンビマーチの様子」など動画を多数紹介。
 
aliquis ex vobis : スラヴォイ・ジジェク – 民主主義と資本主義の結婚は終わった [完全版/日本語字幕]
先日ニコニコ生放送でウィキリークスのJ.アサンジ氏とも対談していたS.ジジェク氏がデモに参加したときの演説の日本語訳(字幕付き動画へのリンクもあり)

田中純氏、ル・コルビュジエ「最初の絵画」論を東京大学出版会「UP」に掲載

表象文化論研究者の田中純氏が、東京大学出版会(http://www.utp.or.jp/)のPR誌「UP」467号(2011年9月号)に、近代建築の三大巨匠の一人として知られるル・コルビュジエが描いた『暖炉』という絵画についての論考を掲載した。
 
本論は、かつてル・コルビュジエが本名のシャルル=エドゥアール・ジャンヌレを名乗って画家として活動していた頃に描かれた作品『暖炉』と、それにまつわる本人の日記や、建築家としてのル・コルビュジエのその後の思想を参照しながら、ル・コルビュジエにとっての「白」がどういうものなのかを明らかにする。
 
ジャンヌレたちは、ピカソやブラックに代表されるキュビスム以降の絵画形式として「ピュリスム(純粋主義)」を提唱していたため、この『暖炉』という作品もピュリスムの形式の「最初の絵画」と解釈することもできないではない、と田中氏はいう。
しかし、この絵画には後の名前であるル・コルビュジエとしても「最初の絵画である」という認定が書き込まれている。
このことから、田中氏は『暖炉』を単なるピュリスムの作品のひとつとしてではなく、建築家ル・コルビュジエ自身の思想にとってどのように重要な作品であるのかを追究。
その結果この作品に、柔らかく歪み、互いに融合しかけている形態と、それと同様に可変性をもった色彩としての「白」を見出す。
それはル・コルビュジエにとって根源的に重要な意味をもっていた。
 
UP9 書影
 
★「本が好き!」編集部ナガタのコメント★
近代建築というと、真っ白い壁、装飾を欠いた、機能性重視のもの、という印象があります。
その代表的な建築家であり思想家でもあったル・コルビュジエにとっての「白」がどのような理由で選ばれていたのか、本論はとても明快かつドラマティックに導き出しています。
退屈な単一色としてではなく、多色的な錯乱を白に見出すということは、建築に限らず、服飾や写真や映画にも言える汎用性の高い議論だと思いました。
 
【関連リンク】
・『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮 [新装版]青土社 – 本が好き! Book ニュース
・『表象 05 特集:ネゴシエーションとしてのアート月曜社 – 本が好き! Book ニュース
・『美学 第238号美術出版社 – 本が好き! Book ニュース
10+1websiteで多木浩二氏追悼特集-八束はじめ氏、田中純氏、大澤真幸氏らが寄稿 – 本が好き! Book ニュース
 
トピックス » 2011年「UP」目次:東京大学出版会
東京大学出版会PR誌「UP」の目次ページ。9月号の目次も見られます。

建築家・磯崎新氏の個展『過程 / PROCESS』が、MISA SHIN GALLERYにて開催

世界的な建築家として知られ、また他分野にわたる著作も多い磯崎新氏による個展『過程 / PROCESS』が、MISA SHIN GALLERYにて開催される。
 
東京都庁などの設計で著名な丹下健三氏の研究所出身で、1960年代の多様化してゆく建築手法を論じてポストモダンの到来を予告した建築の解体などの著作で評論活動も行う磯崎新氏。
本展は、半世紀にわたる磯崎氏のキャリアの最初期に形成され、その後の制作活動の根幹を為すこととなった「過程 PROCESS」というコンセプトに焦点をあてるもの。
コラージュを元にしたエッチング作品、大型シルクスクリーンプリントの「再び廃墟になったヒロシマ」が展示され、展覧会初日の9日には、「孵化過程=ジョイント・コア・システム」のパフォーマンスが19時より行われる。
 
廃墟と未来都市イメージの混在状態を描いたモンタージュ「孵化過程」は、かつて瀧口修造が責任編集した「現代のイメージ」(『美術手帖』1962年4月増刊号)にて発表され、同年、『未来の都市と生活』では展覧会ディレクターからの拒絶という過程を経るものの、最終的に展示に至る。
その後、1997年には水戸芸術館の『日本の夏 1960-64 こうなったらやけくそだ!』にて観客参加パフォーマンスとして再演され、本展初日のパフォーマンスにて完成となる予定。
 
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場  所|MISA SHIN GALLERY
期  間|9月9日–10月29日 (開廊日時:火–土 12:00–19:00)
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詳細はギャラリーのプレスリリースページ(http://www.misashin.com/exhibition/process/press-release/)へ。
日本語PDFのダウンロードができます。
 
【関連リンク】
『ポストモダン建築巡礼』日経BP社 – 本が好き! Book ニュース
『建築の還元 更地から考えるために』青土社 – 本が好き! Book ニュース
『戦後日本デザイン史』みすず書房 – 本が好き! Book ニュース
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『アレハンドロ・アラヴェナ フォース・イン・アーキテクチャー』 – 本が好き! Book ニュース
 
本が好き! 磯崎新ほか 『atプラス 08 特集:瀕死の建築』
本が好き!  磯崎新『UNBUILT 』
本が好き! 磯崎新 浅田彰 『Any:建築と哲学をめぐるセッション―1991~2008』
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紀伊國屋サザンセミナー『ハウス・オブ・ヤマナカ』刊行記念「消えた世界的古美術商 『山中商会』 日本美術の海外進出に果たした役割」開催予定

3月に刊行され話題になったハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商の刊行を記念して、紀伊國屋サザンセミナー「消えた世界的古美術商 『山中商会』 日本美術の海外進出に果たした役割」が開催される。
 
本書は、19世紀にアメリカの大富豪らに超一級の美術品を売り名声を誇った古美術商・山中商会の興亡を綴ったもの。
その山中商会の興亡を軸に、欧米の美術館に収蔵されている「国宝」級の美術品を紹介しつつ古美術商が東西美術界の発展に果たした貢献を明らかにする。
 
今回のセミナーでは、ニューヨーク在住の著者・朽木ゆり子氏と「日本美術応援団員」・山下裕二氏がトークを繰り広げる予定。
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日  時|2011年9月26日(月) 19:00開演(18:30開場)
会  場|紀伊國屋サザンシアター(紀伊國屋書店新宿南店7F)
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詳細は紀伊国屋書店サイト イベント紹介ページ(http://www.kinokuniya.co.jp/label/20110824170000.html)へ。
 
 
ハウスオブヤマナカ 書影

気鋭の批評家・若松英輔氏『神秘の夜の旅』刊行記念連続講演が開催予定

8月に刊行された神秘の夜の旅を刊行した批評家・若松英輔氏の連続講演が4つの書店で開催される予定。
 
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[第1講]―越知保夫と私
開催日時 9月8日(木)18:30~20:00(開場18:15)
開催場所 東京堂書店 神田神保町店6階
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[第2講]―井筒俊彦と私
主催/会場 八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー・定員80名
9月13日(火)18:30~20:00
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[第3講]―須賀敦子と私
主催/会場 紀伊國屋書店新宿本店 8階特設会場・定員30名
9月23日(金・祝日)14:00~15:30
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[第4講]―池田晶子と私
主催/会場 三省堂書店神保町本店 8階特設会場・定員80名
9月28日(水)18:30~20:00
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詳細はトランスビュー イベントお知らせページ(http://www.transview.co.jp/books/9784901510998/top.htm)へ。
 
神秘の夜の旅 書影
 
【関連リンク】
東京堂書店で、「【井筒俊彦】を読む」フェアが開催中 – 本が好き! Book ニュース
若松英輔氏(批評家)×安藤礼二氏(文芸評論家)、「いま、なぜ井筒俊彦か」と題するトークイベント東京堂書店で開催予定 – 本が好き! Book ニュース
 
本が好き! 若松英輔『井筒俊彦―叡知の哲学』
本が好き! 若松英輔『神秘の夜の旅』
本が好き! 越知保夫『小林秀雄―越知保夫全作品』